ニュース・トピックス

【FOCUS ON CINEMA】 ティモール島アタンブア39℃(インドネシア)Q&A

監督:リリ・リザ
プロデューサー:ミラ・レスマナ


 

アジア・フォーカスではおなじみ、インドネシアを代表する名匠、リリ・リザ監督。2009年の「虹の兵士たち」をはじめ、今まで4作品が招待されています。今回は前作とは異なる方向性で製作したとのこと。映画の背景について活発なQ&Aが交わされました。

 

Q:監督の作品はインドネシアの歴史に関わったものが多いですが、今回描いているアタンブアという街はどのような場所なのでしょうか?

A:2002年に独立した東ティモールとインドネシアの国境の街です。独立後、インドネシアに弾圧され、東ティモールから25万人とも言われる難民がこの街にやって来たと言われています。東ティモールは元々、ポルトガルとオランダの植民地であったため、その影響が濃く、映画でもご覧になれますように、99%がカトリックの信者です。私はアタンブアという街を調査していくにあたり、さまざまな政治の問題、そして正義の問題に突き当たりました。この映画の主人公・ロナルドは息子・ジョアオを育てるために、母と娘を東ティモールに残したまま、この街にやってきており、それゆえに起こるさまざまな心情を描きたいと思いました。

 

Q:映画内に出てくる美しい織物が印象的です。監督の首にかかっているものもインドネシアの織物ですよね?どういった意味があるんですか?

A:これはとても伝統的なインドネシアの織物です。布はあるシンボルとされていて、亡くなった方のものは何年間か残さなくてはいけない習慣があります。しかし、決してはずして処分するのを忘れてはいけないものなんです。

 

Q:これまで撮られた映画とはずいぶん違った印象を受けました。俳優はどのように選んだんですか?

A:この映画は、青年ジョアオというよりも、その父・ロナルドが主の物語です。ロナルドはさまざまな政治的な問題に巻き込まれ、旅を続けてきました。私がアタンブアに行って、ロナルド役の男性を紹介してもらいました。ロナルド役の男性が現地の人々に声をかけてくれて、俳優が決まったという感じです。みなさん、実際アタンプアに住む素人の俳優です。彼らは普段通り、東ティモールの言葉を使っています。

 

Q:今までと違った方向性でこの映画を撮られた理由を教えてください。前作「夢追いかけて」では同じく青年が主人公でしたが、明るい未来が開けて行く前向きな映画ですよね。今回は、過去に戻るというか鎮魂歌のようにも感じました。

A:映画をつくるにあたり、前作との違いを追求することは必然的なことです。前作をつくり終え、今作の企画を練っている時に、いろいろ考えました。「映画ってどんなものか?」とまで考えました。現在、インドネシアでは同じジャンルの映画の繰り返しです。例えばラブストーリーとかですね。あと、デジタル・テクノロジーがどんどん発展しています。私はそれに反したものを作りたかったんです。

 

今映画祭のシンポジウムでパネリストとしても活躍したリリ・リザ監督とミラ・レスマナプロデューサーのお二人。ファンの質問に丁寧に優しく答えていた姿が印象的でした。

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福岡アジア文化賞「市民フォーラム」“アピチャッポン・マジック”とは何か~自作を語る

アジアの地域の優れた文化の振興と相互理解、および平和に貢献するため、1990年に福岡市、学界、民間が一体となって創設した「福岡アジア文化賞」。第24回となる今回、「芸術・文化賞」をタイのインディペンデント系映画監督の第一人者、アピチャッポン・ウィーラセタクン氏が受賞されました。それに伴い9月15日、イムズホールにおいてアピチャッポン監督の作品を、日本初公開の作品を含め一挙3本上映。また梁木ディレクターとの対談が行われました。

