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【FOCUS ON CINEMA】No.10ブルース/さらばサイゴン(日本/ベトナム)監督インタビュー

監督:長田紀生

 

38年の時を経て甦った作品には、今の日本映画にないものが……。

 

38年ぶりに息を吹き返した幻のフィルムを携えての参加となった長田監督。梁木ディレクターも興奮気味に、インタビューはスタートしました。

 

本作は、シナリオライターとして東映株式会社と専属脚本家契約を結び、深作欣二、山下耕作監督といった巨匠の脚本を担当していた長田さんの初監督作。作品が生まれたきっかけは、オーナープロデューサーである網野鉦一氏がビジネスを通してタイ、ベトナムに繋がりがあったことが発端。始めはエンターテイメントを作りたいとシナリオの注文がきたそうですが、現場志向が強かった長田さんは「撮らせてくれるなら書くよ」と言って、話が決まりました。

「経済成長する日本で、取り残されていった連中の想いをヤクザ映画などの世界で描いてきましたから、私の中に常にテーマとしてはあったものだと思います。この映画は反戦映画でも戦争映画でもないんです。あの頃、いい気になっていた日本人に冷水をぶっかけたいという気持ちがあった。それで、アンチヒーローの主人公を描こうと思いました」

1975年のベトナム戦争末期、長期ロケーションを敢行して撮影にのぞんだスタッフ&俳優陣。最終的に外出禁止令が出される中、撮影の椎塚彰氏がロケハンの最中に威嚇射撃を受けたり、橋や関所のシーンをなんとか撮影したりと、幾多の困難を乗り越えて制作は進められていったそうです。

「主人公がどこに向かっているのか、アンチヒーローを描くことができれば、ディテールで左右される映画でなかった」と、監督は本筋のシーン以外に、ダランの山で立ち小便をしながら会話するシーンやタローがさりげなく本心を覗かせる台詞などを挿んで、映画に厚みを出していったといいます。

「この作品には今の日本映画にないものがありますよね」と話す梁木ディレクターの言葉から、話題は今の日本映画が失ってしまっているものへと。

「アジアフォーカス映画祭で「パルウィズ」と「沈黙の夜」を観ました。どちらも国の状況下で制約がたくさんある中で、必死になって表現したいものを伝えている作品です。そこには何か無理なことに対してぶつかっていくチャレンジがありますよね。日本映画が熱を失っている原因の1つには、映画界における制作委員会システムの問題が大きいと思います。この映画祭はプログラミングもとてもいいですし、出会いの場でもあります。あとはマーケティング部門があったらいいなと思うんですよ。ここに集まった参加者で、今何を作っているのか、またはこれから作りたいものをテーブルを囲んで提案し合うようなクリエイティブな場になったらいいですよね」という監督に、「それはいいアイディアですね。検討します」と梁木ディレクターも頷きました。

長田監督の次回作はフランスとの合作で、捨て子をテーマにした作品を撮る予定だといいます。「日本映画が生き残るためには、合作しかないと思うんですよ。言葉、生まれ、日常の異なる人たちとディスカッションを深めながら作るのが合作の面白さ。そして、自覚と覚悟を持って、若い人に現場を見せながら数十人の人が共にものづくりを経験していくということが大切なんだと思います」

 

映画や映画界に対する思いの丈をぶつけ合いながら、熱を帯びたふたりの話は尽きることなく、再会を約束してインタビューは締めくくられました。

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【FOCUS ON CINEMA】No.10ブルース/ さらばサイゴン(日本・ベトナム)Q&A

監督:長田紀生

主演女優:タン・ラン

俳優:磯村健治

 

 

ベトナム人と日本人のハーフを演じた磯村健治氏、主演女優のタン・ラン氏、監督の長田紀生氏の3人が揃って登場。38年ぶりに息を吹き返した映画の奇跡的な上映と再会の喜びを分かち合う姿に、多くの観客から温かな拍手が送られました。

 

 

Q.:たいへん素晴らしいロードムービーでした。場面場面で、町の風景がスチールで出てきましたが、あれは演出だったのでしょうか? 歴史的に貴重な映像だとも思いました。

長田監督:基本的に演出です。正直に申し上げますと、戦火の中でとても撮りきれない、時間が足りないという感じでした。とくに最後のシーンに出てくるフエという町で私たちは3日間撮影をしてきたんですが、ベトナム人のスタッフからは“もうここにいてはだめだ”といわれる状態で、引き上げた翌日に町は陥落しました。泊まっていたホテルはロケット砲で破壊され、ホテルの従業員の何人かが亡くなっております。そういう状況でしたから、こうして今になってフィルムを繋いでみますと、戦争も、平和な日常の風景も、最後のアクションで出てくる今は世界遺産になった王城も、農夫も、戦車や軍人も……スチールで押さえていったのは方法論として間違ってなかったんじゃないかと思います。

 

Q:最後、杉本は日本に帰らず、どこへ行くつもりだったのでしょうか?

長田監督:直前にふっと浮かべた笑みを見ると、彼自身がどこにも行けないと感じていたんじゃないかと思います。タローのお父さんというのは日本兵の生き残りだったんですね。少なくとも自分はお父さんとは違うと思っていた。どこへ行ったのかは秘密というか私にもわかりません。

 

 

Q&Aのやり取りとともに、お一人ずつからメッセージも。

 

「映画としての私のデビュー作。とにかく戦火の中でしたが、ベトナム語を憶えるのがとにかく大変でタン・ランが一生懸命教えてくれました。思い出深い作品です」と磯村氏。

「サイゴンは今は別の名前で呼ばれていますが、私は今でも私の故郷のことをサイゴンと呼んでいます。青春の頃の私たちの姿を見て涙がでますし、今夜ここに来ることができて感動しています」と、現在はカリフォルニアに在住するタン・ラン氏。

「この映画はエンターテイメントですが、その中に“ジャパン・アズ・ナンバー1”と言われていた時代が本当にそうなのか、経済成長した日本が何か大事なものを置き忘れてないかという想いを込めました。そして今、美しい国・日本は本当に美しいのかという問いかけも含めて、この映画は始まりであり、またアジアの国と協力して続編を作りたいと思っています」。最後の長田監督のメッセージに次回作に対する意気込みが熱く語られました。

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【FOCUS ON CINEMA】謝罪の王様(日本)舞台挨拶


監督:水田伸生

出演俳優:阿部サダヲ
荒川良々

 

9月28日の公開にさきがけて開催された特別試写会。監督の水田伸生氏、出演俳優の阿部サダヲ氏、荒川良々氏が揃った舞台挨拶には多くのファンが集まりました。大ヒット作「舞妓Haaaan!!!」チームによる待望の新作は、題して“痛快娯楽社会風刺コメディー”! 「謝罪師」を生業とする主人公が、ケンカの仲裁から国家の存亡の危機まで降りかかる難問を、次から次へと謝罪のテクニックを解決していくという、前代未聞のエンターテインメント作品です。

