ディレクター梁木のアジア映画館

梁木ディレクターのここが見どころ!⑩ 【私は彼ではない〈トルコ/ギリシャ/フランス〉】

 
人間の内に秘めた欲望を独特のリズムで描く

安倍公房に「他人の顔」という小説あります。手術で他人の顔になりすますという話でしたが、こちらは究極の他人の空似です。設定は違いますが、アイデンティティーを問題にしているという点で、テイストはかなり近いです。中年の独り者が、同僚の女性の家に夕食を食べに行く。居間の写真を見ると、自分がいる。それは自分にそっくりな彼女の亭主で、現在、服役中。彼女と同居するうちに、男は亭主の物を使ったりするようになる。それもつかの間、唐突に彼女は事故死。男は、そのまま亭主に成り代わる。すると亭主が脱獄し、亭主の代わりに自分も追っかけられることに……。
他人になっていくことが快感になり、追われていることが恍惚に変わる。自分のアイデンティティーが揺らいでいく人間のおそれとおののき。カフカ的な展開が魅力的な作品です。観終わったあと、自分はだれなのか? という疑問に向き合うことになります。


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