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【FOCUS ON CINEMA】聖なる踊子(インドネシア/フランス)Q&A

主演女優/プリシア・ナスティオン

 

インドネシア人作家アフマッド・トハリの小説からインスピレーションを受けて作られた本作。「9.30事件」や村に伝わる「踊り子」という独特の世界を扱った希少な映画について会場から多くの質問が飛び出しました。

 

 

Q:歴史上のテーマを扱ったとてもいい映画だと思います。1965年の9月30日事件のことを取り上げた映画というのはインドネシアでも初めてだと思うのですが、役を演じる上で当時の状況をどのように調べ、役作りに望んだのですか。

A:皆さま、こんにちは。1965年を舞台にしたインドネシアでは9月30日というタブーな事件がありました。確かにそれを扱った映画が上映されたことはありません。今回なぜ上映できたかというと、共産党について細かく描かれていませんし、共産党の旗をまったく撮影していませんので可能でした。事件については学生の頃の教科書で読んだことがありますが、共産党なのか軍人なのか、どちらが正しいのかわかりません。その時は軍人の方が正しいと教科書にも書いてあります。しかし、この映画では軍人が悪者みたいな感じがありまして、映画はちょっと違う感覚で作られています。

 

Q:素晴しい映画、ありがとうございました。踊り子さんが持っていた刀の形をしたものが女性に渡り、踊り子になれたような気がしたのですが、その経緯と何を意味しているのかを教えてください?

A:クリス(刀)は、もともとジャワ島の人達が持つお守りみたいなものです。確かに男のものなのですけど、ここで使われている村のシンボルであるクリスは、亡くなられた昔の踊り子の持ち物なのです。落とされた刀を男性のラススが拾って彼女に渡すことでつながりができる。その刀には昔の踊り子たちの霊が入っているから、彼女でないといけなかったわけです。長い方のクリスは男性用で、短いクリスは女性用というのがジャワ島の言い伝え。ベルトに挟むことで楯のように身を守ってくれます。

 

 

Q:見応えのある映画ありがとうございました。踊りはもともとなさっていたのですか?それとも映画のために練習なさったのですか?

A:ありがとうございます。私も村の出身ではないですし、必死に練習しました。この村の子は、たしかにこの踊りはできますが、すべてのインドネシアの子どもが踊れるかというとそうではありません。皆さまは私の踊りは100%のできと思われたかもしれませんが、自分の中では30%、ましてやその村の子ども達が見ていたら0%かもしれないです。本当の踊りは、魂がのりうつったいような心からの動きだと思います。役作りをする中で、顔も目も指先まで、まるで天女みたいな踊りをしないといけないのですが、難しかったです。踊りの種類も多いです。インドネシアは島国でひとつの島に約150種類の踊りがあって、それが17,000島……計算してみてください(笑)。ご存知かもしれませんが、バリ島でも地域によって踊りは違っていて100種類あります。

 

Q:踊り子は、村の女性からも尊敬されているのですか?

A:踊り子の存在は、村にとって非常に喜ばしいことなのです。イキイキと明るい村になり、幸せが訪れるとされています。踊り子が1年後にやってくるのか10年後なのかは誰にもわかりません。踊り子がいる村では、自分達の村には立派な踊り子がいるということを大変誇りに思うのです。私も役作りのために98歳の踊り子に会いましたが、実はその人は男性でした。なぜかというとその男性のおじいさんが夢の中で「あなたの孫は踊り子にならないといけない」とのお告げがあったそうです。その方は男性だからと拒否したそうですが、言い伝えだからと30代から始めたそうです。この村は無宗教で、今の私たちの宗教観からすると違和感をおぼえることもありますが、村では幸せのために大切だったのです。

 

Q:今、実際に田舎にはああいう踊り子はいるのですか?

A:村にはその踊り子はいました。といっても一夜を過ごすというようなことはなく、ただ結婚式に呼ばれて踊るというバンド演奏みたいな役割です。私も村を訪ねた時に一緒に踊りましたが、1965年の伝統的な踊りとは別物でした。そういう一夜を共にする踊り子を「ロンゲ」というのですが、イコール共産党のバックという感じもあります。今の踊り子は「レンゲル」と呼ばれ伝統文化を伝承するための踊りをしています。

 

 

妖艶な踊りで観客を魅了した主演女優のプリシア・ナスティオン氏を一目見ようと集まった大勢の観客の熱気にあふれたQ&Aでした。

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