ニュース・トピックス

    FOCUS ON CINEMA⑲【ふしぎな岬の物語〈日本〉特別試写会】

    原作者:森沢明夫
    プロデューサー:富永理生子


     

    人のつながりの温かさを描いた至福の物語


    第38回モントリオール世界映画祭での、審査員特別賞グランプリとキリスト教関連団体が贈るエキュメニカル審査員賞のダブル受賞ニュースに日本中が沸いたのも記憶に新しいところ。人のつながりの大切さを味わい深く描いた「ふしぎな岬の物語」。10月11日の公開に先駆けて開催された特別試写会では舞台挨拶が行われ、多くのファンが詰めかけました。

    今回は主演の吉永小百合さんが企画から携わり、監督の成島出さんと共に“温かなつながり”について何か表現したいと探して出合ったのが、映画の原作となる森沢明夫さんの小説「虹の岬の喫茶店」でした。森沢さんは「原作が映画化されると決まった時、心の中で花火がドーンと上がりました。映画祭で受賞のニュースを聞いた時は、やった!というより、吉永さんおめでとう!という気持ちでした」と語り、実際ロケ現場で吉永さんに会った時は、あまりにも気さくなので驚いたそう。プロデューサーの冨永理生子さんは「吉永さんは映画界の大先輩。プロデューサーとしても女優としても完璧で、とにかく素晴らしいのは人間としての気のつかい方。助手などスタッフ全員の名前を覚えていて、遠くの人にも手を振って応える…この方のためなら何でもできる!という思いでついていきました」と吉永さんの魅力を披露。

    ロケは極寒の2月、阿部寛さん、笑福亭鶴瓶さん、竹内結子さんなど脇を固めるキャストもチームワーク抜群で吉永さんを中心に厳しい現場を和やかに乗り切っていたのが印象的だったと語る2人。森沢さんは小説に幸せの本質への思いを込めたといいます。「幸せは成るものではなく、気づくもの。そして人を幸せにしている人が幸せなんです。映画ではその幸せのキャッチボールを楽しむことができると思います」。日本映画ならではの温もりを感じる心地良い映画に仕上がっているという今作品。「たとえて言うなら田舎のひなびた温泉に2時間浸かっているような感覚で、映画をご覧になっていただきたいです。心の奥からほっこり温まり、至福のひとときを過ごしてください」との冨永さんのメッセージに会場全体が温かい拍手で包まれました。

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    福岡観客賞2014授賞式が行われました!

    「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014福岡観客賞」は
    インドネシア映画「ジャングル・スクール」に決定!

     


    今年で24回目となる「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014」。10日間の期間中、ハイライトを迎えた9月17日、「福岡観客賞」の発表と授賞式がユナイテッド・シネマ13で行われました。映画祭ではアジアの映画振興に寄与するために、観客の投票で決める「福岡観客賞」を2006年から実施し、今年度の優れた作品に対して顕彰を行っています。本年度の対象作品は16カ国・地域、公式招待作品全15作品です。

    9月13日から15日までの3日間、観客に映画鑑賞後、5段階評価で投票していただいた結果、最も平均点の高い作品が「福岡観客賞」に選ばれます。開演前から列をなしていた多くの映画ファンが結果発表を待ちわびる中、再び華やかにゲストたちが登場、ノミネート作品の紹介がスクリーンに映し出され、会場内の期待と緊張が高まっていきました。

    まずは、一昨年前から設けられた「熊本市賞」の発表から。熊本市賞は2012年4月に九州で3番目の政令指定都市となった熊本市から、都市連携の一環として提供されるもので、アジアでも有数の映画祭となった本映画祭のさらなる発展に寄与されるために設けられた新しい賞です。「熊本市賞」は、観客投票の第2位作品に授与されます。

    「熊本市賞は…日本映画の『福福荘の福ちゃん』です!」。高らかに響き渡った熊本市シティプロモーション課課長・井本賢一氏の発表の一声に、会場から拍手と歓声が沸き起こりました。藤田容介監督には賞状と副賞、トロフィーが贈られ、緊張した面持ちで記念撮影に応じていました。「福福荘の福ちゃん」はお笑いトリオ・森三中の大島美幸さんが頭を丸刈りにして、女性に奥手なおっさん役に挑戦、涙あり、笑いありのハートフルな人情喜劇です。「主人公は皆さんご存じ、お笑い芸人の大島美幸さんなのですが、彼女が丸刈りにしておっさん役をやるということで、キワモノというかインパクト狙いのインスタント映画と思われがちなところがありました。しかし、この映画は真面目に作ったものです。真面目につくった映画が、このような真面目な映画祭で賞をいただいたのが嬉しいです。最近映画的じゃない映画が多い中、僕はあくまでも映画というものにこだわって作りました。リラックスして観られる純然たる娯楽映画ですので、ぜひ多くの人々に観ていただきたいです。福岡の観客の皆さんから選ばれて受賞という高い評価を得られたことを梁木ディレクター含め、映画祭のスタッフの皆さん、そして福岡の観客の皆さんに心から感謝します」と力強く語った藤田監督に会場から大きな拍手が贈られました。

