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FOCUS ON CINEMA⑭【ジャングル・スクール〈インドネシア〉ディレクター懇談】

撮影:グンナール・ニムプノ

 

実在の女性をモデルにしたリリ・リザ監督の最新作

 

祖国インドネシアを舞台にした映画を撮り続けるリリ・リザ監督を、友人としても、映画人としても、心から尊敬していると語る撮影監督のグンナール・ニムプノさん。2003年製作の実験的な映画「ドゥルパギ」で初タッグを組んで以来の仲だそうです。「あの作品は、自分が手がけた仕事の中でベストな一本。最近ではリリ・リザもドラマの手法で脚本をかためてから撮り始めるようになりましたが、当時はフィクションとドキュメンタリー、現実と架空をミックスした世界を描き、フレームに化学反応を生み出していました。でもある意味、本作品も伝統的な映画製作と実験的なやり方をミックスした映画といえるでしょう」と大きな瞳を輝かせます。

ブテット・マヌルン氏という実在の女性をモデルにした本作品は、監督の真摯で綿密な取材によって実現したそうです。「ご本人もものすごく大好き!と言ってくれました。繊細な感性の持ち主で、いつもすぐに感動して涙を流す人なのですが、今回、この映画にも強く感情を揺さぶられたと語ってくれました」とグンナールさん。

これまでリリ・リザ監督の映画を観てきた梁木ディレクターが、「彼は教育の重要性を繰り返し説いている。近代化の光と陰、教育はその両方を背負っていると思う」と指摘すると、グンナールさんも「まさにその通りです。リリ・リザとはもう5年以上もの付き合いになりますが、彼は若い世代に自分の知識を惜しみなく伝えるワークショップにもとても熱心なんです。彼から学ぶことは、撮影以外でもとても多いですね」。

しかしながら、日本の教育は今、先の見えない危機的な状況にあるのも事実。「一般化するのではなく多様性を受け入れることが大切。リリ・リザの活動は、若い世代が地元に根づき、メディアを使ってクリエイトしていくモデルケースになるのではないか」とグンナールさん。「リリ・リザ監督には、ぜひ文化大臣になって映画や芸術文化を盛り上げていって欲しいなあ」という梁木ディレクターの発言に、「いえ、大臣なら、プロデューサーを務めたミラ・レスマナさんの方が適任でしょう(笑)」。「そりゃ、そうですね」。大笑いで幕を閉じた懇談のひとときでした。

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FOCUS ON CINEMA⑦【サピ〈フィリピン〉Q&A】

(左より)メリル・ソリアーノ、エンジェル・メンドーサ



女優:メリル・ソリアーノ
プロジェクトコーディネーター:エンジェル・メンドーサ
(司会:高橋哲也)

 

今回は、主人公の一人を演じたメリルさんと、監督の代わりに“送り込まれた”という娘のエンジェルさんが揃って来福。フィリピンの超常現象の話に観客もくぎづけでした。

 

Q:フィリピンでは、劇中に出てくるような心霊現象の番組は多いのですか?

女優:確かに多いですね。フィリピンではすべてのネットワークテレビ局がこういう番組を作ります。本作品では、超常現象とともに、それを癒すヒーラーや祈祷師を受け入れるフィリピンの文化が描かれています。貧しい人たちほど目に見えない世界に傾倒しがちなのです。

 

Q:この映画は超常現象について語っているというよりも、テレビ局同士の競争の愚かしさを批判しているように感じました。

女優:テレビ局が競いあう愚かしさというのは、現実のものです。監督は、そこに皮肉な目を向けている。ここで描かれているのは、人間がいかに欲望に満ちた存在になりうるか、トップに立とうとあがく人間の愚かしい姿です。

プロジェクトコーディネーター:もうひとつ監督が描きたかったのは、テレビ局が視聴率獲得競争に走りすぎているということ。超常現象のような派手な番組を作れば作る程、視聴者もそちらを好んで観てしまうところがあるわけです。

 

Q:興味深い映画をありがとうございました。最初と最後に蛇が出てきたわけですが、意味するところを教えていただけますか。

女優:聖書にあらわれる蛇と同じ、邪悪なものを象徴しています。人より上に立ちたいと思う人達がだんだん自分の中に邪悪なものを育て、邪悪な存在になってしまう。憑依現象を取材しますが、実は自分達が憑依されてしまっているわけです。

