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FOCUS ON CINEMA⑬【慶州〈韓国〉ディレクター懇談】

監督 チャン・リュル
プロデューサー キム・ドンヒョン


チャン・リュル監督の実体験から着想した物語

 

チャン・リュル



アジアフォーカス・福岡国際映画祭ではおなじみのチャン・リュル監督。「昨夜も屋台で飲んだんですか?」「もちろん!」という会話から始まった懇談は、監督が口を開くたびに陽気な笑いに包まれます。監督とプライベートでも親交がある梁木ディレクターも「監督の映画は説明が少ない分、観る側に解釈を委ねるところがいいですよね。でも、いつも話をはぐらかされる(笑)」。

中国に住む監督が初めて韓国を訪れたのは1995年。その時、慶州のお茶屋に立ち寄ったといいます。「数年後、知り合いの葬儀で韓国に来た時、衝動的に慶州へ向かったんです。この映画はそんな私の実体験から着想しました。私の時は美しい店主はいなかったんですけど、この映画で叶いました(笑)」。

これまでの監督の映画と違って、和やかなタッチで描かれる本作。これまでは映画音楽を使いませんでしたが、「あたたかい愛にあふれた映画です。愛を描くには音楽が一番だと思い、採用しました」と監督。

キム・ドンヒョン



今回、主人公を演じた人気俳優、パク・ヘイルさんも監督の映画の大ファン。「福岡という街が大好きになりました、本当に来て良かった」と初来福の印象を屋台で飲みながら語り合ったそうです。「パクさんと福岡の屋台を舞台にした映画を撮ろうと盛り上がりました。屋台の主人がパクさん、シン・ミナさんも登場させようか!」と監督が言えば、プロデューサーのキムさんも「監督がお望みであればいつでも準備していますよ」と茶目っ気たっぷり。梁木ディレクターも「来年は当映画祭25周年の記念の年。ぜひ全面的にバックアップしたい! 希望がわいてきたなあ」と目を輝かせていました。

冗談とも本気ともつかない愉快な話でそこにいる人を引きつけ、映画製作へと巻き込んでいく監督。「私は詐欺師みたいなもの」と大笑いしながら、いつか大好きな柳川の水辺でも撮ってみたいなあと夢を語ってくれました。

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FOCUS ON CINEMA⑫【山猪(いのしし)温泉〈台湾〉Q&A】

(左より)クオ・チェンティ、ルー・イーチン、ウー・イーティン



監督:クオ・チェンティ
主演女優:ルー・イーチン
女優:ウー・イーティン


 

2009年、台湾南部で起きた台風の被害は記憶に新しいところです。今作は実話を基にしたフィクションで、被災地となった村の人たちが生きて行く姿が力強く描かれています。会場に監督と二人の女優が現れるとパッと華やいだ雰囲気になりました。

 

Q:台風の被害は日本でも大きなニュースになっていました。その後の復興状況はどうなんでしょうか?

監督:私たちがロケを行なった南部のシンカイ村では28名の方々が台風の犠牲になり亡くなられました。ロケは2012年の11月、12月に行なったのですが、映画の中でご覧の通り、土砂が積もっていて、まだ整備も何もされていない状況です。この時点で村人の半分は山の麓に引っ越していきました。その村は温泉宿など観光業を営む方たちが多かったのですが、被災後、村に残った人たちはエコロジーを意識した手工業での工芸品づくりなどを始め、自然と共存して生きて行こうと努力をしています。青少年が生態系の勉強ができるようにサポートしたり、自然と共に生きる人々と触れ合い、生活を体験するエコツーリングを行ったり…と、村人の皆さんたちは今とても頑張っていらっしゃいます。一回破壊された村が再生するということは大変難しいと感じました。

 

Q:映画内では梅の花がとても印象的でした。日本では冬に咲くのですが、台湾ではもっと早く咲くのですか?