     

    そしていよいよ、「福岡観客賞」の発表です。緊張感あふれる張りつめた空気の中、ドラムロールが会場に鳴り響きます。映画祭実行委員会の新藤恒男会長が封筒を開き、読み上げた映画の名前は…「『ジャングル・スクール』です!おめでとうございます!」。

    実在の人物を主人公にインドネシア映画界の気鋭・リリ・リザ監督が、自然、文明、教育、そして次世代に向け、未来を穏やかな視線で問いかけた物語。スマトラ島の森の中、森の実態を理解しようとしないNGOの上司や外の文化を拒む森の大人たちの狭間で苦しみながらも、まっすぐに学びを欲する子どもたちのために森の学校設立に体当たりで挑む、主人公の力強い姿に感動を覚える作品です。

    アジアフォーカスでは常連でもあるリリ・リザ監督は残念ながら今回は欠席でしたが、故郷から届いたビデオメッセージがスクリーンに流れました。「福岡市民の皆様、アジアフォーカス・福岡国際映画祭の観客の皆様、私の映画『ジャングル・スクール』を観客賞に選んでいただき本当にありがとうございます。皆様と一緒にいることができればと思いますが、今は故郷のマカッサルに来ています。観客賞受賞に心から感謝します。皆様ありがとうございます。来年皆様にまたお会いできるよう心から願っております」。

    また、作品の代表として今回来日されましたが、観客賞の授賞式前に帰国された撮影監督のグンナール・二ムプノ氏からは「福岡の皆さん、私たちは『ジャングル・スクール』の映画チームです。福岡観客賞受賞作品として私たちの映画を選んでいただき、皆さん全員に心から感謝しています。本当に素晴らしいことだと思います。また皆さんと、来年すぐにお会いできることを心から願っております」と同じくビデオメッセージをいただきました。

    リリ・リザ監督の代理として、株式会社九電工総務部総務グループ副長・三留拓也氏(在福岡インドネシア共和国 名誉領事 株式会社九電工 河部相談役代理)がトロフィーをはじめ、賞状、副賞を受け取られ、会場から温かい拍手が贈られました。

     

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    FOCUS ON CINEMA⑱【トークイベント 〜写楽をめぐって〜】

    ゲスト:篠田正浩監督
    聞き手:梁木靖弘ディレクター


     

    江戸の町と商人文化を鮮やかにあぶり出した「写楽」


    シネラのスクリーンに映し出される豪奢な江戸歌舞伎「河原者」と呼ばれる歌舞伎役者や花魁による芸能を享受する江戸商人の姿は、江戸の闇夜を照らす打ち上げ花火のように粋で鮮烈でした。

    人気浮世絵師を世に売り出し、江戸の流行を拓く版元「蔦屋」の主人、蔦屋十三郎と謎多き「写楽」という絵師を通して、日本映画界としては唯一ともいえる江戸の暮らしや芸能を活写した本作。梁木靖弘ディレクターが「江戸の歌舞伎を唯一再現できている映画ですよね。製作のきっかけは?」と尋ねると、「もともと、黒澤明を描きたいと思ってたんですけどね」と篠田正浩監督。当時、写楽研究に没頭していたフランキー堺さんと話すうちに、唯一、写楽という存在を知っていた蔦屋重三郎を主人公に据えて描こうと話がまとまったといいます。

    「江戸時代の商人は、士農工商の中では一番下の階級とされていましたが、自力で商売をして稼ぎ、実力で勝負してきました。人間として自立した商人や『河原者』と呼ばれる絵師や役者は、他から差別されることで逆に自由を獲得していくわけなんですが、どんな人間だろうと生まれてきて、生きて、死ぬ。そこには階級なんて関係ないんです」と持論を述べる篠田監督。「浮世絵は、私にとって映画史の前史。江戸のある時期、歌麿や北斎、滝沢馬琴など当時は無名だった彼らが同じ時代を生き、同じ場所に居合わせたという偶然を思うたび、私も自分の助監督時代を思い出すんです。当時の助監督には、大島渚や鈴木清順、吉田喜重などそうそうたる人がいましたから」。

