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FOCUS ON CINEMA⑮【神の眼の下(もと)に〈韓国/カンボジア〉Q&A】

プロデューサー:キム・ヒョヌ
男優:オ・グァンノク


 

遠藤周作の小説「沈黙」にインスピレーションを得たイ・ジャンホ監督の作品

(左より)オ・グァンノフ、キム・ヒョヌ



韓国リアリズム映画の巨匠、イ・ジャンホ監督が19年ぶりにメガホンをとった注目作。敬虔なクリスチャンである監督が、遠藤周作の小説「沈黙」にインスピレーションを得て製作した作品で、宗教か命かという選択を迫られる難しいテーマに観客の質問も熱を帯びたものになりました。

 

Q:基本的な知識という範ちゅうでの質問ですが、キリスト教とイスラム教の神は元々同じだったはずですよね。しかし対立の激しい様子を見て、お互いにそういった認識はないんだなあと思いました。ロケ地であるカンボジアのスタッフはどう受け止めていたんですか?

プロデューサー:宗教的な話をすると長くなりますので、個人的な話をします。旧約聖書に書かれていることは同じでも、解釈の仕方の違いでそれぞれの宗教があると思いますが、どちらの宗教も唯一神を崇めるところは同じです。その点で衝突も多いんだと思います。宗教色が強い映画を製作するにあたり、いろいろ準備を行いましたが、最初ロケ地はインドネシアの予定でした。しかし事前調査に行ったところ、現地ではイスラム教徒が多く、撮影は危ないと感じ、カンボジアになったんです。

男優:映画をご覧になるのも苦労されたと思います。私は宗教を持たない人間なので、2つの宗教を中立的な立場で捉えることができました。作品をつくる俳優としても、現代を生きる人間としても、自分の正義と信念について考えながら役作りに臨みました。

 

Q:宗教を持っているがゆえに魂が救われるところを、逆に苦悩しているように感じました。主人公が最終的な道を選んだ理由は何でしょうか?

男優:この映画のスタッフの半分がクリスチャンで、半分がそうでない人たちです。映画製作において、宗教観はとてもデリケートな問題なので気をつけながら映画をつくりあげていきました。私が演じた宣教師・ヨアンは12年前、医療奉仕の為、東南アジアのある村を訪れますが、命乞いの為に宗教を捨ててしまいます。その後、自分の信念とアイデンティティーが混乱し、韓国にも戻らず、家族にも会わなくなってしまいました。しかし、今回の事件を経て彼は大きく変わっていきます。そして彼は自分の魂を自由にしたいという思いで一つの道を選ぶのです。最初シナリオを見た時、これは別に宗教がどうこうではなく、自分の信念と葛藤しながら生きていく現代の人々の姿だと思いました。

 

Q:宣教団のメンバーには若い方も多いですね。街中で事件のニュースが大型スクリーンで流れる場面がありますが、若者たちが気にしていない感じに見えました。実際、韓国での若者の信仰心の格差はありますか?

プロデューサー:実は、韓国は仏教の国なんですよ。でもいろんな宗教を信じている人がたくさんいます。物語の宣教団のように新しい考えを持ったキリスト教の一派もいます。宗教は信じる人も信じない人もいます。ニュースのシーンはCG合成なので、若者たちがあの事件を見ているわけではないんですよ。おかげで街がパニックにならなくてよかったですけど…(笑)。映画づくりはお金がかかるんです(笑)。

衝撃的なラストシーンを迎えた後、圧倒的な演技力で魅せたオ・グァンノクさんが会場ににこやかに登場すると、会場からは安堵したかのようなため息がもれました。また映画のエンドロールに「パク・ヨンシクに捧ぐ」という文言が出てきますが、こちらは長老役で出演した俳優が、撮影の1カ月後にロケ地でかかった病気で亡くなったということからだそうで、この映画に関わった人たちにとって忘れられない作品となったようです。

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