監督:12月末、新年を迎える頃に咲いていましたね。梅は亡くなった父親との思い出を結びつける為に印象的な演出を行いました。また、災害にも負けず頑張っていこうという思いも込めています。2009年8月の台風の後、雨の降らない日々がずっと続き、12月に咲いた梅の香りは普段よりもとても強かったそうです。村の人々が「梅は水害に驚いてこんなに強く咲いたんだね」と言っていました。

 

Q:女優のお二人はキャスティングが決まった時どう思いましたか?

ルー:実際村に行ってモデルとなった女性に会いました。その方のご主人が台風で亡くなられたんですが、台風の前夜に口ゲンカをして台風の日、家を出ていかれてしまったんです。その後、女性はうつ病になってしまったんですね。私は彼女にどんな気持ちだったかをストレートにお聞きし、思いをくみ取っていきました。
監督:私がその彼女にインタビューをした時、一切泣かずに強く答えられていたんですが、ルーさんが彼女と話した時は積もった感情を爆発させたそうです。彼女はルーさんには心を開いたんでしょうね。感謝しています。

ウー:私の祖母が日本の茨城県に住んでいるんですが、東日本大震災の時にとても心を痛めた経験もあり、実際村人を取材する時に心の傷に触れやしないかとドキドキしながら話をお聞きしました。私のモデルは男性だったのですが、とても気丈に話してくれて、彼の思いにできるだけ近づくように役作りをしていきました。

 

一つひとつの質問に丁寧に応える姿が印象的だった3人。インタビュー中もお互い褒め合うなど、仲の良さと一つの大作を共につくりあげた絆を感じられたQ&Aでした。

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FOCUS ON CINEMA⑪【慶州〈韓国〉Q&A】

 

監督:チャン・リュル
俳優:パク・ヘイル
プロデューサー:キム・ドンヒョン

(司会:梁木靖弘)

 

チャン・リュル



Q(司会):監督の作品は、説明が少ない分、いろんな要素が入っていて本作に登場するお茶のように何回でも美味しいという気がします。この作品は生と死の間のたゆたい、メディテーションといいますか、生と死のバランスがとてもいいと解釈したのですが、監督、いかがですか?
監督:私は、たいした考えはあまり持っていないんです(会場笑)。

 

Q(司会):はぐらかされましたね(笑)。じゃあ、主人公のパクさんに聞きましょう。カラオケの場面でされた独特の動き。あの演技指導はどういうものだったのですか(会場笑)。

パク・ヘイル



俳優:監督自ら、動いてみせてくれたんですが、とても真似できないような動作だったんです(会場笑)。でも頑張って撮りました(会場笑)。あの動きは、監督にしかできません。

監督:私がそのポーズをとったら、会場から皆さん出ていくと思いますよ(会場笑)。

 

Q(司会):パクさん、監督の演技指導は、どんな感じなんですか?

俳優:撮る前に指示をするという監督ではありません。ただ撮影の3〜4時間前に散策する時や、監督が好きなビビンバを召し上がる時なんかに、俳優のコンディションに合わせて話をしてくださるんです。新鮮な体験でしたし、いい機会だったと思います。

Q:チャーミングな映画で大好きだったんですが、日本人が出てくるシーンを観ると、今までの登場の仕方とは違って、アジアの中心軸がさりげなくずらされているようにも感じたんですが。

監督:そこまでたいした考えはないんですけども(笑)。違う人たちが集まると居心地が悪い時もありますよね。そこでユーモラスな話をして雰囲気を和らげるというのは良い方法だと思うし、日常にもっと増えればいいと思っています。映画の中では、納豆に助けられました(会場笑)。

 

Q:前知識なく鑑賞させていだきましたが、とても楽しめました。映像的には様式をしっかり見せながら感情をコントロールしているように見せて、結局、感情があふれる部分が出てきているように思いました。なぜこんな世界観を撮られたのか、監督の原体験などありましたら教えてください。

