梁木靖弘の自由席

父娘の愛情“直球勝負”で描く韓国映画 「7月32日」

韓国映画がこれほど日本で人気を得た理由は何か? 思うに、俳優の魅力がある。もうひとつには、純粋さがある。

純愛ばかりではない。残酷描写にしても、徹底して純粋な状態へ向かおうとする。その過剰なエネルギーの前には、あいまいな日本人はうろたえるしかない。そのうち、キムチのように、この刺激がたまらなくなる。

ピュアな状態を求める韓国ドラマの原型は、たとえば父娘の関係かもしれない。日本で最初にヒットした「風の丘を越えて」のパンソリの名人は、娘をシゴく。おまえの声には恨(ハン)がないと言って、盲目にしてまで芸を仕込む。

カンヌ映画祭でグランプリを取った「オールド・ボーイ」の衝撃的な父娘の近親相姦や、「グエルム 漢江の怪物」で、父親が怪物にさらわれた娘に注ぐ愛情にも、同じ系譜のにおいがある。

福岡が世界初公開となる(※2008年時点)本作も、過剰な父娘の愛情(愛憎でもある)を直球勝負で描いている。父親は殺し屋。牢獄に入れられ、残された幼い娘は売り飛ばされ娼妓になってしまう。父は別れた娘を捜しつづけ、娘は父を殺したいほど憎む。

この暗い愛憎が、デスペラードに渦巻いて、異様な迫力を生む。とくに、映画初出演とは思えない娘役のソン・ヘリムの圧倒的な魅力が爆発する。この重たさに耐えてこそ韓国映画ファン!

(2008.8.15 西日本新聞より)

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