中国

高校生の初恋物語だと思ってた…「北京の自転車」

2000年の中国映画「北京の自転車」(原題・十七歳的単車)。2001年のアジアフォーカスで上映されました。東アジア映画フェスタ2011での上映が決まっています。

急速に発展する北京には地方から仕事を求めてたくさんの人々がやってきます。マウンテンバイクで宅配する仕事を得た一人の17歳の若者。彼にとって見たこともないような最新の自転車が、頑張って働けば自分のものになる…彼はひたすらペダルをこぎ続けます。見たこともないのは宅配先のホテルやマンションも同じで、そこにあるのは自分とは別世界のものでした。その世界を望むわけでもなく、彼は自分の生活のため、糧を得る大切な手段であり、そして彼の小さな夢、マウンテンバイクを必死に守ります。そしてもう一人17歳の高校生男子。彼にとっても自転車は大切な宝物でした。2人の若者が1台の自転車をめぐって関わってきます。

たかが自転車、されど自転車。2人にとって何物にもかえがたい自転車を守るための行動が切ないです。なりふりかまわない17歳の姿は、次から次と起こるトラブルを前にして、それでも何度もあきれるくらい立ち上がってくる彼らの姿にちょっと笑ってしまうのですが、急激な発展で地域の差や貧富の差があまりに大きくなりすぎた社会のゆがみの中、彼らなりの真摯な姿はなんだかやるせなくもあり...。


今年の上映作品「 遠い帰郷 / Return Ticket」は舞台が上海ですが、同じように地方から働きにくる人々の生活を描いています。いろんな想いを持って都会に来て、目の前のどうにもならない現実に、思い出すのはふるさと。こちらの方が出てくる人々が大人なので、生き方を自分で選ぶたくましさが感じられます。

「北京の自転車」の中で宅配会社から最初に言われたのは「地図を頭にたたきこめ!胡同(フートン)のすみずみまで!」。胡同と言えば、北京オリンピックのときの都市整備で会場に近い場所は取り壊され、古い街並とそこに暮らす人々が消えて行くというニュースが記憶に新しいのではないでしょうか。細い路地が入り組む胡同で、宅配くんは帰り道がわからなくなってぐるぐる…この街並だったのね!

そう言えば、私はDVDのパッケージから自転車通学をする高校生の淡い初恋物語だと勝手に決めつけてました…。まぁ、当たらずとも遠からずってとこでしょうか。

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遠い帰郷 / Return Ticket



かつて日本にも、そして韓国にも、田舎から大都会へ職を求めて大移動してきた時代がありました。社会が大転換してゆくときのエネルギーと摩擦熱が、すぐれた映画を生み出しました。いま、たぶん中国はその転換期のまっただ中にいるはずです。

しかし、共産党支配のためか、ゲリラ的に作られたインディペンデントを除いて、社会の変化を直接反映する作品が、あまり見当たらないのです。ロウ・ウェイなど骨のある監督がいないわけではありませんが、当局から目をつけられてしまいます。やはり体制が変わらないとダメなのかなあとも思います。

この作品は、地殻が変動しつつある中国社会の裏面を丁寧に描いていますね。「鋼のピアノ」でも感じましたが、中国の俳優さんって、なんだかうますぎる気がします。監督が台湾出身だけあって、情感に訴える作品ですね。

あらすじ・予告編はこちらからご覧ください。

邦題 遠い帰郷
英題 Return Ticket
原題 到阜陽六百里
製作国 中国/China
監督 トン・ヨンシン
出演 チン・ハイルー(ツァオ・リー)

タン・チュン(シエ・チン)
製作年 2011年
分数 88分

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陽に灼けた道 / The Sun Beaten Path