アピチャッポン監督と梁木ディレクターは3年前、インドの映画祭で共に審査員を務めた旧知の仲。また、『アジア映画の森』という本にもお二人の審査員日記が載っています。アピチャッポン監督は2010年製作の「ブンミおじさんの森」でカンヌ国際映画賞の最高賞であるパルム・ドールを受賞。民話や伝説に基づく物語の中に、個人的な記憶や前世のエピソード、時事問題に対する言及などを挿入する斬新な映像話法を用いた作品群は、国際的に高く評価されています。

「アピチャッポン監督の出現は映画を変えたと思うんですよ。まさに“アピチャッポン・マジック”と言っていいと思います。100年後に映画を変えた伝説の人と言われる可能性が高いのでは?」との梁木ディレクターに対し、「とても光栄に思いますが、私にとって映画自体がマジックですね。映画の歴史はまだまだ浅く、3Dなど高性能な映像が活躍していますが、まだまだ新技術は生まれてくると思います。私自身、長編映画が少ないので、新しい映像技術を駆使しながら、クリエイターとして映像の裏にある感情の部分も追求していきたいですね。今後の映画製作にワクワクしています!」と監督。

いわゆる商業映画に観られるストーリー重視の展開がない監督の作品群。しかし「映画とはなんぞや」という根源的なテーマを切り拓き、また国際的なレベルまで引き上げた自身の映画について、「映画製作は自分の成長であり、旅のようなもの」と語る監督。「写真、芝居、音楽…すべての要素が詰まった映画を総合芸術と言う人が多いですが、私にとって映画は映画です。映画というイメージが固まっている人はまずストーリーを追い、答えを求めるでしょう。そういったいわゆる“映画”の監督はどうも、観客を上から見ているような気がします。私の映画へのアプローチはパーソナルなもので、自分が見聞きするものを、観客と共有したいんですね。一緒に歩み、一緒に探し、一緒に旅をするような映画づくりに努めています。それが自分の成長につながるからです」。

時として、難解と評される点においては「考えるんではなく、感じることで理解してもらえる」とキッパリ。「初めて私の映画を観た人は腑に落ちない、スッと入ってこないという方が多いですが、それは人間関係と同じです。2時間で人を理解することはできないでしょう。私にとって、映画作りは友達作りに似ています。よく、観客から『数年前はわからなかったけど、今は理解できるというか、あなたの映画が心にスッと入ってくる』と言われるんですよ」という説明に会場の皆さんは大きくうなずいていました。

監督の作品に出てくる俳優は常に同じ人が多く、撮影クルーも同じが基本。先に述べたように「私も俳優もクルーも、映画製作を通じて成長していき、旅を続けていきたいんです。観客の皆さんもその成長に気付いていただければ」と改めて語りました。

今回の受賞において、福岡女学院大学でワークショップも行ったアピチャッポン監督。まず生徒を森に連れて行き、感じたことをノートに書きためてもらい、そして都会に連れて行き、同じく感じたことを書きためて、のちに全員で発表し、感じたことから物語をつくっていく…という、まさに今回上映された、2000年製作の「真昼の不思議な物体」を思い起こさせるワークショップ。のちに生徒の想像はツイッタ―上でも広がり、壮大な物語がいくつも出来上がっていったそうです。「誰でも物語をつくる能力があります。私が俳優を選ぶ規準は“ウソつき”かどうか(笑)。子どもを見ているとわかりますよね。小さなウソをつくことが想像力となり、それが自分の表現力となる。年齢、経験、宗教…さまざまな背景によって、人は同じものを違う受け取り方をして、別の想像をするはず。そこから生まれる物語にとても興味があります」。何が現実で何が真実かは人によって違うし、リアリティと真実の定義は難しいと語る監督。だからこそ、自分の目と耳を信じて真実とフィクションのボーダーラインを描きたいと言います。