監督:自分の世界観というのは、未だにわからないんですよね。探し続けている途中だと思います。1995年から韓国と行き来するようになって20年ほど経ちます。初めて韓国を訪れた時、慶州のお茶屋さんを訪問したことがあります。その7年後、知り合いが亡くなって韓国に来た際も、衝動的に慶州に行ってみた、それが映画の着想になっています。私の時は美しい店主はいなかったんですけど、今回の映画ではそれを叶えることができました(笑)。

 

Q:パク・ヘイルさんを主役にしたのはどんな理由ですか。

監督:ご存知のように、とても素晴しい俳優さんです。最初、承諾してもらえるかわからない状況でした。ギャラもたくさんあげられませんでしたが、その代わり、二人でお酒をたくさん飲みました(会場笑)。酔ってるうちに承諾してくれたのかも。

俳優:もちろんお酒もたくさん飲みましたけれども、以前からとてもいい映画を撮る監督だなと尊敬していました。監督のことをもっと知るきっかけになるんじゃないかなと思い、承諾しました。監督はシナリオどおりに撮るよりは、現場の状況を見ながら進めていくタイプ。その変化しながら撮影していくことを楽しみながら関わることができました。

 

キム・ドンヒョン



Q:プロデューサ−として、どういう作品に監督が仕上げるかわからないなか、企画を通すのは大変だったのでは?(会場笑)

プロデューサー:ああっ!(会場笑) 監督の名声と、これまで撮られた芸術的な作品を観て、一緒に仕事をしたいなと思ったんです。もちろん悩んだ時もありました。でもお酒を飲んでから契約をしました(笑)。正直に言いますと、素晴しい監督と素晴しい俳優が集まって意気投合して作った作品なので制作側としても愉しく有意義な作品になりました。

 

Q:これまで監督の映画をアジアファオーカスで何本か観てきたんですが、いつも社会的な問題などを扱ってこられました。今回は少し雰囲気が違うと感じたんですが。

監督:確かに、以前の作品とはひと味違うと思います。その原因というのは歳月です。50歳過ぎたら鋭いところが抜けてくるというか、今はもっと多様な映画を撮っていきたいです。昨夜、福岡の屋台でお酒を飲みながら、パクさんが屋台の店主という主人公役で映画を作ったらいいんじゃないかという話をしました。お酒のついでに、「やる?」と言ったら、やりたいという話になりました(会場笑)。梁木さん、助けてください。

司会:全面的にバックアップさせていただきますよ。

プロデューサー:今、契約書を書きました。

司会:本気ですよ!

監督:私も冗談ではありません!

 

Q:あの劇中に出てくる大学の先生、あの人は何者なんですか?

監督:ああいう方々は、どこの国でもたくさんおられるでしょう。実を言うと私も酔ったらあんな感じです。あの方は、エンディングソングを歌ったり絵を描いたりする素晴しい芸術家なんです。お酒飲みながら説得しました(笑)。

 

Q:とても愉しく見せていただきました。古墳のラインがものすごくエロティックでどぎまぎしました。それと、写真を撮るという行為が効果的に使ってあったと思いました。

A:私達クルーも撮影をしながら、古墳のラインを観ながら女性の美しさを一緒に語りました。どういう場所に行っても、結局、残るのは写真だけですけど、なかには消さないといけない写真もあると思います。もうひとつ、写真というのは、映画と切っても切れないものだからです。

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FOCUS ON CINEMA⑩【ロマンス狂想曲〈台湾〉Q&A】

(左から)シエ・チュンイー、チャン・シューハオ



 

監督:シエ・チュンイー
男優:チャン・シューハオ


 

今回の映画祭のオープニング上映会を華々しく飾ったラブ・コメディー。日曜の昼間とあって多くのファンが詰めかけました。Q&Aでは主人公役のチャン・シューハオさんが、マイクを会場の観客に直接走って届けるなど嬉しいハプニングも起きました。

 

Q:気の強い大陸女子と優柔不断な台湾男子のラブストーリーという構想はどこから得たのですか? 実際に映画で描かれているような男女はいるのでしょうか?