主人公の謝罪師を演じた阿部サダヲ氏は「面白いのはもちろんですが、共感しどころがいっぱい。あの時、謝っていれば…と思ったり、あの店員生意気だな、なんて思うことって日常茶飯事でしょ」とユーモアたっぷりのコメント。実は、水田監督が宮藤官九郎氏に、「日本の社会を風刺するコメディーを作りたい」と脚本を依頼したのは5年前。その間、東日本大震災が起こり、脚本は二転三転。

魅力の一つは日本を代表する俳優たちがさまざまなエピソードで出演していること。 「笑っていただいてなんぼ、の映画ですが、良く考えると、“謝罪”って感謝の気持ちを忘れた罪、という意味に気が付きました。だから、常に人々に感謝していれば、日常で謝る必要ってないんですよね。テレビで謝罪会見ばかりしている人は、感謝する心を忘れているんだと思います」という監督の締めの言葉に、会場から大きな拍手が送られました。

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【FOCUS ON CINEMA】おしん(日本)舞台挨拶

監督:冨樫 森

 

ビシッときめたスーツと晴れやかな笑顔で上映前の舞台挨拶に登場した冨樫森監督。
時に笑いを交えつつも真剣な眼差しで撮影秘話を語ってくださいました。

 

10月12日の公開を前に「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」に日本代表のような形で呼んでいただき、オープニングで皆さまに観ていただけることを緊張しつつも光栄に感じています。30年前にNHKで放映されて以来、日本のみならず世界中で愛されてきた国民的ドラマを、今回はおしんの少女時代に焦点を合わせ、主人公を演じた濱田ここねさんと共に新しい映画としてのおしんを描きました。

おしん=耐え忍ぶイメージが強いですが、僕は違うと思うんです。それよりも畳に座ってあたたかいご飯が食べられたり、学校に行って勉強できたりというささやかな日常のありがたさを感じるといいますか、そういうものを震災後の日本人に向けて伝えることができる、この時代に必要とされることがつまっていると感じます。

オーディションで選ばれたおしん役のここねさんは、前向きで元気で明るい人柄だったので、おしんがさまざまな人と出会ううちに力強く成長していく姿が描けたのかなと感じています。お芝居が上手い下手ということではなく、おしんそのものになってもらおうと思ったので、たった一人で親元を離れ、53日間山形に下宿してもらいました。電話もメールも禁止。撮影が終わったら宿に戻って方言指導の方々と一緒に過ごすという日々でしたが、辛いという愚痴ひとつ言わなかったですね。僕もしつこいので20、30テイク撮ることも多かったのですが、イヤな顔ひとつせずやってもらいました。あとで本人に聞くと一人でトイレで泣いたこともあったようですね。おしっこがもれそうだからとトイレに駆け込んでわーっと泣いた後、顔を洗って何事もないような顔をしていたそうで、彼女自身がおしんのような女優さんでした。両親役の上戸彩さんと稲垣さんは、かなり美形の夫婦なのでいいのかなと思ったのですが、僕はあまり貧乏たらしいのは苦手なので。特に上戸さんには日本のお母さんの象徴という思いを込めて撮りました。誰しも自分の中のおかあちゃんって、きれいでしょう。稲垣さんは、昔の日本人の親父そのもの。子どもとまともに向き合って話せないような、うちのおやじもそうでしたから。

雪の景色を撮った山形県鶴岡市は、実は僕の故郷なんです。高校卒業以来、ずっと帰っていなかったので、今回久々に母親がいる実家から撮影に通いました。昔から地吹雪がすごい所で、雪が降っていなくても舞い上がって吹きつけてくる、それを撮りたくて。普通は発砲スチロールを大きな扇風機で飛ばしたりするのですが、今回はまったく何も足していません。後でここねちゃんから「涙が凍ったんですよ監督」って。こっそり泣いていたらしい。

今回の映画、とにかく没頭して向き合うしかないという思いで、ここねさんと一緒におしんの世界に入り込んで取り組みました。福岡の皆さま、震災後のこんな世の中ですが、私たちが生きる上での大切なことが感じられる作品になればと、スタッフもキャストも一体になって一生懸命撮りました。どうぞ楽しんでください。本日はありがとうございました。

 

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祝! 2020東京オリンピック開催決定!


(c) 財団法人日本オリンピック委員会

2020年、第32回夏季オリンピックの開催都市が東京に決定しました!

前回の東京オリンピック、1964年のことを、映画を通じて思い出してはみませんか。
あるいは、まだ生まれていなかった方におかれましては、日本が一番元気だった時代を疑似体験できるチャンスです。

アジアフォーカスでは市川崑監督「東京オリンピック」を上映いたします。

  • 上映日時:9月17日(火)18:30〜
  • 会場:キャナルシティ劇場
みなさまのご来場をお待ちしております。

※本上映は、事情により先着200名様までの入場制限を行いますのでご了承ください。

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梁木ディレクターのここが見どころ「No.10ブルース/さらばサイゴン」(日本/ベトナム)


この作品は、1975年、ベトナム戦争末期に、泥沼のような戦いが続くベトナムで、日本人の手によって幾多の危険を乗り越えて製作、撮影されたものの、諸事情により未公開のままお蔵入りしたといういわくつきの作品。40年の時を超えて、当時のベトナムが甦る奇跡的な作品で、それだけでも必見です。

サイゴン駐在の商社マンだった日本人。殺人を犯してしまった彼が、ベトナムから逃亡するために、戦火をくぐりぬけ解放戦線から南下する避難民とすれ違いながら、サイゴンからフエへ850km北上する、その風景こそこの作品の命です。戦争の末期に、よく撮影できたなぁとつくづく感心します。脚本家として有名な長田紀生の初監督作品で、2013年第42回ロッテルダム国際映画祭正式招待され、ワールドプレミアムを果たしました。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_08.html

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アジアフォーカス2011参加女優 杉野希妃 主演映画「おだやかな日常」が福岡でも上映!