「映画製作は学びの場。年上の俳優たちから教えてもらうこともたくさんあり、私自身も年を経て共に成長していきたいです。その成長が映画に表れれば……」と柔和な物腰で謙虚に、そして丁寧に語る監督に魅入られたひととき。最後に「ブンミおじさんの森」を紹介する際、「これもパーソナルな映画です。父を亡くした事実から物語をふくらませ、昔のタイ映画の記憶を融合させていきました。どうぞ頭からロジックを外して、リラックスして観てください。芸術的な映画だと構えないでくださいね(笑)。実際、タイではコメディーとして大ウケでしたから」とメッセージ。その後の上映では、会場のあちこちから笑いが起き、観客は大いにアピチャッポン・ワールドを楽しんでいました。対談で監督がよく語った「成長」という言葉に、今後の映画界において大きな希望を見出したような、貴重な市民フォーラムとなりました。

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【FOCUS ON CINEMA】果てしなき鎖(フィリピン)Q&A

監督:ローレンス・ファハルド

ラインプロデューサー:クリスマ・ファハルド

 

 

昨年の衝撃作「アモク」に引き続き、警察組織の腐敗社会を描いた問題作。リアリティを追求したテーマや息もつかせぬカメラワークなどでファンの多いファハルド監督作に、たくさんの質問が飛び出しました。

 

Q:昨年のアジアフォーカスでも「アモク」が一番お気に入りでした。今年も監督らしい風刺とパンチの効いた作品でとても満足しています。

監督:ありがとうございます。映画製作を考えていた時期、ちょうどフィリピンで最高裁判事が汚職で弾劾裁判を受けるということが実際に起きていた時でした。ですから、映画の中でもビデオクリップですけれどもテレビの映像としてそれを入れて、本当のことを取り込んでいます。この映画のテーマそのものが腐敗や汚職、正義とは何かということを考えて作った作品です。

この映画の中で描いている犯罪者は、いわゆる小ものの犯罪者。けれど、私たちが本当に見せたかったのはもっともっと大きな絵、つまり実際の構造的な犯罪、現実の怖さをスクリーンで見せたいと思いました。犯罪者を追いかけている警察官そのものが犯罪者だったというような現実があるからです。

 

Q:カメラワークも含めて素晴らしい作品でした。非常にリアルな映画でしたが、あの留置場と、中の囚人たちは本物なのでしょうか?

監督:警察署に関しては難易度が高かったですが、小さい警察署を借りることができました。囚人については半分が本物です。二つに分かれている左側の檻が本物の囚人で、右側の檻には私の撮影クルーの人たちに分けて入ってもらたんです。「みんな、この映画に積極的に参加したいか。そう思うやつはみんな右の檻の中に入れ」と言って、スタッフを入らせて撮ったのがあの場面です(笑)。

クリスマ・ファハルド:ロケは町の中など人ごみの多いところでした。警察署もそういう地域にあるからこそ、人の出入りの多い忙しい警察署だったんですね。中の撮影許可もちゃんと取りました。ただし、ストーリーのコンセプトは言わなかったんですね。言っちゃうと絶対に許可がおりないと思いましたので。人がいっぱい集まるところでは群衆もコントロールできないし、現実問題、小型のポータブルカメラで撮っていくという手法を取りました

 

次回作について尋ねられると、1990年代に起きたスキャンダル、フィリピン人なら誰もが知っているペプシコーラの事件をベースにしたフィクションを描きたいと監督。来年の完成を目指しているそうで、フィリピンの現実を通して、人間の狂気や不条理などを鋭く問い続ける作品として、3年連続の参加が期待されます。

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【FOCUS ON CINEMA】スター誕生(シンガポール)Q&A

プロデューサー:ポーリン・ユィ

「はじめまして」と日本語で挨拶してくれたのは、プロデューサーのポーリン・ユィ氏。監督、脚本、主演を務めたミシェル・チョン氏に代わって、女の子の夢のかたちを描いたハートウォーミングなこの作品について語ってくれました。

 

Q:この作品はミシェルさんの自伝的な脚本なのでしょうか?