 

Q:メリルさんは本当の放送局員みたいで、ドキュメンタリーのような印象を受けるほどリアリズムを感じました。工夫した点を教えてください。

女優:アリガトウゴザイマス! 実はこの映画は、私にとってとても面白い体験でした。メンドーサ監督との仕事も初めてでしたし、取材シーンはほぼアドリブ。憑依番組を取材する実際の撮影クルーがどういう動きをしているか、1週間ほど徹底してリサーチしました。自分たちでキャラクターをデザインし、現場を観察しながら演技をつくりあげた、それがこの映画です。

司会:なるほど! あのリアリティーはどこから生まれるんだろうと思っていました。

女優:登場人物のバックボーンも俳優自身で考えました。実名を使っていますので、その場その場で何が起きようとも各々の俳優が自分の役割を内面的にも外面的にもわかった上で動けたのではないかと思います。ただし自分自身でありながら他人を表現しないといけないわけですから、難しいチャレンジでした。だからこそ逆に3人の主人公の化学反応を引き出せたのではないでしょうか。

 

Q:私の家内はフィリピン人で、娘も今フィリピンの大学に通っています。街の風景にもなじみがあり、まるで自分の映画を観ているような気がしました。フィリピンはすごく住みやすい良い国。今日の映画では文化的な一面も出てきたのでとても喜んでいます。

女優:アリガトウゴザイマス!

 

Q:映画の撮影中、超常現象などが起きたというようなことはありましたか?

女優:フィリピンの人達は、超常現象を本当に信じて生きています。私達の国ではスーパーナチュラルなことなんです。私の兄弟は赤ちゃんの時に高熱を出して泣き続けたので、呪術師にみてもらったら「この男の子は木の精霊にとりつかれている」と。お湯をかけたり叩いたりして悪霊をとりはらってもらったんですけど、そういうことがフィリピン文化の中には根づいているのです。可笑しいかもしれませんが、本当にありますから(笑)。

司会:じゃあ、今回の映画はフィリピンでは実際にあることを描いたという意味でもドキュメンタリーですね(会場笑)。ありがとうございました。

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FOCUS ON CINEMA③【タイムライン〈タイ〉ディレクター懇談】

監督:ノンスィー・ニミブット

“青春映画の服を着た”深い映画

小麦色の肌によく似合うデニムの短パン姿で颯爽と登場したノンスィー・ニミブット監督。開口一番、梁木ディレクターが日本のロケ地に佐賀を選んだ理由を尋ねると、「大阪や東京などの大都市ではなく、タイ人が見たことのない角度の日本を描きたかった」と笑顔をうかべます。古き良き伝統文化が好きな監督は、初めて唐津くんちのDVDを観た時に大感激。
「親切な佐賀県民の支援と美しい風景のおかげで思い通りのシーンがたくさん撮れた、運が良かったです」

また本作における重要なモチーフとして登場する海の絵は、監督自身が実際に南タイの小さな入江で見つけ、「アメージング!」と感激した風景を描いたもの。

「自分の実体験から得た深い感動をためておいて、各作品に吐き出すというのがタイ人らしい映画の作り方だと思う。実は本作には、さりげなく仏教の思想もしのばせているんですよ」
これには梁木ディレクターも「海の表面が光り輝いている映像に仏教的なものを感じました。日本人とも共通する観念ですね」と納得の様子でした。

大都市バンコクとタイ北部のチェンマイ。手書きでしたためた手紙とSNSなどでやりとりされるコミュニケーションの方法。本作はこれら二重の対比を通して、人と人との関わりや愛の形を鮮やかにあぶり出します。

「一見、青春映画の服を着ているけれど、監督が描いているのはもっと深い世界だと思う。その真意は、日本の観客にもきっと伝わるはずです」と熱く語る梁木ディレクターと固い握手を交わしたノンスィー・ニミブット監督でした。

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梁木ディレクターのここが見どころ!⑭ 【神の眼の下(もと)に〈韓国/カンボジア〉】

 
究極の状況の下での、
人間の苦悩と選択を描く人間ドラマ

80年代の韓国映画といえば、泥臭く、とことん過激なイ・ジャンホでした。その名を聞かなくなってから久しいのですが、なんと19年ぶりに長編を監督。これは見逃せません。東南アジアで宣教活動をする韓国人のカトリック信者9人。高揚した気分でイスラム過激派の人たちが支配する地域に足を踏み入れたと思ったら、一行は拉致されてしまう。命をとるか、宗教をとるか、究極の選択を迫られる宣教師たち、信者たち。さあ、どうする……?

