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アジアフォーカス言いたか放題 車の影に(フィリピン)

ずんどこの底の底。いままでにこんなに奥深く落ち込みまくる作品があったろうか。いやあなかった。とにかく落ち込みまくります。しばらく再起不能状態に陥るかもしれません。

あたしもフィリピンには少しだけ行ったことがあったりしますが、人々は陽気だけど、確かに社会的には結構厳しそうだなあと感じてました。特に格差が酷い。10年以上前に行ったときは富裕層のアーチストの家を訪問したのですが、完全なゲイテッドシティで、街の入り口には自動小銃を抱えた警備員が目を光らせており、さらに各家庭にもライフル銃構えた人が門にいたりして。つい数年前に行った時も、相変わらず線路沿いにはバラックの住居が軒を連ねスラム化していたし、観光地化している歴史地区(世界遺産にもなっている)でさえ、ちょっと入り込むと、饐えたにおいが漂う貧民地区だったり。(前もどこかで書いたかもしれませんが)

この映画はそんなフィリピンだからこそ描ける、現代社会では、かなり極限的に悲惨な状況にある家族、ていうかこれは本当に家族なのか?的な、でもやはり人々の愛情をテーマにしたお話なのです。基本的に男は結構無責任で酷いやつらです。これはどこの世界でも同じで、またしてもやはり、も-サイテ-的アニマル野郎が炸裂してます。なんか同じ男として悲しすぎます。偉そうなことは全く言えませんが、それにしてももうちょっとどうにかしちゃってんしゃい。一方母は強く美しい。その愛情は海より深し。ああそれなのに。そんなむちゃくちゃな事が・・・・あってはならないことが。神様、もう少しどうにかならなかったものでしょうか。

それにしてもフィリピン映画ってかなりすごくないですか。去年のブリリャンテ・メンドーサ(Brilliante Mendoza)監督の「ばあさん」(Lola)にしても、レイモンド・レッド(Raymond Red)監督のマニラ・スカイ(Manila Skies)にしても、あまりに切実でリアルで切ない物語でしたが、今回のアドルフォ・ボリナガ・アリックスJr.(Adolfo Borinaga Alix Jr.)監督の「車の影に」(Chassis)は究極の切なさです。いくら貧しい中で強く健気に生きる人々を描いても、ここまで描かれるともう勘弁してください。

映画の悲惨さは本当に目を覆いたくなるばかりなのですが、前編モノクロームの映像は、白黒ならではの陰影が、眩しいほどに明るく、闇夜のように底暗く冷たく堅くそして美しくもあるのです。たしかに、この映画はカラーでは描写出来ない。これほどまでにモノクロで描くべきことに納得出来る映画も少ないかもしれません。白と黒のイメージの強烈なコントラストこそが、観る者の想像力を極限まで高める、そんな至高の映像美が展開されるのだから。

フィリピンの一つの現実に迫った間違いなく傑作ですが、落ち込み必至です。覚悟して観よ!ky

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