A:完全に自伝というわけではないですけれども、監督が10年前に書いた脚本です。その時はすでに芸能界入りしていたわけですが、映画にあるようにあまり役をもらえていなかったんですね。モデル事務所に入ってエキストラをしてというように、自分の今までの経歴を追って時間のある時に書いた脚本です。俳優のほかに司会業をしたり、テレビ界で活躍しながら書いたものを10年後に私に見せてくれたので、脚本を書いて撮ってみたらどうかと励ましました。それで、この10年間で蓄えたお金を資金として使って作った彼女の長編第一作目となったわけです。

 

Q:シンガポールでは名前を変えることで地方から来たという出身地を隠しているのでしょうか? 切実なフィクションという感じを受けたのですが。

A:名前を2つ持っているというのは、そういうわけではないんです。シンガポールの教育システムからいうと、第一言語が英語なんですね。そして、自分たちの民族の母語もあるわけなんです。シンガポールは非常に人種が複雑で、中華系、インド系、マレーシア、フィリピン、中国大陸、台湾と多国籍な人種が集まっている国際的な土地柄なんですね。互いに名前が読めなかったりする場面に日常生活でよく出くわしたりするので、理解できるように英語名を付けることになっています。

 

Q:シンガポールでの上映の反応はどうでしたか?

A:反応も興行的にもとてもよかったです。ミシェル・チョン自身が有名な女優でありコメディアンとしても知られていますので、ファンが多いんですね。さらに相手役のエイリアン・ホァンも台湾のアイドルですから、ファンがたくさん来てくれて、公開1週間で100万シンガポールドルの収入がありました。ですから、この映画はとても成功した作品だと言えます。ミシェルは資金面のことを考えながら、現場で演技もして、他の人の演技指導もするということでプレッシャーが大きかったと思います。俳優たちはみんな彼女の芸能界の友だちで友情出演してくれたので、申し訳ないことになったらいけないという想いで、一生懸命にやりました。

 

次回作「ターターター」は、「彼、彼女、彼」の3人が旅する物語を描いた若者向けの青春ドラマ。監督は現在、制作の真っ只中ということで来福できなかったとのこと。「二作目も期待しています。今度は監督にもぜひ来ていただきたいです」と締めくくる梁木ディレクターの言葉に、会場からも拍手が沸きました。

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【FOCUS ON CINEMA】No.10ブルース/ さらばサイゴン(日本・ベトナム)Q&A

監督:長田紀生

主演女優:タン・ラン

俳優:磯村健治

 

 

ベトナム人と日本人のハーフを演じた磯村健治氏、主演女優のタン・ラン氏、監督の長田紀生氏の3人が揃って登場。38年ぶりに息を吹き返した映画の奇跡的な上映と再会の喜びを分かち合う姿に、多くの観客から温かな拍手が送られました。

 

 

Q.:たいへん素晴らしいロードムービーでした。場面場面で、町の風景がスチールで出てきましたが、あれは演出だったのでしょうか? 歴史的に貴重な映像だとも思いました。

長田監督:基本的に演出です。正直に申し上げますと、戦火の中でとても撮りきれない、時間が足りないという感じでした。とくに最後のシーンに出てくるフエという町で私たちは3日間撮影をしてきたんですが、ベトナム人のスタッフからは“もうここにいてはだめだ”といわれる状態で、引き上げた翌日に町は陥落しました。泊まっていたホテルはロケット砲で破壊され、ホテルの従業員の何人かが亡くなっております。そういう状況でしたから、こうして今になってフィルムを繋いでみますと、戦争も、平和な日常の風景も、最後のアクションで出てくる今は世界遺産になった王城も、農夫も、戦車や軍人も……スチールで押さえていったのは方法論として間違ってなかったんじゃないかと思います。

 

Q:最後、杉本は日本に帰らず、どこへ行くつもりだったのでしょうか?