信仰する人々の苦悩を、韓国リアリズム映画の巨匠イ・ジャンホ監督が繊細かつ大胆な心理描写で描きます。神のもとに人間は信じる心を持ち続けられるか。沸騰する人間ドラマです。ずいぶん昔に読んだ遠藤周作の小説「沈黙」を思い出しました。


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梁木ディレクターのここが見どころ!⑦ 【サピ〈フィリピン〉】

 
スーパーリアルな社会派ホラー!

フィリピンを代表する巨匠メンドーサの新作は、アジア映画ファンなら見ておきたいですね。この作品も、社会の本質をえぐって過激です。緊張感あふれるドキュメンタリータッチの映像が、スタートから観客をぐいぐいと惹きつけます。視聴率で一喜一憂するテレビ界にとって、悪魔憑きという超常現象は格好のネタ。カメラマンが悪魔憑きの映像を他局に横流しにするところから話は始まります。そして恐ろしい超常現象がカメラクルーひとりひとりの孤独な日常に割り込んでくることで、現実と非現実の境界がぼやけ、恐怖がフラッシュバックのように現れては消えてゆく。そして恐怖はテレビ局全体、社会全体に広がってゆきます。

「どん底」や「ばあさん」で社会の最底辺をリアルに切り取ったドキュメンタリー風手法は、今回、テレビ局が舞台となって、支配層の腐敗までも視野に入れています。ホラーだけで終わらず、社会を支配するメディアの現実もえぐりだしています。さすがメンドーサ。



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梁木ディレクターのここが見どころ!④ 【タイムライン〈タイ〉】

 
甘く切ないタイ式ラブストーリー

タイの恋愛映画には独特のタッチがあります。生と死が隔てても、ふたりの愛はなお一層燃え上がる……昨年の「ピーマック」もそうでしたが、今年も、タイ映画の王道です。北部チェンマイ。夫を亡くし、イチゴ農園を経営しながら一人息子テーンを育てた母。テーンは進路を決める際に母の希望する農業大学は選ばず、バンコクの大学に進学する。大学の新入生歓迎会でチャーミングなジューンと出会い、恋が芽生えるのですが、やがて三角関係に陥り、ジューンはテーンに告げず日本へ留学して……そして。最後にfacebookのタイムラインに綴られたメッセージに愛の深さを知ることになります。

タイで大ヒットの映画。とりあえず主人公テーン君が超カワイイ。タイで大ブレークしています。ジューンもチャーミング。このふたりを見るだけでも価値はあります。唐津くんちなど、佐賀県唐津市で撮影されたシーンにも注目を。




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梁木ディレクターのここが見どころ!② 【ジャングル・スクール〈インドネシア〉】

 
ジャングルの中で学ぶ喜びを知った少年たち

知識はほんとうに人のためになるのか、伝統を破壊するだけではないのかという、近代のジレンマを扱ったとても奥行きの深い作品です。インドネシア、スマトラ島のジャングルを管轄するNGOで働くブテットは、森の上流で子どもたちに読み書きを教えている。ある日、下流の部落の少年に助けられたブテットは、彼の集落の大人たちは、読み書きができないために、外部の人間から不当な扱いを受けていることを知る。だが、下流の森の大人たちは、子どもたちが文字を覚えることに恐怖を感じている。文字を覚えた子どもたちは森を出ていく可能性があるからだ。しかし、純粋に学びを欲する子どもたちの姿は、ブテットを勇気づけ、ジャングル・スクールの創立へと彼女を突き動かしてゆく。

本作は実話に基づいたストーリーで、リリ・リザらしい社会を変革しようという意志と、人間への優しいまなざしがストレートに伝わってきます。



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福岡ワンミニット・コンペティション2013

若きクリエーターたちのさらなる進歩を鼓舞する3時間

 

