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FOCUS ON CINEMA⑰【台湾映画大特集記念シンポジウム】

パワーと誇り、多様性にあふれる台湾映画が熱い!

(右から)チー・ポーリン氏(「天空からの招待状」監督)、クオ・チェンティ氏(「山猪温泉」監督)、シエ・チュンイー氏(「ロマンス狂想曲」監督)、張昌彦氏(大学教授、映画評論家)、梁木靖弘ディレクター



近年、アジアのなかでも、とくにヒット作品に恵まれ、熱気を帯びている台湾映画。今年は、台湾映画大特集を記念して、台湾から招待作品の監督をゲストに招き、「台湾映画の今」を語り合うシンポジウムを開催。老若男女、コアなアジア映画ファンが集い、1時間半の間、活発な意見交換を熱心に聴き入っていました。

コーディネイターである梁木ディレクターの司会のもと、まずは自己紹介から。パネラーは、シエ・チュンイー氏(「ロマンス狂想曲」監督)、クオ・チェンティ氏(「山猪(いのしし)温泉」監督)、チー・ポーリン氏(「天空からの招待状」監督)、張昌彦氏(大学教授、映画評論家)の4名。穏やかな笑顔で観客に挨拶すると、大きな拍手が会場を包みました。

シンポジウムの主なテーマは、各監督の作品が生まれたアイデアや狙い、台湾映画の監督として目指すもの。

始めに張氏が、それまで低迷していた台湾映画の火付け役となった作品「海角七号 君想う、国境の南」(2008年)の話に触れ、台湾映画事情について話しました。

「最近、台湾ではインターネットの文学者やテレビドラマの製作者の中から、映画監督が出てきているんです。長年、金馬奨の審査員を受け持っていますが、台北では短編映画が流行っていて、今年は240本以上の応募がありました。感想としては、昔と違って、『私は台湾人です』と胸を張って映画をつくっている人が多く、パワーと多様性に富んだ作品が増えているように思います。都市だけでなく、農村の風習や人の生き方といったものに焦点をあてた作品も人気ですし、『愛島精神』が際立っているという印象です」

それを受けて、監督たちも熱い想いを述べました。

中国大陸と台湾出身の男女のラブストーリーを描いた「ロマンス狂想曲」の若き監督、チュンイー監督は、「私の作品は政府の補助金を使ってつくったインディペンデント作品です。大学の友人だったプロデューサーは大陸出身で、彼女とはよく台湾と大陸の政治や文化について生じる矛盾や衝突などを冗談半分に語り合っていたんですね。私たちの年代の台湾人の多くは、そういう国家間の状況を深刻に考えていないんです。ちょうど大陸から台湾への旅行が解禁になったことも重なって、若者の目から見た中国大陸と台湾のことを描いてみたのが、この作品です」

チュンイー監督もまた、「海角七号 君想う、国境の南」を引き合いに出し、映画産業において商業ベースにのせ、しかもいかに芸術性のある作品仕上げられるかが僕らの課題だと話します。台湾のローカルな文化が受け入れられるようになった今、これからの作品では市場の大きい大陸をはじめ、他国での上映も狙っていきたいと意気込みを見せました。

次に、「山猪温泉」の監督、クオ・チェンティ氏へバトンタッチ。被災地の農村と村人の生き方について描いた本作。

「この脚本を書き始めた当時は、商業的なコメディを考えていたんです。でも、村でのフィールドワークを重ねていくうちに、都市に生きるホワイトカラーの人たちは、こうした貧しい村のことを理解できていないだろうという思いが沸々とわいてきたんですね。それで2年経つうちに、リアリズムを追求した脚本へと変わっていきました」

資金集めが困難といわれるドキュメンタリーの世界。科学技術者や登山愛好家など環境や未来に関心の高い人にお願いし、何とか20人ほどの出資者が集まって作品が完成したといいます。文化局の局長からは「スタッフみんなが1人で3人分くらいの働きをしているこの映画は、かかった予算の3倍分の価値がある」と言ってくれたそうです。「台湾人スタッフみんなの情熱でもって、形になった作品」と話す監督の表情に、台湾人としての誇りが見て取れました。

最後に、「天空からの招待状」監督、チー・ポーリン氏。もともと「國道新建工程局」の局員として、長年航空写真を撮り続けてきたポーリン監督。「環境問題に若者が関心を示さない」状況を憂えながらも、自分の家を担保にして億単位の巨額な空撮資金を集めようと使命感に燃えます。その必死さに心を動かされ、エグゼクティブプロデューサーになってくれたのが、映画界の巨匠、ホウ・シャオシェン氏でした。

「シャオシェン監督をはじめ、多くの監督と企業家の方々に支援してもらいました。上映前は800万台湾ドルを見込んでいた作品ですが、いざ上映してみると、2億台湾ドルの収益を得ました。映画館で上映されること自体が驚きなのに、成果を出せたことは、何より『歴史の記録』して非常に重要なことですし、これからのドキュメンタリー界に希望をもたらせたのではないかとも思います」

台湾の美しい自然風土と相反する負の遺産を空撮で捉える本作。過去に、大阪で3回上映された時、チケットはすべての回でソールドアウトになったそうです。

「日本の方々が観てくれたことで、日本と台湾が互いに好意を持っていることを嬉しく感じました。この映画は言葉の壁を感じない作品ですし、どこの国で上映されても、環境を守りたいというメッセージは伝わると信じています」と、笑顔で話しました。

ちなみに、今年の12月に日本での公開が決定し、ナレーションは俳優の西島秀俊さんが担当。「ぜひ自分にやらせてほしい」と本人からの強いアプローチがあったのだとか。

 

Q&Aでは、「日本映画で好きな作品は?」との質問に、現代の監督の作品を挙げる監督が多い中、「ぜひ昔の日本映画のよさに触れてほしい」との観客からの意見も飛び出しました。

最後に、梁木ディレクターによるまとめの言葉は、本映画祭の開催中、「郊遊<ピクニック>」のツァン・ミンリャン監督との懇談でも話題に上がったメッセージでした。

「映画には『観るという行為』が大事です。今は消費されるための映画が多いですが、人生や人間同士のコミュニケーションなど社会の中で急速に失われていっている本質的なものを取り戻していくことが、私たちの役割ではないかと思います。ゲストの皆さんの作品をはじめ、このアジアフォーカス・福岡国際映画祭で、そういった映画をたくさんの人に観てもらえるように努力していかなくてはと思います」

その言葉にゲスト陣も頷きながら、会場からの温かな拍手の中、シンポジウムは締めくくられました。

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