長田監督:直前にふっと浮かべた笑みを見ると、彼自身がどこにも行けないと感じていたんじゃないかと思います。タローのお父さんというのは日本兵の生き残りだったんですね。少なくとも自分はお父さんとは違うと思っていた。どこへ行ったのかは秘密というか私にもわかりません。

 

 

Q&Aのやり取りとともに、お一人ずつからメッセージも。

 

「映画としての私のデビュー作。とにかく戦火の中でしたが、ベトナム語を憶えるのがとにかく大変でタン・ランが一生懸命教えてくれました。思い出深い作品です」と磯村氏。

「サイゴンは今は別の名前で呼ばれていますが、私は今でも私の故郷のことをサイゴンと呼んでいます。青春の頃の私たちの姿を見て涙がでますし、今夜ここに来ることができて感動しています」と、現在はカリフォルニアに在住するタン・ラン氏。

「この映画はエンターテイメントですが、その中に“ジャパン・アズ・ナンバー1”と言われていた時代が本当にそうなのか、経済成長した日本が何か大事なものを置き忘れてないかという想いを込めました。そして今、美しい国・日本は本当に美しいのかという問いかけも含めて、この映画は始まりであり、またアジアの国と協力して続編を作りたいと思っています」。最後の長田監督のメッセージに次回作に対する意気込みが熱く語られました。

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【FOCUS ON CINEMA】タクシードライバー日誌(インドネシア)監督インタビュー

監督:テディ・スルヤットマジャ

日常的なタブーの領域を挑戦的に描いた衝撃作

 

「昨今のインドネシア映画は素晴らしい。その中で今映画祭、一番過激というか問題作」と梁木ディレクターが断言する「タクシードライバー日誌」。その監督、テディ・スルヤットマジャ氏は、普段はCMの仕事をこなしながら、資金を貯め、1年に1度自分の製作したい映画作品を撮るというスタイルをとっているそうです。その柔和な物腰と対照的に、作風は大胆かつ気概に満ちています。

今回、描かれているのは大都会に住む孤独な男女の物語。敬虔なイスラム教徒でありながら性の妄想にふける青年が、ある娼婦と出会ったことから、自分の内なるさまざまな欲望があふれ、過激さを増していき…迎えるのは衝撃のラストシーン。監督が描きたかったのはあくまでも一人の男の人生の物語。「原題の“Something in the way”にはさまざまな要素が含まれています。彼の中の秩序、欲望、抑えがたい孤独、暴力的感情、そして純粋な愛情……決して、インドネシア、ジャカルタの社会的側面を描いたわけではありません」と、監督は語ります。

前作では親子の物語を描き、世界的な評価を得た監督。しかし単なる親子の愛情物語ではなく、トランスジェンダーの父親と厳しいイスラム教徒の母親の間で揺れる子どもの感情を表現豊かに描いたといいます。また、今秋から制作予定の次回作は、初老の女性がどこまで男性を満足させられるか、という性をテーマにした内容。共通点は日常におけるタブーの領域を監督ならではのセンスで挑戦的に描いているということ。

「実際、日常でイスラムの教えをどのくらい守っているんですか?」と思わず率直な質問を投げかけた梁木ディレクターに「イスラムは個人の心が規準です。私はラーメンが大好きですから、豚骨と知らなかったら博多ラーメンも楽しんで食べますよ」とニッコリ。共に来福した監督の妻は女優。次作にも出演予定ですが、「夫は変な人としか思えない(笑)。でもいきなりアイデアが浮かび、物語ができて行くのを見ると天才としか思えない」と彼の才能にベタ惚れの様子。実は東京生まれという監督に「世界を転々とした視野の広さと経験が独特な世界観を生み出しているのでは…」と梁木ディレクター。

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【FOCUS ON CINEMA】シンガポール・グラフィティ(シンガポール)Q&A


監督 ツァイ・ユィウェイ
主演俳優 ダレン・タン
主演女優 ジュリ-・タン

 

昨年「ねじきれ奇譚(きたん)」で笑いと恐怖を誘った気鋭の監督が描くノスタルジックな青春ドラマ「シンガポール・グラフィティ」。監督のツァイ・ユイウェイ氏と主演俳優のダレン・タン氏、主演女優のジュリ-・タン氏から撮影の裏話を聞きました。

 

 

Q:監督、今回福岡の観客と一緒に映画を観ていただき、あらためて思うところはありましたか?