9月22日、福岡フィルムコミッションが主催する「福岡ワンミニット・コンペティション2013」の公開最終審査会が行われました。

これは応募があった日本の若手クリエーターによる短い映像作品を、映画祭の本編上映前に流し、その中から最終審査に残った作品を公開で審査するというもの。審査員には福岡出身の映画監督・石井岳龍氏やアクション女優の大島由加里(シンシア・ラスター)さん、ゲスト審査員にタイのバンジョン・ピサンタナクーン監督を迎えてのコンペティションだけに、会場は多くの映画ファンでいっぱいに。

審査委員長の梁木ディレクターによる進行のもと、プログラムがスタート。始めに、ゲストをスピーカーに「地域を生かした映画づくり」をテーマに審査員によるトークセッションが行われました。

バンジョン・ピサンタナクーン監督は、大学卒業後、CM製作会社に入り助監督を経て、デジタルで短編映画を作った後、デビュー作となった長編ホラー映画「心霊写真」でタイの年間興行収入第一位を記録。海外からも高い評価を受けています。現在もCMを作りながら映画を撮っている監督。「実はハリウッドからの誘いもあるんですが、自分が撮りたい脚本と作品でないと1本で終わってしまいますから、そこを大事にしたいと思っています。
次は全編中国語の中国映画(ホラーコメディー)を予定しているんですよ。私にとってはどこで作品を撮ろうが、自分が語りたいもの、自分らしさが伝わればいいと思っています。いろんな人に聞かれますが、タイらしさはオリジナリティーのある作品を撮れば、自然と映画の中に出てくるものだと思います」

大島由加里さんは、女優の立場から想いを述べられました。
「私はアジアで女優業をしていますから、やはりアジアと福岡を繋ぐことができたらいいなと思っています。福岡の良さがわかる福岡発の面白い監督がいて、それをコミッションがサポートして、アジア諸国とうまくやっていくことができたら嬉しいですね」

福岡を代表する映画監督・石井岳龍氏は、
「私は年を重ねて経験を積んできましたし、山笠をはじめとする博多の風景はルーツであり消えないものだと思っています。そこにしかないものがあると思う反面、そこにいると見えないことがある場合もあります。例えば旅をすると、別の国の風景と博多の下町の路地が重なって映ることがある。それって、私の記憶や創作の原点ですから変えようがないんですよね。離れて遠くから見てみるということが発見に繋がるかもしれません」と考えを述べ、映画界で減少傾向にある純粋なオリジナル映画を作ることの意義や重要性を伝えられました。

「ご当地映画ではない、ローカルティを失わない映画づくりには、“ルーツと創造力の翼”の両方が大事ですね」と梁木ディレクターのまとめがあった後は、「バリバリショートssフィルム海外作品上映」と「アジアフォーカス・福岡国際映画祭先付タイトル上映」タイム。これまでアジアフォーカスに招待してきたアジアの監督たちが推薦する若手クリエーターの作品を5作品紹介した後、オープニングに上映された歴代のタイトルを上映。玄界灘と飾り山笠が登場する石井監督によるフィルム撮りの初代作品も流されました。


休憩を挿んだ後は、いよいよコンペティションの時間。始めに、「福岡インディペンデント映画祭2013」でアニメ賞を受賞した作品「サイクロイド」(黒木智輝作/3分25秒)が特別上映され、続いて本題となるコンペティション作品にノミネートされた13作品が紹介されました。

街や観光地、人、夜、思い出etc…「福岡」をテーマに、さまざまな視点とアイディアで自由に撮られた1分前後の作品群。「私は今回、辛口批評担当です」と話す石井監督が会場を沸かせる場面もありつつ、残念ながら最優秀賞に該当する作品はなく、優秀賞に3作品、大島由加里さんから特別賞が1作品、選ばれました。

優秀賞には、博多うどんをテーマに凝った映像を披露した「発祥の地 福岡!」(玉井雅利/90秒)、赤ちゃんのいる家族の何気ない日常の風景を題材とした「福岡3人暮し」(黒川荘輔/73秒)、博多の伝統をユーモラスに伝えた「博多手一本に、やり直しはない」(古野翼/90秒)が受賞。会場から歓声と拍手がわき起こりました。

バンジョン・ピサンタナクーン監督は「『発祥の地 福岡!』が面白かったです。私はストレートなものでなく、意外性のある新しい視点で自分らしさが伝わる映像が好みです。うどんという題材とマーシャルアーツを駆使した映像を見て、福岡をもっと知りたくなりました」

