おすすめアジア映画

梁木ディレクターのここが見どころ 「沈黙の夜」(トルコ)

福岡が大好きなトルコの名匠、チェリッキ監督の最新作で、ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門の最優秀賞、東京国際映画祭アジアの風部門の最優秀アジア映画賞を受賞した折り紙つきの作品です。

一族の名誉のために殺人を犯した熟年の男が、長い服役を終え故郷へ帰るところから始まります。そのご褒美に結婚することになったものの、しきたりで、赤いヴェールをまとった花嫁の顔は見せてもらえません。寝室に入った男が赤いヴェールを取ると、現れたのは怖れて震える14歳の少女でした。ただ戸惑うふたり。意志の疎通のないまま新婚初夜が更けていく……一夜だけの出来事を一本の映画にするという、ふたり芝居の見事な室内劇です。

室内の装飾や、少女が身につけている伝統的な民俗衣装など、ビジュアル的にもとてもおもしろい作品です。何よりも、ひとつの部屋とふたりの登場人物で緊密に展開させ、最後にあっといわせるチェリッキ監督の新しい語り口を楽しんでほしいですね。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_09.html

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梁木ディレクターのここが見どころ 「パルウィズ」(イラン)


かっこいい父親と無気力な息子の物語。息子といっても肥った無職の中年おじさんで、金持ち老人の父親に養われている。日本にもあるんじゃないかというリアルな設定ですね。

定職もなく、結婚もできず、太っちょで、だらしのない身なりの中年男パルウィズは、父親の再婚を機に家を追い出されます。これまでの快適な暮らしを失ったパルウィズ。巨漢の中年息子の苦しげな呼吸音が作品全編を基調低音のように流れて、それが主人公の息苦しさ、生きることの苦しさを見事に表現しています。かといって、自分でアクティブに生きようとは絶対に思わないところがおもしろい。やがて外部に対しては陰湿な暴力をふるいはじめる。そのあたりの淡々とした描写が見事ですね。現実に引きこもりのお子さんがいる人たちにはシビアにひびきそうな問題作です。

とことんニート、とことん寄生虫だけど、存在感があるパルウィズ。この作品は、とても身近です。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_06.html

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梁木ディレクターのここが見どころ 「サイの季節」(イラク/トルコ)

国外亡命を続けているバフマン・ゴバディ監督が、トルコで撮影した新作「サイの季節」は、実在するクルド人詩人サデク・カマンガルをモデルとした作品です。

しかし、詩人が主人公ではありません。詩人の妻にねちねちと横恋慕する運転手が主人公です。このねじれ方が、一筋縄ではいかない。そのねじれを超華麗な映像テクニックを駆使して描き、さらに、カメが雨のように降ってきたり、突然サイが現れたり……予想をはるかに超えたシュールな映像の緊迫感は、もう圧倒的です。俺のことなどわかってたまるかとばかりの物語に、ぼくらはあちこち振り回され、最後にポーンと放り出される……そんな感じでしょうか。その底にはさまよえる民クルド、民族の苦渋を感じることができます。イタリアの大女優モニカ・ベルッチが熱演するミナ役も見逃せませんね。

 作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_15.html

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梁木ディレクターのここが見どころ「悲しみを聴く石」(フランス/アフガニスタン)


監督は、アフガニスタンからフランスに亡命し、本作の原作でフランスのもっとも権威ある文学賞ゴンクール賞を受賞した作家で、ぼくの今年もっともオススメの1本です。戦場から植物状態となって戻ってきた夫を、コーランの祈りを唱えながら看病を続ける妻。疲れた妻はやがて、回復の兆しが見えない夫に向かって、自分の悲しみや、疼き、やるせない気持ちをぶつけるようになり、その内容は、次第にエスカレートして、過激で露骨なものとなっていきます。そして誰にも告げたことのない罪深い秘密を語り始める……。

戦火のなか、植物人間となった夫を見捨てずに看取る妻の苦悩と懊悩。夫は、なんと彼女の罪の一部始終を、まるで「忍耐の石」(原題の「サンゲ・サブール」とは、ペルシャ語で「忍耐の石」のこと)のように見届けていた。妻も夫も悪くないがゆえに、究極の葛藤に責めさいなまれる……すごくいい話です。

主演女優はアジアフォーカス・福岡国際映画祭では「サントゥール奏者」(2007、イラン)「彼女が消えた浜辺」(2009、イラン)でおなじみのゴルシフテ・ファラハニ。今回も美貌と抜群の演技で観客を魅了します。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_16.html

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「別離」が外国映画第2位に!