あまり根拠はないのですが、これぞチベット映画と、おもわず言ってしまいたくなる映画です。監督は、もともと(というか今でも)撮影監督なので、セリフはほとんどなく、カメラに哲学的に語らせるという語り口で、これがまたチベット文化の奥の深さを感じさせてくれます。ストーリーはシンプルで、ただただ道を歩いていく、その求道的な道行がいいのですね。余計な飾りは一切なく、観客におもねったりせず、撮りたいから撮った。そこに立ち現われてくる何とも言えない精神のかたちみたいなものが、映像の力なのではないでしょうか。

あらすじ・予告編はこちらからご覧ください。

邦題 陽に灼けた道
英題 The Sun Beaten Path
原題 太阳总在左边
製作国 中国/China
監督 ソンタルジャ
出演 ロブザン:イシ・ルンドゥプ(益西兰周)

老人:ルジェ(罗后杰)

兄:カルザン・リンチェン(尕藏仁青)
製作年 2010年
分数 89分

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アジアフォーカス言いたか放題 冬休みの情景(中国)

かっくいーっ!しびれるううう。ていうか本当にからだがしびれるぜ。最後まで観たらわかりますけど。ていうか耳がつんざけルていうか。こんな音楽ありっっすか先生?かなりぶっ飛んでますぜあなた。NHKアジア・フィルム・フェスティバルで、すでにごらんになった方もいらっしゃるかもしれませんが、真面目にみてると、なんじゃこらああ、なめてんのかいわれえ!的なかっこよさがありますです。音楽サイコ-。掛合サイコ-。不思議さ炸裂。失笑必至。これってお笑い映画なのかい。かなりあばんぎゃるどなんだけど。

まず舞台が変な感じ。なんかよくわかんないけど、地球じゃないどっかの、でも中国の田舎ぽい、モンゴルっぽい、でもやっぱかなり架空の名前の無い街。なんかうっそぽいとこ。リアルなんだけど、書き割りっぽく見えてしまうところに、毛糸帽頭の少年達がたくさんでなく少しだけいます。女の子もほんの少しだけでてきたり。でも全然恋愛なんかもありえない雰囲気で。いっつも微妙な曇りゾラで乾いてて薄暗くて、変な音が聞こえてきて。架空現実少年譚とでも言いましょうか。じいちゃんも出てきますけど。彼らの表情の不思議。掛合の変具合。かぜがひゅうっうう、と吹き抜けていく、ぽつねんとした空間とか間合いとか。とっても素敵な変さ加減が来ちゃってます。

ストーリー云々なんて、プロット云々なんて、感動うんぬんなんて、中国現代社会のかんぬんなんてかんけいないし。映画の新しい可能性というと言い過ぎですが、普通の映画から普通の映画らしいところをどんどん引いていったら出来ちゃった、的突然変異さんいらっしゃい!って感じです。わかんないですよね。つまり言ってみれば、ちょっとした映像詩なのかもしれません。

カタログに掲載するために監督達からメッセージをいただくのですが、リー・ホンチー監督のメッセージはかなり”きてます”です。過言では無く。まるで映画そのものの意味不明さは、本気なのか(ごめんなさい監督)それとも、世の中をあざ笑うがごとく、茶化しきっちゃってるのか。とにかくへいへいぼんぼんへいぼんぼんな暮らしと頭脳と家庭と仕事と父と母の私めにはさっぱーりわかりまひえーん。でも某詩人の先生にお見せしたところ「判るよ。判る。うんうん。かれの言いたいことは。うんうん。」なんてもっともらしく言い切られたりして。僕ってたんなる鈍感野郎なんだろうなあって、ちょっと悲しくなったほどすごい監督メッセージでした。

だからそんなすごい、ありがたいかも的な、お言葉も掲載している、カタログも是非購入のためクリック・クリックしてください。あ、まだネットでは売ってませんので、映画祭がはじまったら、「あの変な監督メッセージのったやつくださいっ是非是非っ!」って所望されると1000日本円(100円10枚でも全然オッケー)ときっかし1冊の豪華フルカラー二カ国語カタログと間違いなく交換可能な状態にこぎ着けたいと考えておりますので一家に一冊どうぞ。不思議好きさん歓迎します。ky