石井監督は13作品を全部を批評。受賞作については「『発祥の地 福岡!』は青ビニールでブルーバックをよく撮ったと思います。音に迫力がもっとほしかったのと、面白かったけれど、博多うどんならきつねじゃなくてゴボウ天か丸天!(笑)。『福岡3人暮し』はヒューマンな視点がよかったと思います。ラストショットが弱くてもったいなかった。もうひと捻りほしかったです。『博多手一本に、やり直しはない』は、アイディアが面白いですね。ラストショットのピンがあまかったので、もっと丁寧に撮ってください」

また特別賞には、博多の夜のネオン街を撮影した「fukuoka night」(高橋美沙子/90秒)が選ばれ、「夜といえば大島ですから(笑)」と、大島由加里さんから楯が授与されました。

総評として「全体的に、何を伝えたいのかが弱くてわからないものも多かったですね。もっとていねいに、愛情を持って表現してほしいと感じました。とくにラストシーンはキメなので、ここで勝負する気持ちで…自覚が足りない作品が多かったです」と意見を述べる石井監督の言葉に、梁木ディレクターも納得。「流通している福岡でない福岡をもっと見てみたかったですね」と、さらなる進歩を願い、若きクリエーターたちを鼓舞するかたちで3時間にわたるコンペティションは締めくくられました。

 

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【FOCUS ON CINEMA】Pee Mak(タイ)Q&A

監督:パンジョン・ピサンタナクーン
キャスト:ポンサトーン・ジョンウィラート


 

タイで歴代最高興行収入を記録したメガヒット・ホラー・コメディ。笑いが巻き起こった上映後の興奮さめやらぬ会場では、次々と質問が飛び出し、観客の満足度が伺えました。

梁木:タイでは誰でも知っている有名な怪談「メーナーク・プラカノーン」2013年度版、楽しませていただきました。日本では、手がのびる幽霊はあまり聞いたことがないのですが。
監督:手がのびる幽霊は、タイではナークという幽霊だけなんです。
梁木:それでは、質問をお願いします。

 

Q:ホラーであり、コメディであり、素晴らしいラブロマンスでありで感動しております。GTHさんの映画はどれも好きでよく観ているのですが、この作品も友人たちにもぜひ観るようにすすめたいと思います。日本での公開予定はありますか?

監督:ありがとうございます。必ず観られます。日本の会社が買ってくれました。(会場から拍手)

 

Q:原題の「Pee Mak」の意味を教えてください。

監督:Peeは、年上の人、お兄さんという意味です。

Q:素晴らしい映画をありがとうございました。私は監督の映画のファンで今年全作を観まして、今日も福岡で上映されるというので大阪から駆けつけました。監督は芸歴の浅い女優さんをヒロインに起用されることが多いように感じますが、そのあたりについてお聞かせください。

監督:今回のダウィカー・ホーンさんもテレビドラマにはよく出演していたのですが、この映画に出る前はそれほど有名ではなかったんですね。ただ経験が浅いということは全然関係ありません。脚本にあう人を選びました。とても演技が上手でしたので助かりました。

 

Q:とても素晴らしい映画、ありがとうございました。今日は東京からやって参りました。日本でも幽霊を扱った作品は落語などでも多いんですけど、今回の映画を観てホラーやコメディ、ラブストーリ−の要素をかねた作品として、ものすごいバランス感覚だなあと思いました。リバイバルの映画ということで、前の作品のテイストと同じ部分、違う部分はどういう点ですか?

監督:前作とはまったく違います。今回の特徴は、コメディの要素がすごく入っているという点。特に違うのはエンディングです。それとマークの友達について言及したのも今回が初めてです。いつもナークとマークのふたりだけのストーリーでしたが私の新しい解釈です。

 

Q:コップンカー!日本に来てくれてありがとうございます(タイ語で)。兵士が闘うシーンで歌を歌っていたのですが、あれはもともとタイで歌われていた歌なのでしょうか、それとも映画のために作られたのでしょうか。

監督:あの歌自体は、映画のために作ったオリジナルです。でも実際にタイの兵士たちは疲れた心身を元気づけるため、リラックスするために、歌を歌う習慣があります。

 

Q:本当に楽しい映画をありがとうございました。なんか純粋なふたりの愛情に感動しました。彼らのお友達が初めて出てきたわけですが、各々のキャラクターがとても面白くて髪型も皆さん特徴的でしたが、エピソードがあれば教えてください。