アジアフォーカス2011公式上映作品「歓待」の女優・プロデューサーの杉野希妃さんが、主演・プロデュースの「おだやかな日常」が3月30日(土)よりKBCシネマで公開されます。

実は、福岡を舞台にした映画の共同制作を模索するため、2011、2012に本映画祭に参加したフィリピンの映画監督アドルフォ・ボリナガ・アリックスJr.と、杉野さん、小野光輔さん(「歓待プロデューサー」)を3月30日(土)から、福岡市にお招きします。

そして、今回の「おだやかな日常」公開を記念して主演の杉野希妃さんが、下記のとおり舞台挨拶に登壇されます。皆様ふるってご参加ください。

[会場] KBCシネマ

通常料金 (招待券は利用不可)・自由席

[日時] 2013年3月30日(土)
12:10~14:00 本編上映(102分)
14:00~14:30 舞台挨拶(約30分)


[登壇者] 杉野希妃(『おだやかな日常』プロデューサー/主演)

おだやかな日常

監督・脚本・編集:内田伸輝 プロデューサー:杉野希妃、エリック・ニアリ 撮影:角田真一

出演:杉野希妃、篠原友希子、山本剛史、渡辺杏実、小柳友、渡辺真起子、山田真歩、西山真来、寺島進

2012年/日本、アメリカ/日本語/102分/英題:Odayaka/HD/カラー/Stereo

製作:「おだやかな日常」製作委員会 制作・配給・ワールドセールス:和エンタテインメント

12月22日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー!

 

内田伸輝監督からのコメント

 

2011年3月11日、震災によって原発事故が起きた時、僕は、政府の発表を鵜呑みにしていた。

万が一を考え、近くの人は避難しているだけだろうと思っていた。

しかし、次々と原発が水素爆発するにつれ、これはひょっとしてマズいんじゃないのか?

あれだけの爆発を起こしたのだから僕が住んでいる東京にも放射能は来るのではないのか?と思うようになった。

余震が続く中で、ネットで現状を調べていくうちに、今まで聞いていたメディアの発表とは全く逆の見解をする人が多くいて、原発事故の危険性を指摘する内容に、僕は驚くと同時に、どのタイミングで都内から脱出するかを考えるようになり、緊急地震速報と、電力会社や政府の発表に釘付けとなった。

 

しかし、緊迫した状況は、あくまでもネットと余震で揺れる部屋の中の話。

風に乗って飛んで来る放射能を恐れ、マスクをつけて外に出れば、昼間は買い物客で街はあふれ、子供達は外で遊び、震災から一ヶ月もたっていないのに、人々の様子はいつもの平和なニッポンだった。

そして、ほとんどの人はマスクをせずに、いつも通りに生活をしていた。

 

何故、みんなは避難しないのだろうか?

もちろん、中には危険を感じ、避難する人もいれば、危険を訴える人もいた。

しかし、それらの人たちは「不謹慎」や「風評被害」という言葉で非難され、中には「非難されるのが怖いから」と、現状の心配や不安を、声に出す事を恐れて生活し、そして次第に忘れていった。

 

それは権力を利用し、弱者の言い分を封じ込める構図に似ていた。

東日本大震災以前から、役所でも会社でも、大人でも子供でも、このような状況はよくある話だったが、

しかし震災以降、その状況はさらに露骨な形で現れはじめ、大勢が出る杭を打つように、意見する人間をねじ伏せていく。

そんな状況が、3月11日からずっと続いている。

上辺だけのスローガンで人々の心を操作して、まるで魔女狩りのように、意見する人、自己防衛する人を叩きのめしていく・・・。

僕はこの状況を無視する事が出来なかった。

 

もっと言うと、この現状を無視して、次の映画を撮る事が出来なかった。

それは怒りと言えばそうなのかもしれないが、それとは別に、批判されても良いから、どうしてもこの状況を表現した何かを作らなくては、僕自身が次に進めない。と思ったのが正直な本音だ。

そして、出来るだけ素直に今の東日本を記録するための映画にしたいと思った。

 

しかし、作りたいと思っても、福島と原発事故を舞台にした映画を作りたいわけではなかった。

僕は埼玉県出身で、現在は東京に住んでいる。

もし本当に福島を舞台にした映画を撮ろうと思うのなら、その土地に何年も住み、そこから生まれて来る映画を撮っていきたい。

たぶんそうしないと僕の場合は表面的な映画を作ってしまうだろう。

僕はそれほど器用な人間ではない。

 

だからこそ僕は今の東京を見つめ出した。

表面的には平穏を取り戻しつつある東京。

しかし、皆、表面で作り笑顔をして、ネットの世界で、名前を隠し罵りあっている。

ツイッターやブログでは、安全を主張する人や、危険を主張する人、不安を訴える人、

それを馬鹿にする人で溢れている。

国やメディアも錯乱し、情報公開が遅れ、無用な被曝を受けたり、メルトダウンしていた事も後から分かる始末。

僕たちは「国はとても重要な事を隠している、または隠蔽している」と疑いを持っていく。

いったい、何が本当の事なのだろうか?

野菜から、水から、魚から、次から次へと放射性物質が基準値を超えて発見されている。

それでも国は、「直ちに影響はない」を繰り返すばかり。

その言葉に僕たちは翻弄され、どうして良いのか分からなくなる。

眼に見えない、臭いもない、色もない、風に乗って来る放射能によって、

東京の街は、ゆっくりと人の体を、心を、蝕んでいく。

震災と原発事故によって起きた「心の破壊」が東京には確実にあった。

 

2011年4月、僕は震災と原発事故によって翻弄される東京の人々を描きたいと思い、構想を始める。

初めはプロットのみで、子供のいない夫婦が、原発事故によって、漏れ出た放射能が東京に来てるかもしれないと不安になり、最後は移住を決意するまでの話だった。

プロットを何度か書き直す過程で、夫婦の放射能への不安だけではなく、子供を持つ母親たちの悩みをどうしても物語に入れたいと思うようになってきた。

我が子を放射能から守ろうとする母親達の不安はとても切実だった。

将来、自分の子供がこの原発事故によって病気になるかもしれない。

現実に、不安と絶望の中で母親達は我が子を守るために必死に戦っていた。

僕は戦っている母親達に、どうしてもエールを送りたかった。

周りから罵られ、馬鹿にされても、それでも危険の可能性があるのなら、我が子を必死に守ろうとする母親達に、僕は頑張って欲しいという願いを映画に込めたかった。

そしてその一方で、「大丈夫」と思いたい人達や、不安の声を挙げられない人達、そして偏見によって生まれる差別も映画の中に入れたいと思った。

脚本は、プロデューサーや出演者たちとの話し合いで、最終的には第10稿まで書き直す事になった。

今まで僕が作ってきた映画は、脚本を書かず、プロットのみの即興芝居が主だったが、今回は自分の中で新たな試みを入れたかった。

それは、きちんと脚本を書き、それを出演者やスタッフに読んでもらった上で、現場では即興芝居をワンシーンの長回し撮影していく。

それが良い方法なのか、悪い方法なのか、僕にはまだ分からないが、少なくても自分が求めている生の空気が、今、僕たちが立っている現実が、映画から伝わってくれたら良いと僕は思う。

 

誰かがネットで呟いていた。

「未来が奪われた。原発事故前の世界に戻して欲しい。」と。

過去に帰る事は誰にも出来ない。

しかし、未来を取り戻す事は必ず出来ると僕は信じたい。

この映画は「未来を取り戻す」ための映画だと僕は思っています。


イントロダクション

 

世界が変わったあの日、見えない恐怖がやってきた

胸を引き裂かれた女性たちは、いかに大切なものを守るのか?