監督:これは私の実体験を基にしています。ニューヨークの大学に在学中に、大陸から留学していた女性に出会い、中国語を話す学生は僕と彼女だけだったのでよく話をしてましたね。この映画で主人公の二人が冗談を言い合うシーンが多いですが、それも実際に僕たちが喋っていたことです。その彼女、っていうのがこの映画のプロデューサーの一人である、グ・チャオなんですけどね(笑)。

 

Q:…ということはそれから、何か発展はあったということですか?

監督:特にそういうことはありませんでしたね(笑)。ただ良い友人にはなれましたよ。主人公の二人にはステレオタイプのキャラクターをあてはめました。一般の台湾の男性は大陸の女性にズケズケものを言う、気が強いというイメージを持っていて、大陸の女性は台湾の男性に気が弱い、曖昧、優柔不断というイメージを持っているんですね。そんな二人が実際出会ったらどうなるだろう、と想定しました。しかし、この映画では二人が人間同士心を通わせていくことによって、最終的にイメージや出身地はただの表面的なモノになっていくんです。その過程を楽しんでいただきたいし、人間は実際出会って話をしていく中でわかり合っていくということが伝わればいいなと思っています。

 

Q:主人公のアーチェンはオタクで3枚目という印象でしたが、実際のチャンさんはカッコいいですね! 相手役のホアン・ルーさんと共演された印象は?

男優:自分と全く違うタイプの役を演じるのが役者の醍醐味です。今回はオタクの友人を見ながら、アーチェンという人物をつくりあげていきました。ホアンさんは映画の中の役柄に良く似ていますが、そこまで怖くなかったですよ(笑)。大陸の女性らしくストレートな雰囲気で接してくれましたし、彼女自身が男っぽい感じだったので(笑)、リラックスして話せました。彼女や監督と、本当の大陸女子と台湾男子が出会ったらどうなるか、ということを話し合いながらつくっていくプロセスがすごく面白かったです!

 

初めて台湾映画を観たという中国出身の女子留学生から「女性の描き方がリアル!」という声も上がり、盛り上がったQ&A。日本のアニメや漫画が大好きというお二人の熱いトークも繰り広げられ、笑顔が溢れるひとときとなりました。

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FOCUS ON CINEMA⑨【シッダルタ〈インド/カナダ〉Q&A】

 

監督 リチー・メーヘター
(司会:梁木靖弘)

 

「両親はインド出身ですが、私はカナダで生まれ育ちました。インドはとても複雑な街。その混沌の割れ目の中に落ち込んでしまった人たちがこの物語です。ロッテルダム映画祭で梁木さんとお会いして、福岡にお招きいただいた時、即答しました。日本の皆さんがどういう反応をするのか、楽しみにしております」という監督の挨拶で始まったQ&A。和やかな雰囲気のなか、質問が次々と寄せられました。

 

Q(司会):最近のインド映画には、行方不明になった人を捜す物語が多くて、中でも特別印象に残った作品なのですが、エンディングはショッキングでした。物語はどういうふうに作られたのですか。

監督:この映画は、実話に基づいています。デリーで乗ったトゥクトゥクのドライバーに、「ドングリという場所を知らないか?」と聞かれたのです。彼の12歳の息子が行方不明になったと言いますが、息子の名前のスペリングも不明だったし、写真も持っていませんでした。グーグルで検索したら3秒で分かることを彼は1年以上もずっと人に聞いてまわっていたんです。私は、一生懸命ポジティブに息子を探しつつも毎日自分の仕事をしている、そんな彼の姿に心を動かされました。もしカナダで同じようなことが起きたら、仕事なんかできる状況じゃないでしょう。でも彼の場合、落ち込んで鬱病になるという選択肢はなかった、働かざるをえない状況で生きているんです。彼を通して、私たちだってどんな苦しみも乗り越え、生き延びることができると思いました。私は息子を捜す父親を中心に物語を作ったので、エンディングはああいうストーリーにならざるをえませんでした。

 

Q:映画のタイトルを聞いた時、ブッダを指すゴータマ・シッダールタの話かなと思いました。なぜこの題名にしたのでしょうか?