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冬休みの情景 / Winter Vacation



いや、これはおもしろいオフ・ビート・コメディですね。アキ・カウリスマキの「レニングラード・カウボーイ」や、北野武の省略の仕方などを思い出させる、脱力系のおかしさです。登場人物たちは無表情で、カメラも動かず、真顔で子供たちを映し続けるだけなのですが、そこでぽつりと発するセリフのおかしさといったら、無類です。

社会状況を正面から描けないとしたら、人間のおかしさを描くしかないということなのでしょうか。どうでもいいことは省略していくと、人間の生活に残るのは、ホラこんなもんだよ、笑うしかないよ、といいたげな奥深さがすごいです。

あらすじ・予告編はこちらからご覧ください。

邦題 冬休みの情景
英題 Winter Vacation
原題 Han Jia
製作国 中国/China
監督 リー・ホンチー
出演 バイ・ジュンジエ

ジャン・ナーチー

バオ・ジンフェン

シエ・イン

ワン・フイ

バオ・レイ

バイ・シャオホン

ジー・フェン

ウー・グオション

ジアン・チャオ

シャオ・メイチー

ヤオ・ラン
製作年 2010年
分数 91分

協力 NHKアジア・フィルムフェスティバル


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鋼のピアノ / The Piano in a Factory



話としてはかなりベタな人情喜劇なのですが、ところがどっこい、ところどころに挟まれる音楽や、シュールな笑いは、相当にハイセンス。画面のダサおもしろさと、キッチュなコミック感覚の両面攻撃で、このツボにはまると、思わず笑い出したくなるような、異様な相乗効果がうまれます。しかも、役者がうまい。なかでも、お父さん役のQian-yuan Wangは、何気なくさらりと高度な芸を見せてくれるので、目利きにはたまらないですね。

いわゆる中国映画かと思ったら裏切られます。すっとぼけた感じがあり、伝統的な人情ものと突き放したおかしさと、両面の面白さを兼ね備えています。政治を正面から描きにくい今の中国ならではの、直球かと思いきや、手元でぐいと曲がるクセ球のような喜劇。さまざまな角度から楽しめます。

あらすじ・予告編はこちらからご覧ください。

邦題 鋼のピアノ
英題 The Piano in a Factory
原題 Gang De Qin(鋼的琴)
製作国 中国/China
監督 チャン・メン
出演 ワン・チエンユエン(チェン・グイリン)

チャン・シニョン(チュイ)
製作年 2010年
分数 105分

協力 東京国際映画祭


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平渓線の終点・菁桐駅で心癒される「台北に舞う雪」

「山の郵便配達」のフォ・ジェンチィ監督が贈るラブストーリー。新人歌手メイ(トン・ヤオ)は突然声が出なくなり、歌うことができなくなる。そのことを誰にも告げられず台北の街出て、平渓線の終点・菁桐駅にたどり着く。母親に捨てれら孤児として育ち、町の便利屋として、忙しく働く青年・モウ(チェン・ボーリン)と出会い、この町で暮らすようになる。町の人々との交流やモウの優しさに触れ、少しずつ声が出るようになっていく・・・。

この物語の魅力は、なんといっても、菁桐の町の景色。平渓線のローカルな雰囲気に、町の路地など、どこを歩いても、心がどんどん優しくなっていくよう。そして、メイの暮らす部屋やメイを探しにきた記者が入り浸るカフェのインテリアがとってもかわいい。カフェの女の子ウェンディのころころと変わる衣装に髪型もキュート。この、小さな町をきっと訪れたくなるはず。

