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【FOCUS ON CINEMA】パルヴィズ(イラン)監督インタビュー

監督:マジド・バルゼガル
美術監督:レイラ・ナグディパリ
主演俳優:レヴォン・ハフトワン

 

どの国でも起きえる問題を詩的に描いた監督の注目作

 

映画祭オープニングから堂々たる存在感を見せていた「パルヴィズ」チーム。梁木ディレクターとの懇談は「福岡観客賞」発表の翌日でした。「個人的に僕にとっての観客賞は『パルヴィズ』ですよ!」との梁木Dの言葉に「そう言って下さる方が多いんですよ。やり直しましょうよ(笑)」とマジド監督。中年ニートの孤独を描いた今作ですが、「無視されることによって人はどうなるのか。そしてそんな人間が権力を持った時、どう変わるのかを描きたかった」というこの作品のテーマは、イランだけではなく全世界で起きえる問題。

イランでは親と一緒に住んでいる中年男性は多く、親が金持ちだとパルヴィズのようなニートになり、親が貧乏だと共に住まざるを得ないという両極の現状を持っていると監督。今作では軍隊上がりの厳しい父親と50歳のニートの息子を描きましたが、実際に取材したリアイア後の将軍も最近2人の息子のうち、50歳の息子を追い出したばかり、と語っていたそうで、マジド監督の妻である美術監督・レイラさんと撮影監督と共に2年間かけてよりリアリティーに近い物語に仕上げていったそうです。

主人公のパルヴィスを演じたのは、カナダ・トロントで活躍中のイラン人舞台俳優、レヴォンさん。ちょうど母国で別の映画の撮影を行っていた時に、人の紹介を通じてマジド監督に会ったそう。レヴォンさん自身の体格、見た目を買われて当時、別の映画の撮影に入っていたのですが、マジド監督が「クレイジーな人ではなく、普通の中年の男を撮りたい。見た目は関係ない」と言ったことが出演の決まり手だったそう。マジド監督は、最初レヴォンさんに会った時、存在感が強すぎるかなと懸念したそうですが、毎日団地のあちこちで見かける太った男が、急にそこからいなくなることの対比の面白さを考え、起用を決めたと言います。劇中では、パルヴィズの息遣いが印象的。「日本語では息と生きるって言葉が似ているんですよね。だから息が苦しいってことは、生きる苦しさが現れていると感じました」との梁木Dの言葉に一同深く納得。レヴォンさんの母国語であるアルメニア語でも「呼吸と生きる」という言葉が似ているそう。

また、パルヴィズがつけている母親のようなエプロンや、古びれたアパートの窓の目隠しに使われている古い新聞、実家やクリーニング店の冷たい色の壁…など細かくなにげない設定は美術監督のレイラさんとマジド監督、撮影監督が徹底して作り込んだセット。「まるで点滴のように、観る方にじわじわと入り込んで、感じてくれればと思ったんです。大げさな効果音や音楽、カメラワークで次の展開等の予告はしたくなかった。ドラマティックさを一切消したかった」とマジド監督。小津安二郎監督など、日本の古い映画に大きな影響を受けている監督は「日本人の美があいまいさの中にあることを知っていますし、イランは日本の倫理感や美学にとっても似ています。私の映画では、“すべてはハッキリ言わないこと”を主に表現を試み、それを私の詩としています。俳句のようにそぎおとし、ミニマルな表現を基本としているので、日本人にはよりウケるかもしれませんね」とイランに昔からある俳句や短歌のような「ロバイ」という表現を教えてくれ、日本文化、イラン文化について話が盛り上がりました。

映画のタイトル「パルヴィズ」は、イラン史に残るある英雄の名で、イランでは親が子に歴史上の英雄の名前を希望と共に付けることが多いそう。撮影後半まで違うタイトルで映画製作は進んでいたそうですが、途中からこれは悲劇的な結末を迎える映画になるだろうと意識して、シンプルに「パルヴィズ」というタイトルに変えたといいます。

実に細やかでミニマルな表現の上に成り立っている、圧倒的な存在感を誇る作品。「イランからまた面白い監督が出てきたね!」と梁木Dも大興奮のひと時でした。

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