監督:この名前は、インドの子どもによくつける名前で、意図的につけました。サンスクリット語の意味のひとつに、ブッダになぞらえて「究極の真実を探求する」というのがあります。主人公が求めているのはそれだと思ったからです。

 

Q:監督はカナダで生活されているのでインドを客観的に描けたのかなと思いましたが、映画の内容としては普遍的なテーマを扱っておられますね。

監督:おっしゃる通り、ストーリーはとても普遍的なものです。経済状況とそれに立ち向かう精神性は、人類同じだからです。そして私は、インドとカナダの両方で生きていますし、ヒンドゥー語も話せます。インドでは人間のいちばんいい所と、いちばん悪い所の両方を見ることができるわけですが、どんなに劣悪な状況だろうと前向きに生きる優しい人たちに出会ったというのも私の体験です。すべては神のご意思だと考え、彼らは生きていました。恵まれた環境で育った人間よりインドの人たちの方が体も心も頑健であるということを目の当たりにした時、私は混乱しましたが、彼の心の中にある慈悲、慈しみの心に的を当てた作品を作りたいと思いました。インド人監督がこういう映画を作ったら、また別の視点になったかもしれませんね。

 

Q:ピンキーという妹の描き方も面白かったです。兄の不在をあまり哀しんでないんだけど、手紙も書くしスマホも扱えるし、ものすごく役に立つ。あのすごさというのは、次世代への期待ということでしょうか。

監督:ああいった家族の状況は、世界中どこでも一緒だと思います。我が家もそうで、うちの父親はビデオデッキの操作もできませんので私がしています。ここに登場する子ども達がどれだけたくましく、したたかに生きているか。最後の方で子どもたちが一瞬立ち止まった後、またクリケットの遊びを再開するシーンでもそこを表現しています。彼らはそういう選択しかなかったわけです。

 

Q:辛い話ですが、インドの活気が伝わるステキな作品だったです。今、日本にも歌や踊りのないインド映画のすぐれた作品が入ってきているんですけど、インド国内における反応や需要はいかがですか?

監督:実は、この映画はまだインドでは上映されていません。インド映画産業界の力が強すぎるからという経済的な理由です。ただ国際映画祭で上映した際には、高評価を得ています。ただし、世界中でひとつだけ、ヒンドゥスタンタイムズというインドの新聞社には「インド人を優しく描きすぎている」とケチをつけられましたが、むしろ誇りに思いました(笑)。

 

Q:最後、主人公にアドバイスする役割をそれまで一度も登場しない彼の父親にしたのは、どういう意図ですか。

監督:主人公は神を信じて生きているので、どういう状況だろうと神の意思という結末になってしまう。それでは話が終わってしまいます。大事なのは、主人公の周囲の人に「探すのをやめよう」と言わせないことだったんです。ただ主人公が唯一恐れていたのが彼の父親です。それは世界に共通すると思いますし、インドのような父権主義的な社会では尚更です。探索の旅をやめなければならない段階にある主人公に慈悲の心を持って事実を受け入れて欲しかった。だから父親を登場させたわけです。

 

Q:前作も見せていただいたんですけど、観ている人を引き込むストーリーがとても印象的です。最近では、監督はSF映画を撮られたとお聞きしたんですがどういう経緯で? また今後、インドのボリウッドで映画を撮って欲しいという話がきたら、どうされますか?

監督:ありがとうございます。今、いらっしゃる観客の中で私の前の作品を観た唯一の人だと思います(笑)。前作はYouTubeに出ていますので良かったら楽しんでください。確かにハリウッド映画の俳優らと一緒にサイエンスフィクション(SF)映画を作りました。実は大好きなジャンルなんです。この映画でもSF的なアプローチをしているんですよ。観る人はインド人じゃない方が多いと想定していたので、最初はよその惑星に行ったというような感覚を持ち、ある時点で観客達が自分の物語への入口を見つけ始める、そこがポイントだったんです。そういうことを観客に仕掛けるのがSFだと思っています。ボリウッド映画は今のところわかりません(笑)。もっと得意な監督がいるでしょうから。