 

あの日は、突然やってきた。日本観測史上最大規模のマグニチュード9の大地震、東日本沿岸を襲った巨大津波、そして福島第一原発の事故。そのさなか、東京近郊のマンションに住むサエコは夫から一方的に離婚話を切り出され、ひとりぼっちで幼い娘、清美を育てることになる。原発から飛散した放射性物質への恐怖ゆえに、清美に絶対外で遊ばないように言い聞かせ、自ら購入したガイガーカウンターで幼稚園の庭の線量を計測するサエコ。しかし愛する娘を守りたい一心で取った彼女の行動は、他の母親たちからノイローゼと断じられ、無言電話などの陰湿なバッシングを浴びるはめになってしまう。その頃、同じマンションの隣人であるフリーライターのユカコも、インターネットでチェルノブイリの事例を調べ、放射能への危機感を募らせていた。仕事も手につかず、いても立ってもいられなくなった彼女は、会社勤めの夫に引っ越しをすべきだと主張する。やがて孤立感が深まるばかりのサエコとユカコ、それぞれの不安が限界点に達したとき、見知らぬふたりの人生は思いがけない形で交錯していく……。

世界が一変したあの日、2011年3月11日の東日本大震災の痛ましさに胸を衝かれた多くの映画人は、3.11以後を模索するドキュメンタリーやフィクションの創作に取り組んできた。2010年の『ふゆの獣』で東京フィルメックス・グランプリに輝いた内田伸輝監督もそのひとり。ところが国内外で注目されるこの俊英のアプローチは、ちょっと他とは違っていた。被災地の東北にカメラを持ち込まず、あえて首都圏の平凡な住宅街を舞台に選んだのだ。

3.11直後、福島から微妙な距離にある東京では、「直ちに健康に影響はない」などの曖昧な政府のアナウンスや、あちこちに飛び交うデマが市民を疑心暗鬼に陥れていった。放射能という見えない脅威、見えない怪物にさらされた人々は、いったい何を思い、いかなる行動を取ったのか。内田監督の最新作『おだやかな日常』は、いわれなき風評被害や差別が巻き起こったパラノイア的な社会状況を生々しく再現するとともに、はからずも大切なものを守るために放射能の恐怖との闘いに身を投じたふたりの若い女性の運命を見すえていく。彼女たちの行く手に待ち受けるのは、予想だにしなかった周囲の人々との凄まじい軋轢、そして絶対的な孤独。容赦ないほど鋭い眼差しに貫かれた本作は、絶望のどん底に突き落とされてもなお這い上がろうとする人間の可能性を信じ、予定調和とはかけ離れた壮絶なクライマックスへとなだれ込んでいく。かくして極限のサスペンスと希望のありかを探る迫真のドラマ、その果ての息をのむほど美しい瞬間が、観る者の心を震わせてやまない衝撃的な問題作が完成した。

 

『ふゆの獣』の内田伸輝監督×アジア映画界のミューズ、杉野希妃

傑出した才能たちのコラボレーションが生んだ衝撃の問題作

 

前作『ふゆの獣』で“恋愛”というありふれたテーマを探求した内田監督は、わずか4人の登場人物が心のよりどころを求めて激烈なまでにもつれ、ぶつかり合う様を、即興を採り入れた大胆かつ繊細な演出で映像化。切なさも醜さも愚かさもさらけ出した男女が、まさに獣のごとく剥き出しの感情を暴発させていくまでをただならぬテンションで描ききり、あらゆる観客を驚嘆させた。

このうえなくミニマルな設定のもと、ドキュメンタリーのような臨場感を獲得しながら、人間という複雑な生き物の本質をあぶり出していく独特の映画的感性は、より切迫した社会性をはらむ『おだやかな日常』でも遺憾なく発揮され、観る者は一瞬たりとも目が離せない。放射能という見えないモチーフに果敢に挑み、エモーショナルな心のスペクタクル劇へと結実させたその手腕は、いっそう研ぎすまされた感がある。

もうひとり、この野心的なプロジェクトを牽引したのがプロデューサー&主演女優の杉野希妃である。同じく製作と主演を兼任した深田晃司監督作品『歓待』(10)が世界各国の映画祭で大反響を呼び起こし、第24回東京国際映画祭では異例の特集上映が組まれるなど、アジア・インディーズ映画界のミューズとして脚光を浴びる才女が、企画の準備段階から内田監督との濃密なコラボレーションを実施。さらに愛娘を守るために想像を絶する苦難に見舞われていく主人公サエコの魂の軌跡を、渾身の演技で体現した。

また本作を通して、多くの観客は篠原友希子という驚くべき女優を発見することになるだろう。大地震発生のオープニング・シーンから、杉野とのほぼ唯一の共演シーンとなるクライマックスまで、放射能に蝕まれゆく過酷な現実の中で揺れ続けるユカコの内なる葛藤を表現。今後の新作として、田中慎弥の芥川賞小説を青山真治監督が映画化する話題作『共喰い』(13年夏公開)も待機中の注目株である。脇を固めるのは『マイ・バック・ページ』の山本剛史、『カラスの親指』の小柳友、『SR サイタマノラッパー2 ~女子ラッパー☆傷だらけのライム~』の山田真歩らの若き個性派たち。日本映画界の最前線で活躍する渡辺真起子、寺島進も印象的な役どころを担い、3.11以後の未来を世界に問う本作を力強く盛り立てている。


ストーリー

 

携帯電話の、緊急アラーム音が鳴り響く。2011年3月11日の午後。ここ、東京近郊のとある街のとあるマンションも、すさまじい揺れに襲われ、ユカコはそれに必死に耐える。サエコは5才の娘の清美を幼稚園に迎えに走った。

 

地震と、津波の凄まじい被害が報道される中、福島原発は未曾有の被害を受けた。水道が止まり、スーパーの棚が空っぽになり、震源地から遠いこの街に暮らす人々の生活もまた一変した。しかし、福島原発から漏れだす、目に見えない、色もにおいもない、不気味な放射能が、実は最も危険なのではないか。政府が「直ちに放射能の影響は無い」と繰り返す一方で、ネットには政府とは正反対の言葉があふれ、情報が錯綜し何を信じてよいか分からなくなる。 政府が嘘を言っているかもしれない、何かを隠しているかもしれない、そんな疑いは募るばかりで、徐々に放射能への不安が抑えられなくなって行くユカコ。夫タツヤは、そんな思いつめた様子のユカコに、戸惑いを隠せない。

