女優:メリル・ソリアーノ
プロジェクトコーディネーター:エンジェル・メンドーサ
(司会:高橋哲也)
今回は、主人公の一人を演じたメリルさんと、監督の代わりに“送り込まれた”という娘のエンジェルさんが揃って来福。フィリピンの超常現象の話に観客もくぎづけでした。
Q:フィリピンでは、劇中に出てくるような心霊現象の番組は多いのですか?
女優:確かに多いですね。フィリピンではすべてのネットワークテレビ局がこういう番組を作ります。本作品では、超常現象とともに、それを癒すヒーラーや祈祷師を受け入れるフィリピンの文化が描かれています。貧しい人たちほど目に見えない世界に傾倒しがちなのです。
Q:この映画は超常現象について語っているというよりも、テレビ局同士の競争の愚かしさを批判しているように感じました。
女優:テレビ局が競いあう愚かしさというのは、現実のものです。監督は、そこに皮肉な目を向けている。ここで描かれているのは、人間がいかに欲望に満ちた存在になりうるか、トップに立とうとあがく人間の愚かしい姿です。
プロジェクトコーディネーター:もうひとつ監督が描きたかったのは、テレビ局が視聴率獲得競争に走りすぎているということ。超常現象のような派手な番組を作れば作る程、視聴者もそちらを好んで観てしまうところがあるわけです。
Q:興味深い映画をありがとうございました。最初と最後に蛇が出てきたわけですが、意味するところを教えていただけますか。
女優:聖書にあらわれる蛇と同じ、邪悪なものを象徴しています。人より上に立ちたいと思う人達がだんだん自分の中に邪悪なものを育て、邪悪な存在になってしまう。憑依現象を取材しますが、実は自分達が憑依されてしまっているわけです。
Q:メリルさんは本当の放送局員みたいで、ドキュメンタリーのような印象を受けるほどリアリズムを感じました。工夫した点を教えてください。
女優:アリガトウゴザイマス! 実はこの映画は、私にとってとても面白い体験でした。メンドーサ監督との仕事も初めてでしたし、取材シーンはほぼアドリブ。憑依番組を取材する実際の撮影クルーがどういう動きをしているか、1週間ほど徹底してリサーチしました。自分たちでキャラクターをデザインし、現場を観察しながら演技をつくりあげた、それがこの映画です。
司会:なるほど! あのリアリティーはどこから生まれるんだろうと思っていました。
女優:登場人物のバックボーンも俳優自身で考えました。実名を使っていますので、その場その場で何が起きようとも各々の俳優が自分の役割を内面的にも外面的にもわかった上で動けたのではないかと思います。ただし自分自身でありながら他人を表現しないといけないわけですから、難しいチャレンジでした。だからこそ逆に3人の主人公の化学反応を引き出せたのではないでしょうか。
Q:私の家内はフィリピン人で、娘も今フィリピンの大学に通っています。街の風景にもなじみがあり、まるで自分の映画を観ているような気がしました。フィリピンはすごく住みやすい良い国。今日の映画では文化的な一面も出てきたのでとても喜んでいます。
女優:アリガトウゴザイマス!
Q:映画の撮影中、超常現象などが起きたというようなことはありましたか?
女優:フィリピンの人達は、超常現象を本当に信じて生きています。私達の国ではスーパーナチュラルなことなんです。私の兄弟は赤ちゃんの時に高熱を出して泣き続けたので、呪術師にみてもらったら「この男の子は木の精霊にとりつかれている」と。お湯をかけたり叩いたりして悪霊をとりはらってもらったんですけど、そういうことがフィリピン文化の中には根づいているのです。可笑しいかもしれませんが、本当にありますから(笑)。
司会:じゃあ、今回の映画はフィリピンでは実際にあることを描いたという意味でもドキュメンタリーですね(会場笑)。ありがとうございました。