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FOCUS ON CINEMA⑧【予兆の森で〈イラン〉Q&A】

監督:シャーラム・モクリ

 

全編134分ワンカット撮影という驚きの手法を使った「予兆の森で」。実話を基に一つの視点から様々な人物の時間の流れを描いた物語は、今回の映画祭では最も刺激的な作品と呼び声高く、会場ではイラン新進気鋭の監督・シャーラム・モクリ氏に質問が相次ぎました。

 

Q:映画の中で時間がループしていくというアイデアはどのように浮かんだんですか?

A:タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」のように時間がループする手法が流行した時期に私もこのような作品を作りたいと思い、エッシャーのだまし絵を鑑賞するなど研究しました。しかし、絵なら自分の中だけで時間や空間を崩すことができますが、映画になると時間の流れが必要になってきます。そこで考えたのが大きな時間の流れという円の中に、登場人物各々が抱える時間という小さな円を何個かつくるという手法です。

 

Q:映画製作において大変だったことは?本当に2時間半ノーカットなのですか?

A:役者を納得させることが一番大変でしたね。役者を集め、1カ月ロケ現場で毎日舞台のように稽古を行い、慣れた頃にクランクインしました。80本程撮った後、1人の役者がセリフを忘れた時は1日半休みをとった後、1から仕切り直しました。カットは一切していません。またカメラマンは2人いて、30分ごとにカメラパスを行い撮影しました。

 

Q:ノーカットにした理由は?

A:時間の流れ、というものを観客に強く感じてほしかったからです。通常、実話だと「何故、そんなことが起きたか?」を説明する手法が多いですが、私は形だけを説明することにしました。その演出により、実際にイランの西側で起きた事件をリアルに伝えるのではなく、映画としてシュールに表現することに成功したと思っています。

 

原題の「Fish&Cat」について、「この映画では若い世代を狙う古い世代、というイラン独特の世代観についても描いています。またイラン自体が諸国から常に狙われている状態で、いつも何か起きるんじゃないかという不安を抱えて人々は生きている。その事実も表現したかった」と熱を帯びた口調で語ってくれ、会場から拍手が沸き起こりました。

 

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FOCUS ON CINEMA⑦【サピ〈フィリピン〉Q&A】

(左より)メリル・ソリアーノ、エンジェル・メンドーサ



女優:メリル・ソリアーノ
プロジェクトコーディネーター:エンジェル・メンドーサ
(司会:高橋哲也)

 

今回は、主人公の一人を演じたメリルさんと、監督の代わりに“送り込まれた”という娘のエンジェルさんが揃って来福。フィリピンの超常現象の話に観客もくぎづけでした。

 

Q:フィリピンでは、劇中に出てくるような心霊現象の番組は多いのですか?

女優:確かに多いですね。フィリピンではすべてのネットワークテレビ局がこういう番組を作ります。本作品では、超常現象とともに、それを癒すヒーラーや祈祷師を受け入れるフィリピンの文化が描かれています。貧しい人たちほど目に見えない世界に傾倒しがちなのです。

 

Q:この映画は超常現象について語っているというよりも、テレビ局同士の競争の愚かしさを批判しているように感じました。

女優:テレビ局が競いあう愚かしさというのは、現実のものです。監督は、そこに皮肉な目を向けている。ここで描かれているのは、人間がいかに欲望に満ちた存在になりうるか、トップに立とうとあがく人間の愚かしい姿です。

プロジェクトコーディネーター:もうひとつ監督が描きたかったのは、テレビ局が視聴率獲得競争に走りすぎているということ。超常現象のような派手な番組を作れば作る程、視聴者もそちらを好んで観てしまうところがあるわけです。

 

Q:興味深い映画をありがとうございました。最初と最後に蛇が出てきたわけですが、意味するところを教えていただけますか。

女優:聖書にあらわれる蛇と同じ、邪悪なものを象徴しています。人より上に立ちたいと思う人達がだんだん自分の中に邪悪なものを育て、邪悪な存在になってしまう。憑依現象を取材しますが、実は自分達が憑依されてしまっているわけです。