監督:今日はありがとうございます。今回、このような場で上映していただき、本当に感謝しております。実は製作した時は、あまりにも地元向けのローカルな映画なので国際上映など考えてもいませんでした。言語も英語・中国語・マレー語というふうにいろんな言語が扱われていますし、シンガポール人が発音するそのままのなまりで台詞も話していますので。でもこうして昨年に引き続き、上映していただき、非常に嬉しく思います。

この映画を平たく言えばラブストーリーなのですが、私はこの映画で社会的なコメントを表現しています。それは、シンガポールではいかに中国語が失われていっているかということです。シンガポール人にとって中国語は母語なんですけど、教育上は英語が非常に重要というわけで、中国語はシンガポールからどんどん消されていっているのです。ですから、ここに出てくる若者たちというのはローカルな地元のシンガポール人を象徴しています。英語を重要視している人物、それがメイの母親ですね。ゆっくりゆっくりと英語が中国語を押していっている。また高い確率で中国人がきちんとした中国語を話せなくなっているのが現状です。

 

 

Q:たくさん楽しい歌が出てきましたね。

監督:はい、この映画の中で歌われていた曲は、主に1985年~1990年に出ていたシンガポールの民族歌謡で「新謡(しんよう)」と訳します。主にシンガポールの地元の人が中国語で歌ったシンガポールのポップソングのこと。当時はこういう歌を非常に熱心に作曲していたシンガポール歌手がいて、中国語つまり北京語やマレー語を流暢に話す人達がこういう歌をつくっていました。できればこの映画を通じてこういう歌がもう一度リバイバルされたり、再度聴かれるようになればいいなと思い、多くの歌を登場させました。映画の場面では俳優さんや女優さんが全部自分達で歌っています。

 

 

Q:主演されたジュリ-・タン氏とダレン・タン氏。二人ともお名前がタンさんなので、もしやカップルなのではと思ったのですがどうも違うようで(笑)。そう思ってしまうくらい映画の中のラブストーリーが素敵でした。大変だった事も含めて少しお話ください。

ダレン・タン:中国語の名前でタンというのはものすごく多いということを言わせてください。もともと中国系の人達がシンガポールに住みついているので、タンさんといったらそこらへんにたくさんいる名前なんですけども、ちなみに私たちは結婚はしておりません(笑)。
ジュリ-・タン:ふたりとも映画は初出演です。実際に映画製作を通じて仲良くなりましたが、撮影に入る前にみんなでトレーニングをたくさん受けました。ダンスのクラスとか演技のクラスとか。数日間ずっと一緒という感じでしたので、より仲良くなったのだと思います。

 

Q:上映前に監督さんがこの映画は完全版だと言われていたので、触れないわけにはいかないと思いますが、どのシーンが検閲にひっかかったのでしょうか。

監督:実は皮肉なことですけれど、シンガポールの映画でのカットというのは、検閲といっても経済的な目的でされることが多いんです。今回も政府がカットしたというよりはプロデューサーが自らカットしたということが多かったです。なぜならシンガポールは市場規模が非常に小さくてマーケットの中で人気が出ない映画はよくない、もうちょっと効果を出そうという意味のカットです。ですから逆といいますか、どういうところがカットされていたかというと、トイレの中で男子生徒たちがポルノ雑誌を広げていますが、実際の写真にわざとモザイクをかけるということをやったわけです。それと歩道橋の上からひどい悪態をつくシーンでもピーッという音をわざと入れました。その方がむしろ面白かったのでやったのですが、そこのところがカットになりました。

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シンポジウム「シンガポール・ドリーム」は誰のもの?:グローバル・ハブシティが模索するアイデンティティ」