 

一方、夫ノボルに、震災直後に別の女性のもとに去られたサエコもまた、不安にかられている。ようやく電話が通じ両親の無事が確認できたが、実家は被災していた。たったひとりで清美を守るために、幼稚園で必死に放射能の危険性を訴えるサエコ。その言動は周囲の不安を煽り、母子はどんどん孤立してゆく。

 

離婚届を置き、荷物を取りにきたノボルが去った後、鼻血を流す清美。絶望にかられたサエコは、清美を道連れに無理心中をはかる。隣の異臭に気づいたユカコは、ベランダ伝いにサエコの部屋に飛びこみ、ガス栓を締めて母子を助け出した。サエコが目を覚ましたのは、病室。枕元には、被災地から駆け付けた両親の姿があった。しかし、清美はいない。孫の安全を慮ったノボルの両親が、自宅に連れ帰ったのだった。避難所で暮らしているサエコの両親は、それに従うしかなかった。慟哭するサエコ。

 

自宅マンションに戻ったサエコは、隣人のユカコを、なぜ死なせてくれなかったのか、と責め立てた。しかし、ユカコはなぜ娘までも殺そうとしたのかと、サエコに反論する。子供を守りたい、でも、守れない、と泣きじゃくるサエコ。ユカコは思わずサエコを堅く抱きしめ、だいじょうぶ、だいじょうぶと励ます。子供にまつわる重い過去を持つユカコだったが、隣人でありながら、軽く挨拶を交わす程度の付き合しかなかったこの二人は、強い絆で結ばれた。

 

ユカコに促され、共にノボルの実家に向かったサエコは、清美を取り戻す。そして、ユカコの思いや不安をかみしめ、受け入れたタツヤは、大きな決断をする。ユカコもまた、新たな大きな一歩を踏み出そうとしていた。

 

第17回釜山国際映画祭ワールドプレミア上映でのQ&A

 

 

撮影 斎藤文

————二組の夫婦の在り方を対照的にしたのは何故か?

内田「震災以降、考え方の違いから離婚するケースが増えている。また逆に震災をキッカケに絆を深めて結ばれる夫婦も多くいる。サエコ夫婦の場合、震災前からこの夫婦の関係は冷えきっていたのだが、震災をキッカケにそれが露になった一つのケースでした。きれいなものだけを撮るのが映画ではないと私は思っています。」

 

————日本の人は、放射能汚染に無関心なのか?

内田「東京で汚染を気にしている人の数は、表面的には、かなり少ないように見えますが、ネットなどの匿名の人の書き込みなどを見ると、どこかで不安に思っている人は多くいます。無関心な人と、そうでない人の数は同じくらいだと思います。最近では、総理官邸前で原発再稼働反対デモの数も増えて来ていて、声を出す人の数は徐々に増えているような気がします。」

 

————演技的にも見せ場が多く、女優としてこの作品に挑戦するのには相当な覚悟が必要だったと思うが、何故オファーを受けたのか?

杉野「監督から企画のオファーを受けて、プロデューサーとしても是非一緒にこの作品を作りたい、作らなければいけないと思いました。この震災をキッカケに、日本は外に、海外に目を向けて行くと思いましたが、どんどん閉鎖的になって行く事に何とかしなければという気持ちでした。」

篠原「きれいなものだけではなく、人間のネガティブな部分もちゃんと演じられてこそ役者だと思うし、そういう作品に心惹かれます。」

 

————監督からはどのような演出をされたのか?

杉野「台本は完璧に100ページくらいありましたが、現場では全て忘れて本当に感じたことだけを言葉にしてほしいと言われました。役者として試されているような感じが、とてもエキサイティングで面白いと思いました。」

篠原「監督はもっとこうしてああしてと細かく言うタイプではないです。感情を爆発させたり、抑えたりと、自分が意識的にコントロールをしたというよりは、監督がうまく導いてくれたように思います。」

(2012年10月5日釜山、ロッテシネマにて)

撮影 斎藤文



スタッフ

 

監督/脚本/編集:内田伸輝 UCHIDA Nobuteru

 

1972年埼玉県上尾市出身。画家を目指し油絵を学んでいたが、高校時代に映画に目覚め、絵筆をカメラに持ち替え独自の世界観を映像で表現し始める。

ドキュメンタリー『えてがみ』でぴあフィルムフェスティバル2003審査員特別賞、第28回香港国際映画祭スペシャルメンションを受賞した他、世界中の映画祭で上映され高い評価を受けた。初めての長編劇映画『かざあな』で第8回TAMA NEW WAVEグランプリや主演女優賞をはじめ、ぴあフィルムフェスティバル2008で再び審査員特別賞を受賞した。海外では、第27回バンクーバー国際映画祭コンペティション部門に正式招待される。

2010年、長編劇映画2作目となる『ふゆの獣』で、第11回東京フィルメックス最優秀作品賞を獲得。第40回ロッテルダム国際映画祭のタイガーコンペティション部門や第35回香港国際映画祭、第13回台北映画祭など数多くの映画祭に招待され話題を呼んだ。

 

フィルモグラフィー

2002年『えてがみ』”Pictorial Letters” (ドキュメンタリー)

★ ぴあフィルムフェスティバル2003 審査員特別賞

★第28回香港国際映画祭 スペシャルメンション

第4回TAMA NEW WAVE コンペティション

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2003 コンペティション

ニッポンコネクション2004 (ドイツ)

2005年『ぬくもり』(短編)

TAMA 短編映画祭 2005

2007年『かざあな』

★ぴあフィルムフェスティバル2008 審査員特別賞

★ 第8回TAMA NEW WAVEグランプリ・主演女優賞

★広島映像展2008 グランプリ・企画脚本賞・演技賞

第27回バンクーバー国際映画祭 コンペティション

2010年『ふゆの獣』”Love Addiction”

★第11回東京フィルメックス コンペティショングランプリ

★第40回ロッテルダム国際映画祭 タイガーコンペティション

ゆうばりファンタスティック映画祭2011

大阪アジアン映画祭2011

第35回香港国際映画祭

ニッポンコネクション2011

第13回台北映画祭

サンクトペテルブルク国際映画祭2011

ニューヨーク・ジャパンカッツ映画祭2011

第5回シネマデジタルソウル映画祭

INDIE2011(ブラジル)

 

プロデューサー/主演:杉野希妃 SUGINO Kiki

 