 

Q:メリルさんは本当の放送局員みたいで、ドキュメンタリーのような印象を受けるほどリアリズムを感じました。工夫した点を教えてください。

女優:アリガトウゴザイマス! 実はこの映画は、私にとってとても面白い体験でした。メンドーサ監督との仕事も初めてでしたし、取材シーンはほぼアドリブ。憑依番組を取材する実際の撮影クルーがどういう動きをしているか、1週間ほど徹底してリサーチしました。自分たちでキャラクターをデザインし、現場を観察しながら演技をつくりあげた、それがこの映画です。

司会:なるほど! あのリアリティーはどこから生まれるんだろうと思っていました。

女優:登場人物のバックボーンも俳優自身で考えました。実名を使っていますので、その場その場で何が起きようとも各々の俳優が自分の役割を内面的にも外面的にもわかった上で動けたのではないかと思います。ただし自分自身でありながら他人を表現しないといけないわけですから、難しいチャレンジでした。だからこそ逆に3人の主人公の化学反応を引き出せたのではないでしょうか。

 

Q:私の家内はフィリピン人で、娘も今フィリピンの大学に通っています。街の風景にもなじみがあり、まるで自分の映画を観ているような気がしました。フィリピンはすごく住みやすい良い国。今日の映画では文化的な一面も出てきたのでとても喜んでいます。

女優:アリガトウゴザイマス!

 

Q:映画の撮影中、超常現象などが起きたというようなことはありましたか?

女優:フィリピンの人達は、超常現象を本当に信じて生きています。私達の国ではスーパーナチュラルなことなんです。私の兄弟は赤ちゃんの時に高熱を出して泣き続けたので、呪術師にみてもらったら「この男の子は木の精霊にとりつかれている」と。お湯をかけたり叩いたりして悪霊をとりはらってもらったんですけど、そういうことがフィリピン文化の中には根づいているのです。可笑しいかもしれませんが、本当にありますから(笑)。

司会:じゃあ、今回の映画はフィリピンでは実際にあることを描いたという意味でもドキュメンタリーですね(会場笑)。ありがとうございました。

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FOCUS ON CINEMA⑥【福福荘の福ちゃん〈日本〉Q&A】

監督:藤田容介




沖縄国際映画祭に続き、イタリアなど海外の映画祭で上映され、そしてモントリオールで行われた第18回ファンタジア国際映画祭で「最優秀主演女優賞」に輝いた本作品。上映中、会場は爆笑に次ぐ爆笑の渦。インパクトのあったシーンを振り返りながら、藤田監督への質問が次々に飛び出しました。

 

Q:まさにハマり役でしたが、主人公の男役を森三中の大島美幸さんに決めた理由を教えてください。

監督:実はシナリオを書く前に、主人公は大島美幸さんじゃなきゃダメだという想いがあって、大島さんを想定してプロットを書いたんです。もし出演を断られたら、この作品は撮らないつもりでいました。

大島さんはテレビで男装姿も見ていたし、過去にいじめにあった経験もあるんですね。この映画の主人公のように“ブサイクだけどいい顔”をしていたり、“豪快だけど実は内面に闇を抱えている”といった両方の面を持ち合わせている特殊なキャラクターだし、この人しかいない、と。

 

Q:男性役を女性が演じているという点で、海外での反応はいかがでしたか?