台北に舞う雪(台北飄雪) http://taipei-snow.jp/

YouTube Preview Image

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刀削麺を食べる!「上海モンナリーサ」

大名にある「上海モンナリーサ」は、刀削麺や小龍包、炒飯など上海料理をカジュアルに食べられるお店。入り口では、小龍包を包んだり、刀削麺を削っている様子が見られますよ。店内は、オレンジの壁に、黄色い椅子、壁には壷が張りついていて、なかなか独特な雰囲気。





この日オーダーしたのは、「刀削天使海老麺(800円)」と「焼小龍包(4個500円)」。刀削麺は、天使の海老でスープをとったとあって、かなり濃厚。海老のほか、ホタテ、野菜などが入っています。麺はもちもちで、この不揃いのところが魅力。他にも、刀削鶏麺、刀削坦々麺などいくつかありました。

 

 

焼小龍包は、石のお皿の上に載って、熱々でやってきますよ。もちもちで、こんがりと揚がった皮の中には、スープがたっぷり。特級麺点師がつくる小龍包は、まさに本場の味でした。

 

 

 

■上海モンナリーサ
福岡市中央区大名2-1-50 1F
092-781-2180
11:00~24:00 不定休

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「LOVERS」張芸謀のポストモダン

前作「HERO」を見たとき、あのチャン・イーモウ(張芸謀)がなぜ、と首をひねった。その前の「至福のとき」で、何かが終わったことははっきりわかったのだが。

新作「LOVERS」。この監督にとって終わったのは、社会制度と個人の相克をリアリズムとして描くことではないか。もともとリアリズムの作家ではなかった彼は、あっさりモダンを見かぎり、ポストモダンに転向してしまった。強力な文化的記憶である武侠ものを枠組みとして、中国版「マトリックス」のごときものをめざした。そして、前作、今作と、きわめて質の高い商品を作り出すことに成功した。

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どんなにつらい時だって、若者たちは夢をみる!「小さな中国のお針子」

アジア映画と文学をを思う時、私はこのかわいくてキュンと切ないこの映画が浮かびました。2002年製作のフランスと中国の合作映画。

この映画の中国人監督ダイ・シージェが自分の体験をもとに現在住んでいるフランス語で書いた小説「バルザックと小さな中国のお針子」が」ベースです。

1971年、文化大革命真っ直中の中国で反革命分子の子として山奥の寒村で再教育を受けることになった2人。今まで慣れ親しんでいた文化的なかおりのするものはすべて排斥されとまどいながら、厳しい労働に耐えながらそれでも生きていく…

そんな生活の中に小さな光を見つけます。

若者は恋をするのですね…。村に唯一の仕立屋のお針子…。もう一つの光、密かに見つけた禁書となっている西欧の小説の数々…

その世界に引き込まれ、むさぼり読む二人は文字の読めない彼女に読み聞かせ、新しい世界を分けてあげたいと思います。彼女にとってもそれは自分の前を照らす小さな光でした。

二人の青年の彼女に対するやさしい思いは同じものだったのに、それぞれの性格の違いで違う方向にむかって行きます。

これが切ない…この切なさは、他になにもなく山々に囲まれてただただ自然だけが美しいこの場所とリンクされ胸に迫ってきました。

ハードな時代の中、彼らにとって屈辱的な青春であったとしてもそれに対して後ろ向きな感じがなく、まっすぐで小さな喜びや楽しみを見つけていく姿がほのぼのとかわいくてさわやかで…時代背景を忘れてしまいそう。

緑が美しい山村にお針子の赤いチャイナ服がとても印象的です。

小説が原作の映画は、見たり読んだりした順序によってどちらかが極端にイメージと違ったりする場合がありますが、この作品は脚本もダイ・シージェ自身が書いているので、映画を見ても、小説を見ても同じ感動が味わえると思います。

バルザックと小さな中国のお針子 (ハヤカワepi文庫)

  • 著者/訳者:ダイ・シージエ
  • 出版社:早川書房( 2007-03-08 )
  • 文庫:238 ページ
  • ISBN-10 : 4151200401
  • ISBN-13 : 9784151200403
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