ポンサトーン・ジョンウィラート:じゃあ、僕からこの髪型から説明しましょうか(笑)。僕のは鶏みたいな髪型なんですけど、一応何百年も昔にタイ人がしていた髪型を現代的にアレンジして格好よくしました。頭の上で束ねるという髪型は、タイでは実際に子どもの時はしているのですが大人になったらしない髪型なんです。日本の方にはわかりにくいかと思うのですが、この映画は時代劇にも関わらず現代の言葉を喋っていますし、マークの髪型は今お洒落なタイの若者に流行っている髪型にしています。このTシャツの髪型なんですけど(監督が着ていたTシャツを指して)。

 

Q:今日お見えのポンサトーン・ジョンウィラートさんは、映画の中より若くてハンサムですね。

ポンサトーン・ジョンウィラート:ははは、今日は映画祭というのでちょっと格好つけているだけです(笑)。会社のGTHから、自分のことは自分でやれと言われていますので。冗談です(笑)。

 

Q:映画の中に出てくる人は、なぜ歯を黒くしていたのですか。日本では婚姻した女性が歯を黒くするお歯黒という習慣がありましたが。

監督:何百年も昔のタイ人は、ビンロウという果物の実を噛んで歯を黒くしていて、黒ければ黒いほど力があったといいます。今回、たくさん噛んで真っ黒にした方がコメディっぽくなるというのでやりました。

 

Q:とても感動しました。今日、映画を観に来たら、映画のタイトルが「死者の国からこんにちは」から「Pee Mak」に変わっていたんですけれど、あのタイトルは誰が決めるのですか?友達にも紹介したいのですが、日本で公開される時のタイトルは何になるのでしょうか。

監督:どんなタイトルになるかはまだわからないので、また追っかけてみてください。ちなみにシンガポールやフィリピンなど10カ国で上映された時は「Pee Mak」というタイトルでした。
梁木:実は本映画祭で「Pee Mak」というタイトルがわかりにくいのではないかと勝手に変えてしまったんですね。お叱りを受けて元に戻しました(笑)。

 

Q:実はホラーは嫌いでほとんど観ないんですが、GTHさんの映画なので興味津々で観ました。怖いのと笑いと、最後は涙が出る感動作だったと思います。この原作は何回もリメイクされているということですが、もともと小説か何かでヒットしたものなのでしょうか。またもともとの時代設定はいつ頃ですか?

監督:ナークの話は、小説ではなく口伝えだと聞いています。だから何が正しいか正しくないかは実際にはっきりしないんです。時代的にはローマ四世(1851〜1868年)の終わりと言われていますが正確にはわかりません。時代考証に関係なく電気がないのにつけたり、ファッショナブルにしたりと映画では自由にやっています。テレビドラマバージョンも何十バージョンもあります。今のタイの若い人は、詳しい内容は知らないけれど名前は聞いたことがあるという人が多いと思います。

 

Q:寺に祀るのは、「Pee Mak」の伝説からそうするようになったのですか。

監督:その通りです。伝説に由来したお寺があります。映画を撮る前は、映画を撮っていいですかという許可をいただきにお参りに行きました。たとえお参りしたとしても呪われたり、奇妙なことが起こることもあるんです。皆怖がっていますが、少なくとも撮影中に一度は停電があるものなのです。でも幸い、僕らの撮影では一度もありませんでした。
梁木:日本の四谷怪談でもそういう話があるんです。最後にこれを日本で公開するとなると、タイの監督名など日本語訳するのが難しいと思いますが。
ポンサトーン・ジョンウィラート:監督はタイで演技指導に定評のある方なんですが、なるべくインターナショナルにわかっていただけるように変えていけたらと思います。
梁木:日本版だったら、クロサワ(黒澤)かニナガワ(蜷川)がわかりやすいかもしれないですね。素晴らしい映画をありがとうございました。

 

「日本でもきっとヒットすると思います」という梁木ディレクターの言葉と共に大きな拍手で幕を閉じたQ&A。大阪や東京からもファンが駆けつける人気ぶりを目の当たりにし、ゲストの表情にも大きな喜びがあふれていました。

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【FOCUS ON CINEMA】聖なる踊子(インドネシア/フランス)Q&A