1984年広島県出身。慶應義塾大学在学中にソウルに留学。2006年、韓国映画『まぶしい一日』宝島編主演で映画デビューし、続けて『絶対の愛』(キム・ギドク監督)に出演。帰国後2008年に『クリアネス』(篠原哲雄監督)に主演。2010年に主演兼プロデュースした『歓待』(深田晃司監督)が東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞などを受賞した他、100以上の映画祭からオファー殺到。2011年、第24回東京国際映画祭で「アジア・インディーズのミューズ」という特集が組まれ、第33回ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞、おおさかシネマフェスティバル2012の新人女優賞を受賞。その他の主演兼プロデュース作品は『マジック&ロス』(リム・カーワイ監督)、『避けられる事』(エドモンド・ヨウ監督)、『大阪のうさぎたち』(イム・テヒョン監督)など。『ほとりの朔子』(深田晃司監督)、『Jury』(イム・テヒョン監督)、『Kalayaan』(アドルフォ・アリックス・ジュニア監督)などが公開待機中。監督として『忘却』『湖水地方』を企画開発中。既存の枠にとらわれないボーダーレスな表現者を目指している。

 

フィルモグラフィー

2005年『まぶしい一日』(キム・ソンホ監督)主演

2006年『絶対の愛』(キム・ギドク監督)出演

2008年『クリアネス』(篠原哲雄監督)主演

2010年『避けられる事』(エドモンド・ヨウ監督)プロデュース/主演

第7回ドバイ国際映画祭

第40回ロッテルダム国際映画祭

第12回全州国際映画祭

第14回上海国際映画祭

2010年『マジック&ロス』(リム・カーワイ監督)プロデュース/主演

第15回釜山国際映画祭

第6回大阪アジアン映画祭 コンペティション

第24回東京国際映画祭

2010年『歓待』(深田晃司監督)プロデュース/主演

★第33回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞

★おおさかシネマフェスティバル2012 新人女優賞

★第24回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 最優秀賞

★第15回プチョン国際ファンタスティック映画祭 NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)

第40回ロッテルダム国際映画祭

第35回香港国際映画祭

第54回サンフランシスコ国際映画祭 他50ヶ所以上の映画祭で上映

2010年『少年少女』(太田信吾監督、ドキュメンタリー) プロデュース/出演

第6回大阪アジアン映画祭

2011年『大阪のうさぎたち』(イム・テヒョン監督)プロデュース/主演

第24回東京国際映画祭

第7回大阪アジアン映画祭

プチョン国際ファンタスティック映画祭

2012年”Kalayaan”(アドルフォ・アリックスJr監督)共同プロデュース/出演

★第28回ワルシャワ国際映画祭 NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)

シネマラヤ映画祭2012

第17回釜山国際映画祭

2013年『残香』(エドモンド・ヨウ監督、短編)プロデュース/主演

2013年『審査員』(イム・テヒョン監督)プロデュース/主演

2013年『ほとりの朔子』(深田晃司監督)プロデュース/出演

2013年”Forgiveness(仮)”(ラヴ・ディアス監督)プロデュース/主演 一部撮影済

撮影:角田真一 TSUNODA Shinichi

1965年生まれ。2003年『花とアリス』で岩井俊二監督と篠田昇撮影監督と出会い映画撮影デビュー。その後、『虹の女神』(06熊澤尚人監督)、『ハルフウェイ』(09北川悦吏子監督)、『天使の恋』(09寒竹ゆり監督)、『BANDAGE』(11小林武史監督)、『friend after 3.11』(12岩井俊二監督)などの作品で撮影を担当。その他にも数多くものドキュメンタリー作品を撮影しており、一眼レフムービーを生かした手持ち撮影の第一人者のひとりである。

 

サウンド:徐敬太 JO Keita

 

サウンドデザイナー、作曲家。東京大学在学中に渡米。現在ニューヨークを拠点にフリーランスで、テレビ、コマーシャルはもとより、地球温暖化の研究プロジェクトでサウンドデザインによる情報表示、シンセサイザーなどを使った音響ライブパフォーマンス、ハンス•リヒターの実験映画のRe-Scoreプロジェクトなど、幅広く革新的に、音のクリエーターとして活躍中。映画は本作の他、『マジック&ロス』(リム・カーワイ監督)、『Folkswagon』(Shachar Langlev監督)、『残香』(エドモンド・揚監督)、『もう一回』(平柳敦子監督)、『大阪のうさぎたち』(イム・テヒョン監督)、『ほとりの朔子』(深田晃司監督)など、多々、音響監督、音楽を手がけている。空間、画に絶妙にはまるその独特な音像は強烈な印象を残す。

 

 


キャスト

サエコ:杉野希妃 SUGINO Kiki

スタッフプロフィールをご覧ください。

 

ユカコ:篠原友希子 SHINOHARA Yukiko

 

1981年神奈川県出身。2006年、『中学生日記』(山下敦弘監督)をきっかけに役者デビュー。以降、同監督や大根仁監督、今泉力哉監督などの作品に多く出演。2011年には、岸田戯曲賞受賞劇団であるポツドールのオーディションで主役の座を射止め、暴力とレイプシーンを含む激しい公演を1ヶ月間こなした。その後、そこでの演技力が各方面から高く評価され注目を集め、2013年夏公開予定の『共喰い』(青山真治監督)ではヒロインの一人に抜擢されている。

 

タツヤ:山本剛史 YAMAMOTO Takeshi

1976年愛知県出身。インディーズシーンで絶大な人気を誇る異色俳優として映画を中心に活躍。山下敦弘監督作品の常連。主な出演作品は、『ばかのハコ船』『その男、狂棒に突き』『不詳の人』『マイ・バック・ページ』(山下敦弘監督)、『青空ポンチ』『堀川中立売』(柴田剛監督)、『ピーカン夫婦』(元木隆史監督)、長塚圭史が演出する舞台「浮標」など多数。2013年1月公開予定の『さよならドビュッシー』(利重剛監督)や『FUN FAIIR』(真利子哲也監督)が公開待機中。

 

清美:渡辺杏実 WATANABE Ami

2006年3月10日生まれ。東京都出身。主な出演作品は2010年「NHK土曜時代劇 桂ちづる診察日録」、2011年「CX金曜プレステージ 浅見光彦シリーズ 佐渡伝説殺人事件」など。今後の目標は、同年代とお芝居ができるような学園ものの作品に挑戦すること。現在、スイミングスクールに通っている為、泳ぎを生かした演技もしてみたいと意欲を見せている。

 

ノボル:小柳友 KOYANAGI Yu

1988年東京都出身。2006年、『タイヨウのうた』で映画デビューを果たす。2007年に『クローズ ZERO』(三池崇史監督)などに出演。2008年に『トウキョウソナタ』(黒沢清監督)の長男役で注目される。その後も『大洗にも星はふるなり』『阪急電車 片道15分の奇跡』『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』や、2012年NHK大河ドラマ「平清盛」にも出演。メインキャストの一人として参加した『カラスの親指』が公開待機中。