監督:海外では上映前に主役が実は女性だということを伝えていましたが、みんな驚いていました。たまたまドイツで伝え忘れたことがあって、その時は男性だと信じて疑わなかったようです。

 

Q:主役の男性でなく、ヒロインがカメラマンという男女逆転のような発想の設定が面白かったです。リアリティを感じる作品でした。

監督:そう言っていただけると嬉しいですね。撮る・撮られるという関係性の中で生まれる主人公の高揚感を伝えたかったんです。役者さんたちにも、コメディーだけど抑えた演技を望みました。希望額の半分という低予算でなんとかやりくりして作った作品ですが、譲れないシーンはがんばって撮りました! 肩の力を抜いて楽しんでいただけたら嬉しいです。

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FOCUS ON CINEMA④【郊遊<ピクニック>〈台湾/フランス〉Q&A】

(左より)ルー・イーチン、リー・カンション、ツァイ・ミンリャン



監督:ツァイ・ミンリャン
俳優:リー・カンション、ルー・イーチン

 

上映初日の一本目を飾る映画であり、引退表明をした監督最後の作品(予定)ということで、たくさんのファンが行列を成し、会場は満員。映画祭は華々しくスタートを切りました。監督と長年の名コンビであるリー・カンションさん、そして女優のルー・イーチンさんがサプライズで登場。ゲスト3名によるにぎやかなQ&Aになりました。

 

Q:今作品も監督独特の手法である長回しのカットが印象的で、観ている間に人生や生き方、男女の出会いなど、たくさんのことを考えさせられました。監督ご自身がこの作品を観る観客に何か求めることはありますか?

監督:私には何も言うことはありません。何をどう読み取り、感じるかはその人次第ですし、いろんな見方があっていいと思います。観終わって、何も感じなかった人もいるかもしれません。自分がどう感じるかを大事にしてください。

 

Q:監督の演技指導はいかがでしたか?

リー・カンション、ルー・イーチンともに:監督は極めてシンプルな指導しかされないので、私たちは自分なりの演技プランを実行するわけです。ですが、そのプランが尽きてきてもまだカメラが回り続けていることが多いんですね。どうしようかと思いつつも、がむしゃらに演技を続けていると、そのうちに自然と心が動いてくるんです。そのリアルさを追求されているんだと思います。

 

Q:リー・カンションさんへ。福岡の印象はいかがですか?

リー・カンションさん:初めての福岡ですが、とてもいいところですね。太宰府や筥崎宮、櫛田神社の観光を楽しみました。美味しかったのは、ラーメンと魚市場で食べた定食です。監督は人生の中で一番美味しいお寿司を食べたそうです(笑)。またぜひ来たいと思いますので、この作品が監督の最後の一作にならないことを願っています。

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FOCUS ON CINEMA③【タイムライン〈タイ〉ディレクター懇談】

監督:ノンスィー・ニミブット

“青春映画の服を着た”深い映画

小麦色の肌によく似合うデニムの短パン姿で颯爽と登場したノンスィー・ニミブット監督。開口一番、梁木ディレクターが日本のロケ地に佐賀を選んだ理由を尋ねると、「大阪や東京などの大都市ではなく、タイ人が見たことのない角度の日本を描きたかった」と笑顔をうかべます。古き良き伝統文化が好きな監督は、初めて唐津くんちのDVDを観た時に大感激。
「親切な佐賀県民の支援と美しい風景のおかげで思い通りのシーンがたくさん撮れた、運が良かったです」

また本作における重要なモチーフとして登場する海の絵は、監督自身が実際に南タイの小さな入江で見つけ、「アメージング!」と感激した風景を描いたもの。

「自分の実体験から得た深い感動をためておいて、各作品に吐き出すというのがタイ人らしい映画の作り方だと思う。実は本作には、さりげなく仏教の思想もしのばせているんですよ」
これには梁木ディレクターも「海の表面が光り輝いている映像に仏教的なものを感じました。日本人とも共通する観念ですね」と納得の様子でした。

大都市バンコクとタイ北部のチェンマイ。手書きでしたためた手紙とSNSなどでやりとりされるコミュニケーションの方法。本作はこれら二重の対比を通して、人と人との関わりや愛の形を鮮やかにあぶり出します。

「一見、青春映画の服を着ているけれど、監督が描いているのはもっと深い世界だと思う。その真意は、日本の観客にもきっと伝わるはずです」と熱く語る梁木ディレクターと固い握手を交わしたノンスィー・ニミブット監督でした。

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