2011年、本映画祭で日本初上映し、福岡観客賞を受賞。2012年の映画祭では、監督特集として、長編全作品を一挙上映した、アスガー・ファルハディ(Asghar Farhadi)監督の「別離」が、「2012年第86回キネマ旬報ベスト・テン」において、第2位を獲得。また同誌の「読者選出外国映画ベスト・テン」においても、第5位となるなど、極めて高い評価を獲得しました。

本映画祭では同監督の前作「彼女の消えた浜辺」についても日本初公開するなど、優れたアジア映画をいち早く紹介しています。

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本日8月28日18:00アジアフォーカスのUSTREAM配信が始まります!

どうなる!? USTREAM!の巻

なんと、8月28日(火)18:00ぐらいから、30分間ほど、
アジアフォーカスのUSTREAM番組、記念すべき第1回放送が始まります!とても素敵なパーソナリティ―が登場するらしく、秘密の情報もばんばん公開されるらしく、いろいろと面白いことがあるらしい。ととにかくはっきりしないことが多いので、らしい、ばっかりでもうしわけありませんが、お暇があれば、ぜひ下記をクリックお願いします。どうなることやら。
http://www.ustream.tv/channel/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93
アジアシネマチャンネル、略して「アジシネちゃん」お楽しみに。

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【ボランティアレポ】この作品を観ました!⑤

〈広報ボランティア M・A〉

『ナデルとシミン』
福岡観客賞を受賞した、ナデルとシミンを鑑賞しました。
ストーリーは、認知症の親の介護のいさかいの問題から派生してありとあらゆる問題が起き、不幸の渦にはまってしまうという展開です。それぞれが正しいと思うことをしているのに、うまくいかないときの挫折・喪失感は観ていてつらかった。みな、それぞれ努力して生きているのにうまくいかない現実。苛立ちを隠せず、他人にもあたってしまう姿がとても強烈でした。またウソをつくことに対して、イスラムの人々は恐れを感じていて、その姿もとても印象的でした。
私は無宗教なので、宗教の教えという信じるものをもって生きていくことが、ピンとこなかったのですが、宗教とは救いだけではなく、さまざまな葛藤をも生み出すものでもあるのかなあと思いました。
自分の環境と世界との環境の違いなど、広い考え方をもつことができるような作品でした。圧倒されます。


『カシミールの秋』
上映は監督の舞台挨拶から始まりました。この映画はインドとパキスタンの間の不安定な情勢がもたらした、カシミール地方の問題を題材にした映画です。カシミール地方に生きる人々の奮闘を描いています。
私は全くこの地方のことを知らず、呆然としました。とても印象的だと感じたのが、多く若者が映しだされるですが、そのすべてが暗い・悲しいと思わせる表情だったことです。若者らしい溌剌さはなく、映画を見終わったあとも、若者たちのその表情が思い出されました。実際にこの映画は、カシミール地方で撮影され、現地のカシミールの人たちが演じていたそうです。
この映画をみて感じたのが、情報を選択することの大切さです。毎日、様々なニュースが飛び交っていますが、焦点をあてるべき問題が世界にはたくさんあるのだなあと改めて感じました。
監督は、実際に監督のおじにあたる方の話を土台にこの映画を作られたそうです。衝撃的でしたが、カシミール地方の問題について考えるきっかけになりました。もっともっと、多くの人がこの問題について知り、考えて、いつか、カシミール地方の人が笑って暮らせる世の中になるといいと思いました。

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【ボランティアレポ】この作品を観ました!④

〈広報ボランティア T〉

『ナデルとシミン』
今年のベルリン映画祭の金熊賞を獲得し、映画祭のオープニングを飾った作品でもあるこの映画を観に、多くの観客の方に会場に足を運んでいただき客席はほぼ埋まっていました。
どの国でも通じるテーマでありながらも宗教による制約、人間関係、親子関係など、本作品は観る者に様々な問題を投げかけてくる映画でした。
判事役を演じたババク・キャリミ氏は、「この映画をどのように捉えているか」という客席からの問いに対し、「監督はこの映画をただ観客に見せるのではなく、より深いものを見せている」と答えていました。
この他にも監督の演出方法について、イランでの上映状況についてなど、途切れることなく活発な質疑応答がおこなわれていました。