 

典子:渡辺真起子 WATANABE Makiko

1968年東京都出身。モデルとして活動後、『バカヤロー!私怒ってます』で映画デビュー。その後『M/OTHER』(99諏訪敦彦監督)『魂萌え』(07阪本順治)『殯の森』(07河瀬直美監督)『愛の予感』(07小林政広監督)『愛のむきだし』(09園子温監督)など著名な監督の話題作に次々と出演し、出演作品の多くが海外の映画賞を多数受賞している。今年公開/撮影作品も『ヒミズ』(園子温監督)、『ギリギリの女たち』(小林政広監督)、『莫逆家族』(熊切和嘉監督)、『Playback』(三宅唱監督)、『100万回生きた猫』(小谷忠典監督)、『チチを撮りに』(中野量太監督)、『ほとりの朔子』(深田晃司監督)に出演。巨匠から若手まであらゆる監督とタッグを組み、その唯一無二の存在感と安定した演技力で信頼を得ている女優である。

 

美加:山田真歩 YAMADA Maho

1981年東京都出身。2009年、『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』(加藤行宏監督)で映画デビュー。2010年『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(入江悠監督)では、主人公アユムを演じている。その他『レンタネコ』(荻上直子監督)『愛と誠』(三池崇史監督)『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ監督)『楽隊のうさぎ』(鈴木卓爾)などに出演。

 

洋子:西山真来 NISHIYAMA Maki

1984年京都府出身。神戸大学在学時より劇団「象、鯨。」を主宰。解散後、『へばの』(木村文洋監督)、『面影〜omokage』(万田邦敏監督)、『焦げ女、嗤う』(瀬川浩志監督)、『コワすぎ!#01口裂け女捕獲作戦』(白石晃士監督)など映画に出演。2012年は、TV「リーガルハイ」「好好!キョンシーガール」、演劇「アンティゴネーへの旅の記録とその上演」(マレビトの会)などにも挑戦し、活躍の場を広げる。

 

シンジ:志賀廣太郎 SHIGA Kotaro

1948年兵庫県出身。1971年、桐朋学園大学短期大学部専攻科演劇専攻修了。

1978年より母校の演劇科にて非常勤講師を務める。 教壇に立つ傍ら、1990年に42歳で劇団「青年団」に入団。45歳で俳優デビューした。2000年頃よりメディアへの出演が増え、ドラマや舞台において、上司役や刑事役、教師役や医者役などを持ち前の風貌と渋い声で演じる。

 

被災地から来た男:寺島進 TERAJIMA Susumu

1963年東京都出身。1986年『ア・ホーマンス』(松田優作監督)で映画デビュー。『ソナチネ』『HANA-BI』『BROTHER』など、北野武映画で知名度を上げる。元々は映画中心の芸能活動だったが、『アンフェア』などテレビドラマへも活躍の場を広げ、人気を博す。数々の映画賞の受賞歴を持ち、2006年第29回日本アカデミー賞では優秀助演男優賞に輝いている。

 

クレジット

 

スタッフ

監督・脚本・編集:       内田伸輝

プロデューサー:        杉野希妃、エリック・ニアリ

エグゼクティブプロデューサー: 小野光輔

スペシャルアドバイザー:    アミール・ナデリ

コエグゼクティブプロデューサー:依田康、中林広樹、株式会社セントグランデW、依田健、竹之内哲次

アソシエイトプロデューサー:  斎藤文、徐敬太

撮影:             角田真一

録音:             高田伸也

美術:             山下修侍

助監督:            桑島憲司

ラインプロデューサー:     三好保洋

衣装・メイク:         岩橋奈都子

サウンドデザイン:       Jo Keita

スチール:           斎藤文

製作:             「おだやかな日常」製作委員会

制作・配給・ワールドセールス: 和エンタテインメント

宣伝協力:           テレザ、キノ・キネマ

 

 

キャスト

サエコ:            杉野希妃 SUGINO Kiki

ユカコ:            篠原友希子 SHINOHARA Yukiko

タツヤ:            山本剛史 YAMAMOTO Takeshi

清美:             渡辺杏実 WATANABE Ami

ノボル:            小柳友 KOYANAGI Yu

典子:             渡辺真起子 WATANABE Makiko

美加:             山田真歩 YAMADA Maho

洋子:             西山真来 NISHIYAMA Maki

シンジ(サエコ父):       志賀廣太郎 SHIGA Kotaro

被災地から来た男:       寺島進 TERAJIMA Susumu

 

電気屋店員:          古舘寛治 FURUTACHI Kanji

マリ先生:           木引優子 KIBIKI Yuko

森田先生:           松浦祐也 MATSUMURA Yuya

和久井:            高嶋寛 TAKASHIMA Kan

カズコ(サエコ母):       おぐちえりこ OGUCHI Eriko

エリコ(ノボル母):       三谷悦代 MITANI Etsuyo

ヒロト:            佐藤博行 SATO Hiroyuki

公介:             高木公介 TAKAGI Kosuke

理子:             片倉わき KATAKURA Waki

和恵:             よこえとも子 YOKOE Tomoko

梶原:             志戸晴一 SHIDO Seiichi

警官:             芦川誠 ASHIGAWA Makoto

婦人警官1:          小枝 Koeda

婦人警官2:          小瀧万梨子 KOTAKI Mariko

マスク男1:          折原アキラ ORIHARA Akira

マスク男2:          深田晃司 FUKADA Koji

 

2012年/日本、アメリカ/カラー/102分/HD/Stereo/日本語

HP:http://www.odayakafilm.com

Twitter:http://twitter.com/odayakafilm

Facebook:http://www.facebook.com/odayakafilm

 

 

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【ボランティアレポ】この映画を観ました!「黄金を抱いて翔べ」

〈広報ボランティア H・S〉

「黄金を抱いて翔べ」特別試写会を終えて

 

「札束より欲しいもの、おまえにはあるのか?」

こんなこと聞かれたらドキリとします。私は、欲張りなので他に沢山「ある」。
でも、この映画に登場する人達であれば答えは「ない」かもしれません。
その位、登場人物の誰もが黄金を手に入れる他に生きていく術がないのです。
人生最後の賭のような。。

 井筒監督が舞台挨拶で、「心臓を、バクバクしながら映画を観て欲しい。」とおっしゃっていましたが、ずっと「バクバク」しっぱなしで息も付けない状態でした。先が読めないストーリー展開で、観終わった後はぐったりしました。