主演女優/プリシア・ナスティオン

 

インドネシア人作家アフマッド・トハリの小説からインスピレーションを受けて作られた本作。「9.30事件」や村に伝わる「踊り子」という独特の世界を扱った希少な映画について会場から多くの質問が飛び出しました。

 

 

Q:歴史上のテーマを扱ったとてもいい映画だと思います。1965年の9月30日事件のことを取り上げた映画というのはインドネシアでも初めてだと思うのですが、役を演じる上で当時の状況をどのように調べ、役作りに望んだのですか。

A:皆さま、こんにちは。1965年を舞台にしたインドネシアでは9月30日というタブーな事件がありました。確かにそれを扱った映画が上映されたことはありません。今回なぜ上映できたかというと、共産党について細かく描かれていませんし、共産党の旗をまったく撮影していませんので可能でした。事件については学生の頃の教科書で読んだことがありますが、共産党なのか軍人なのか、どちらが正しいのかわかりません。その時は軍人の方が正しいと教科書にも書いてあります。しかし、この映画では軍人が悪者みたいな感じがありまして、映画はちょっと違う感覚で作られています。

 

Q:素晴しい映画、ありがとうございました。踊り子さんが持っていた刀の形をしたものが女性に渡り、踊り子になれたような気がしたのですが、その経緯と何を意味しているのかを教えてください?

A:クリス(刀)は、もともとジャワ島の人達が持つお守りみたいなものです。確かに男のものなのですけど、ここで使われている村のシンボルであるクリスは、亡くなられた昔の踊り子の持ち物なのです。落とされた刀を男性のラススが拾って彼女に渡すことでつながりができる。その刀には昔の踊り子たちの霊が入っているから、彼女でないといけなかったわけです。長い方のクリスは男性用で、短いクリスは女性用というのがジャワ島の言い伝え。ベルトに挟むことで楯のように身を守ってくれます。

 

 

Q:見応えのある映画ありがとうございました。踊りはもともとなさっていたのですか?それとも映画のために練習なさったのですか?

A:ありがとうございます。私も村の出身ではないですし、必死に練習しました。この村の子は、たしかにこの踊りはできますが、すべてのインドネシアの子どもが踊れるかというとそうではありません。皆さまは私の踊りは100%のできと思われたかもしれませんが、自分の中では30%、ましてやその村の子ども達が見ていたら0%かもしれないです。本当の踊りは、魂がのりうつったいような心からの動きだと思います。役作りをする中で、顔も目も指先まで、まるで天女みたいな踊りをしないといけないのですが、難しかったです。踊りの種類も多いです。インドネシアは島国でひとつの島に約150種類の踊りがあって、それが17,000島……計算してみてください(笑)。ご存知かもしれませんが、バリ島でも地域によって踊りは違っていて100種類あります。

 

Q:踊り子は、村の女性からも尊敬されているのですか?

A:踊り子の存在は、村にとって非常に喜ばしいことなのです。イキイキと明るい村になり、幸せが訪れるとされています。踊り子が1年後にやってくるのか10年後なのかは誰にもわかりません。踊り子がいる村では、自分達の村には立派な踊り子がいるということを大変誇りに思うのです。私も役作りのために98歳の踊り子に会いましたが、実はその人は男性でした。なぜかというとその男性のおじいさんが夢の中で「あなたの孫は踊り子にならないといけない」とのお告げがあったそうです。その方は男性だからと拒否したそうですが、言い伝えだからと30代から始めたそうです。この村は無宗教で、今の私たちの宗教観からすると違和感をおぼえることもありますが、村では幸せのために大切だったのです。

 

Q:今、実際に田舎にはああいう踊り子はいるのですか?

A:村にはその踊り子はいました。といっても一夜を過ごすというようなことはなく、ただ結婚式に呼ばれて踊るというバンド演奏みたいな役割です。私も村を訪ねた時に一緒に踊りましたが、1965年の伝統的な踊りとは別物でした。そういう一夜を共にする踊り子を「ロンゲ」というのですが、イコール共産党のバックという感じもあります。今の踊り子は「レンゲル」と呼ばれ伝統文化を伝承するための踊りをしています。

 

 

妖艶な踊りで観客を魅了した主演女優のプリシア・ナスティオン氏を一目見ようと集まった大勢の観客の熱気にあふれたQ&Aでした。

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