『恋するリトル・コメディアン』
本作は芸人一家に生まれた少年が年の離れた大人の女性に恋する話で、タイトル通りのコメディー映画。
ギャグ満載のコメディーでありながらも家族愛が描かれているため、笑いの中にもほっと心が温まる場面もあってストーリーに引き込まれていきました。

上映中は会場から笑い声が聞こえ、Q&Aではあちこちから質問が飛び交っていました。その際Facebookに掲載したいということで、監督が会場の様子をカメラに収める一幕も。また、映画祭のオリジナルTシャツは監督が最も印象に残った質問をした高校の先生に贈られ、一緒に来ていた生徒さんたちと共に舞台に登壇し、生徒さんには監督からお土産がプレゼントされました。
映画上映後会場の外では観客のサインに快く応じる監督の姿があり、映画祭ならではの光景が広がっていました。

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【ボランティアレポ】オープニング上映会編

今回もたくさんのボランティアさんが、いろんな場面でお手伝いをしてくださいました。来場のお客さまの案内業務を始め、ゲストの方たちを福岡の名所旧跡に案内したり、会場やお客さん、作品の取材、、その合間をぬっての映画鑑賞などなど。その体験レポのご紹介です!まずはオープニング上映会から。

オープニング式典&上映会「ナデルとシミン(仮題)」 2011年9月16日(日)19:00:~


〈広報ボランティア かるめぎ〉
人は何かを守るために嘘をつくことがある。それは家族や自分自身だったり。また嘘をつこうと思っていないのに結果的に嘘になってしまうことがある。しかしそれらの嘘によって、大切な人を傷つけてしまい、それが取り返しのつかないことになってしまう。この映画は結果的にだれが悪いということはできないし、イスラム社会特有の事情もあるので私たちには完全には理解しにくい部分もあるだろう。だが、この映画で一番印象に残ったのは主人公の中学生の娘さんのまっすぐな瞳。彼女のまっすぐと何かを見透かしているような瞳や最後のシーンでの彼女の気持ちを思うと何とも言えない気持ちになった。

〈広報ボランティア S・F〉
オープニング上映会のナデルとシミンを観てきました。この作品は、登場人物一人ひとりが主人公になっていてとても不思議な感覚でした。老人の介護を巡って起こる出来事は、家族、宗教、人間関係といった様々な問題と関連していて見終わったあと考えさせられるものがある深い作品でした。また離婚した両親の娘は今後どちらの親と暮らしていくか、という娘の決断をあえて映像化していない最後の終わり方もとても印象的でした。

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ナデルとシミン(仮題) / Nader and Simin, A Separation



とにかく緊密な展開と演出力がずばぬけていて、どんな端役でも人生を背負ってそこにいる。アジアフォーカス2009の「アバウト・エリ」で、イラン映画のあらたな次元を切り開いたファルハディ監督ならではの作品ですね。まだ若いのですが、もはや円熟した巨匠といってもいいくらいの完成度で、今回の上映作品の中ではナンバーワンといえるでしょう。

イスラム社会の、建前ではない人間ドラマが深いところまで描かれています。嘘をつくことが許されないイスラム教の教えを前提に、個人レベルでは正しいと思うことを行ったがゆえに、全体では負の連鎖になってしまうという悲劇を、だれもが背負ってしまいます。正しさを進めば進むほど泥沼にはまっていく人間模様がくりひろげられ、イスラムに生きることの葛藤を味わうことができます。もしかすると、こういうドラマトゥルギーは、かつて日本映画にもあったかもしれません。たとえば山下耕作の傑作「博奕打ち 総長賭博」の義理と人情の板挟みによる悲劇などは、かなり近い世界のようにも思えます。

あらすじ・予告編はこちらからご覧ください。

邦題 ナデルとシミン(仮題)
英題 Nader and Simin, A Separation
原題 Jodaeiye Nader az Simin
製作国 イラン/Iran
監督 アスガー・ファルハディ
出演 レイラ ハタミ(シミン)

ペイマン モアディ(ナデル)

シャハブ ホセイニ(ホッジャト)

サレー バヤト(ラジエー)

サリナ ファルハディ(テルメー)

ババク キャリミ

アリアスガル シャーバズィ

シリン ヤズダンバクシュ

キミア ホセイニ(ソマイェ)

製作年 2011年
分数 123分

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