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FOCUS ON CINEMA②【郊遊<ピクニック>〈台湾/フランス〉ディレクター懇談】

監督:ツァイ・ミンリャン
俳優:リー・カンション


マーケットからマニュファクチャー(手工業)の世界へ

台湾映画界の奇才、ツァイ・ミンリャン監督と名コンビとして知られる主演男優のリー・カンション氏が初来福。昨年9月に引退表明を行った監督だけに、梁木ディレクターの話題は、自ずと今の映画界や演劇界に失われてしまった話題に集中しました。

「今の映画は“複雑な舞台装置と早い転換、そして物語を理解する”ということに重きをおく娯楽的、商業的なものが多いですね」と話す梁木ディレクターの言葉に、ミンリャン監督は「感じることを拒否させられてしまっている。映画には、ただひたすら“観る”という行為が大事なんです」と、さすがに本質をついた応えでした。

「私は、映画のなかで観客との距離をいかに近づけるかを常に考えています。リアルな時間の流れが生きているし、それを大事にしていきたいから」と、現在はマーケットからマニュフェクチャー(手工業)の世界へとシフト。委託運営する台北・中山堂のカフェ(蔡明亮咖啡走廊)で、オールドシネマの鑑賞会を行ったり、大学の美術ホールでは「郊遊<ピクニック>」を一日に7回連続上映するなど、芸術志向の高い若者の心を掴んでいるのだそう。

経済至上主義のマーケットと決別した今、「ここにきて20代の新たな観客層が出てきているし、彼らは台詞の少ない映画を楽しめるやわらかな頭の持ち主。ゆっくりとしたリズムの映画を理解できる傾向にある」と光明も見えてきたといいます。

「福岡でも台湾でも、黄金期と呼ばれる昔の名作をもっとアーカイブで見せるべきですね」と意気投合する2人。ミンリャン監督の好きな日本の監督として、小津安二郎、成瀬巳喜男、黒沢清、塚本晋也の名が上がり、黒澤組のスクリプター(記録係)として知られる野上照代さんとの交流話も飛び出しました。あっという間の1時間。「話の続きはまた台北で」と監督とディレクターは固い握手を交わし、再会を約束しました。

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