シンポジウム「シンガポール・ドリーム」は誰のもの?:グローバル・ハブシティが模索するアイデンティティ」

人材のみが唯一の資源として、国内の人材開発に力を入れつつ、国外からも広く人材を受け入れ、グローバル・ハブシティとして発展目覚ましいシンガポール。その成功と課題について、流動性を高めつつある日本を含めたアジアの国々が注目しています。
ミシェル・チョン監督作品のシンガポール映画『スター誕生』(Already Famous/一泡而紅、2011年)は、それぞれに夢を抱いて世界中からやって来る人たちが交差するシンガポールならではのユーモアあふれたラブコメディです。
本シンポジウムでは、アジアフォーカス・福岡国際映画祭で来日中のポーリン・ユイ(Pauline Yu)氏(『スター誕生』プロデューサー)をお招きし、映画を通じて今日のシンガポールのアイデンティティに迫ります。

【日時】 2013年9月17日(火)13時~15時
【会場】 キャナルシティ博多貸会議室(福岡市中央区住吉1-2-25 キャナルシティビジネスセンタービル6階)
【プログラム】
・司会・趣旨説明
篠崎香織(北九州市立大学)
・ゲストスピーカー
ポーリン・ユイ(『スター誕生』プロデューサー)
・話題提供
田村慶子(北九州市立大学)「シンガポールで働く外国人」
及川茜(神田外語大学)「ヨンピンからシンガポールへ――カンポン・ガールの上京物語」」
・閉会挨拶
深尾淳一(映画専門大学院大学)

★アジアフォーカス・福岡国際映画祭『スター誕生』上映情報
9月14日(土)20:30/9月18日(水)19:20/9月20日(金)14:50/9月22日(日)9:45
(詳細はこちら )

【参加方法】入場無料、事前申し込み不要
【問い合わせ先】篠崎香織 kaoris@kitakyu-u.ac.jp
【主催・共催】
・主催
マレーシア映画文化研究会 
京都大学地域研究統合情報センター共同研究 「映画に見る現代アジア社会の課題」
・共催
日本マレーシア学会
東南アジア学会九州地区例会
科研費(基盤A)「広域アジアの市民社会構築とその国際政治的課題」
・協力
アジアフォーカス・福岡国際映画祭
北九州市立大学

http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/event/?p=1572

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梁木ディレクターのここが見どころ「ティモール島アタンブア39℃」(インドネシア)


リリ・リザ監督の新作です。といっても、最近のリリ・リザ作品とは、いささか趣を異にしています。16世紀のヨーロッパ列強による植民地支配以降、島のほぼ真ん中で東西に分かれて統治されたティモール島。西ティモールを領土としたインドネシアは、ポルトガル領であった東ティモールを侵略。東ティモールから国境を越えて、インドネシアのアタンブアにやって来た難民。この作品は、東ティモールに母と妹を残し、アタンブアに来た父子の物語です。

最近は、明るい未来を背負う青年たちを描いてきたリリ・リザですが、ふたたびインドネシアの歴史の暗い部分を描こうとしています。会話が極端に少なく、抑えたトーンで淡々と描くことで、政変に奔ろうされた人々の癒えない傷が浮かび上がり、リアリズムを超えた詩的な美しさへと昇華していく……。明るいインドネシアと、傷を持つインドネシア、その両方を描くことを、リリ・リザは自らに課しているようです。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_14.html

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梁木ディレクターのここが見どころ「タクシードライバー日誌」(インドネシア)


ベルリン国際映画祭2013でも上映された「タクシードライバー日誌」は、インドネシア版〝タクシードライバー〟です。もっとも大統領選挙はでてきませんが……。

若い孤独なAhmadは、ジャカルタでタクシーの運転手をしています。ある日、アパートの隣人の女性が売春婦であることを知り、彼女に惹かれて、ストーカーのように見張るようになります。そして彼女につきまとう裏社会の男性に殺意を抱くまでになっていきます……。

大都会の中で満たされない状況で、孤独に悶々と暮らす若い男性の精神状態が重苦しく伝わってくる作品です。狂気とエロスをはらんだ青春が描かれ、情欲をあおるような美しいジャカルタの夜の映像も魅力的です。台頭著しいインドネシアの若手の力量をとくとご覧あれ。

作品情報はこちら↓
http://www.focus-on-asia.com/lineup/film13_13.html

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