この作品は、20年来監督が映画にしたいと思いを寄せていた高村薫原作の作品です。豪華な俳優陣に対し、主役の妻夫木聡の演じた幸田は「なかなか演れない役。さすがだ」と大絶賛。そして、リーダー役の浅野忠信については、「クランクインの2カ月も前から角刈りにしていた。」との面白エピソードも披露。2人を「ジャイアンとのび太」に例える台詞もあり、ピッタリ!お二人の演技は必見です。

登場人物のキャラが際だっているので、一人ずつの立場で見直すと違った角度から何度も観ることが出来る作品です。そして、全員がワルだけど愛すべきキャラクターなのがこの映画の一番の魅力だと思います。

心臓がバクバクしたくなったら、是非ご覧下さい。でも、途中で止める事はできませんのでくれぐれもご注意下さい。

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【ボランティアレポ】この映画を観ました!「ひかりのおと」

〈広報ボランティア M・O〉

『ひかりのおと』


山崎樹一郎監督の『ひかりのおと』は、酪農をしている家族について描かれた作品です。

Q&Aでは山崎監督、桑原広考プロデューサーに登場していただきました。
最初に質問した方は、酪農についての自分の悲しい体験を涙ぐみながら語り、印象的でした。
また、今朝稲刈りをしてから来たという方もいらっしゃいました。
この作品の舞台が農家ということで、元から農家を舞台に設定していたのかという質問に対し監督は、知り合いの農家を見て思いついたとおっしゃっていました。
さらに監督は、岡山県でトマトを栽培しながら映画を製作したそうで、トマトの葉が太陽に当たりキラキラしているのを見ると「光合成をしているんだ」と思う、そしてこれは目で見るというより音で感じるとおっしゃっており、これが『ひかりのおと』というタイトルの由来だそうです。

Q&Aの最中お二人とも落ち着いていて、質問に対し詳しく答えていただきました。
また、観客の方々もお二人の話を興味深そうに聞かれていました。

上映終了後のサイン会では沢山の方が参加しており、山崎監督と会話をしながらサインをしていただいていました。

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シンポジウム② 映画を耕す~農業は映画だ!~

●パネリスト 
中江裕司(「ナビィの恋」監督)
山崎樹一郎(「ひかりの音」監督)
梁木靖弘(本映画祭ディレクター)
※司会 村山匡一郎 


グローバル化の中でいかに自立できるか “地産地生”に観る映画の可能性



9月17日(祝・火)に開催された映画祭シンポジウム。その第2部のテーマは「映画を耕す~農業は映画だ!」。ハリウッド、そして東京、と中央から流れてくる映画産業の現システムに対し、地域に根差した映画製作をしている監督を招待し、今後の映画製作の可能性を探るという内容。司会の映画評論家、山﨑国際ドキュメンタリー映画祭アドバイザーの村山匡一郎さん、パネリストの「ナビィの恋」監督の中江裕司さん、「ひかりのおと」監督の山崎樹一郎監督、そして梁木ディレクターが会場に登場すると、会場の雰囲気が一気に盛り上がりました。

注目は、岡山県真庭市で実際にトマト農家を営みながら、農閑期にのみ映画製作を行っている山崎樹一郎監督。現在トマト収穫の真っただ中、大阪に住む父親に任せて、台風のなか来福した山崎監督。「ひかりのおと」には自伝的要素も詰まっています。「〝ものづくり〟という点では農業も映画も同じ。そこを理論的に話が聞きたかった」という梁木ディレクターの熱いコールにより実現したシンポジウム。元々大学で自主製作映画を撮っていた監督ですが、就職氷河期と重なり、何を撮っていいかわからなくなった時、「自分の日常=食」が目についたといいます。「食卓に運ばれている食物がどう作られているのか全くわからなかった。農業は、ものづくりの際たるもの。そこで、ゼロから映画を含めものづくりにチャレンジすることにした」と山崎監督。現在、地元を含め、巡回上映をコツコツと行い、その姿勢が海外からも熱い視線を浴びています。

そこで、地域に根差して約30年の先駆者・中江裕司監督が熱く語りました。中江監督は沖縄で劇場を経営し、映画だけではなく、音楽ライブやワークショップ、雑貨店などを同空間で行い、地域の人々が集う場所を構築している真っ最中。その合い間に映画館のない離島へ巡回上映に出向き、映画の面白さを伝えているというエネルギッシュさ。「映画館、と名付けずに〝劇場〟としたのは、より間口を広げるため。私は映画監督ですが、人が喜んでもらうのが好きで、いろいろと人が集まる仕掛けを考えています。映画に特化することはなくサービス業と考えないと、映画監督としても生き残っていけません」と語気を強めます。
「現在の映画産業の問題は中央資本主義。地方各地から単館系の映画館が消え、シネコンでは同じ映画しか観られなくなった。中江監督や山崎監督の作品は、映画祭でしか観られないという現状。ハリウッドを視点にグローバル化が映画に要求するのは、消費としての映画。映画という本質を飛び越えて、経済の問題になってきている」という梁木ディレクターの言葉に対し、「本当は人の問題かもしれない。ハリウッドの映画こそ、本当の映画だと言い切って認識してしまう人が多く、それはマインドコントロールにも近い」と村山さん。話が盛り上がるにつれ、農業と映画を飛び越えて、映画というものの根本に及んできました。事実、中江監督は沖縄離島を中心に、精力的に巡回上映を行い、山崎監督もそれに続きます。「巡回上映を行っていると、映画においてのライブ感がいかに大事かがわかるんです。そこで地域の人々が交流し、新しいものが生まれて行く」と中江監督。「映画はそもそも非日常的でイベント性を含むもの。それが家で一人で観られる環境が主流になった。問題はシネコンが増え、どの映画館も同じ映画が上映されることになり、単館系の素晴らしい映画が全国に行き届かない」と梁木ディレクターは、中央集権的な配給体制に警鐘を鳴らします。「映画は人に観てもらうもの。地域から生まれても全国、全世界の人々に観てもらう体制をつくるのが急務。それこそ地産池消じゃなく、山崎さんの提案する〝地産地生〟なんです」という村山さんの言葉に、会場のみなさんは深くうなずきました。

そして、話はフィルムからデジタル化の内容に。「この1年間で全国から35mmのフィルム映写機が消え、結果100の映画館がなくなるだろう」との危機的な予想をもとに、「これからは、本当に中央集権主義をなくしていき、地域が頑張って、独自の配給網を作らなければならない。そのためには地域の自立が非常に大切になってくる」と中江監督。

「農業と映画」をテーマに始まったシンポジウムでしたが、最終的には、「映画」というものの根本を考える機会になった、非常に有意義な1時間半でした。これを危機と考えるのか、過渡期と考えるのか…。「農業も映画も同じ。耕し続けないと枯れてしまう」との山崎監督の言葉が、パネリストや観客の心に深く突き刺さりました。

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