    「それとね、浮世絵は、絵師、彫り師、刷り師という各々の技を極めた職人が団結して生まれた複合的なユニット、つまりトヨタ車ができあがる過程と同じなんですよ」。この言葉には梁木ディレクターも「そういう意味では、武満徹を始めとするクリエーターをいち早く見出した篠田監督も、蔦屋重三郎のような存在ですよね」とあらためて尊敬の眼差しで見つめます。

    「キラ星のごとく現れた絵師の浮世絵を面白いと感じた江戸の町人たち。それこそがこの映画のテーマですよね。単なるストーリーじゃない、江戸文化すべてを映し出しているのが『写楽』」と梁木ディレクター。「次の機会は、小津安二郎の本性をあばきたいね」。時にユーモアを交え、軽妙に映画について語る篠田監督のトークに、参加者の多くはメモをとりながら熱心に聞き入っていました。

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    【速報】福岡観客賞2014は「ジャングル・スクール」に決定!

    本日、アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014の福岡観客賞、および熊本市賞が発表されました!

     

    ◎福岡観客賞:「ジャングル・スクール」〈インドネシア〉
    監督:リリ・リザ


    ■作品紹介(公式カタログより抜粋):

    いまだ手つかずの熱帯林が点在するインドネシア。森の中で暮らす人々“オラン・リンバ”の生活も、近代的な外の世界との関わりが徐々に避けられなくなってきていた。
    スマトラ島にある国立公園保護などをおこなうNGO で働くブテット。彼女は、森の中、川の上流集落で暮らす子ども達に、読み書きや計算を教えている。ある日、ブテットはマラリアのため森の中で意識を失くし、はるか下流の集落で暮らす少年ブンゴに救われた。ブンゴは、その後も上流の様子を覗きに来てはそそくさと立ち去るが、彼もきっと教育を受けたがっているのだと、彼女は気づく。
    森の子ども達への教育を上司に訴えるブテットだが、取り合ってもらえない。「彼らに必要な本当の教育とはなんだろう」心の中に生まれる失望と疑念。意を決したブテットは、再び森に入り、下流の集落で独自に教え始める。一方でその様子を冷やかな目で見る大人達。子ども達が教育を受ければ、いずれ集落を離れていくことを懸念していたからだ。
    森の実態を理解しようとしない上司と、外の文化を拒む森の大人達。その狭間で苦しみながらも、まっすぐに学びを欲する子ども達の純粋な姿はブテットを勇気づけ、やがてジャングル・スクール設立へと彼女を突き動かしていく。
    常に自国の将来を考え、歴史や抱える問題に対し真摯に取り組み、それをエンターテインメントとして昇華させる、リリ・リザ監督の最新作。
    実在のブテット・マヌルン氏は1972 年ジャカルタ生まれ。彼女の教育支援活動が認められ、2004 年、米Time 誌の『HERO OF ASIA』に選出された。自著『Sokola Rimba』を2007 年に出版。監督はブテット氏への綿密な取材を経て本作を製作、海外の映画祭でも数々の賞を受賞した。主人公を、昨年の本映画祭上映作「聖なる踊子」主演を務めたプリシア・ナスティオンが熱演。また、現地ではオラン・リンバの人々も出演している。

     

    ■監督プロフィール:リリ・リザ

    1970 年インドネシア生まれ。ロンドン大学で脚本学を専攻し修士課程を修了。ドイツ短編映画祭での受賞により注目され、後に監督した長編映画「シェリナの冒険」(’00)は自国で大ヒット。その後も世界で高く評価されヒット作に恵まれる。主な作品としては「GIE」(’05)、「永遠探しの3 日間」(’06)、「虹の兵士たち」(’08)、「夢追いかけて」(’09)、「ティモール島アタンブア39℃」(’12)等がある。
    ◎熊本市賞(次点):「福福荘の福ちゃん」(日本)
    監督:藤田容介

    ■作品紹介(公式カタログより抜粋):

    福福荘というおんぼろアパートに住んでいる福ちゃんは、職人同士の荒っぽい揉め事を取りまとめ、アパートでは住人同士のいさかいを収める、心優しい中年の塗装工だ。趣味は凧作り、それに目隠しして絵を描くという得意技も持っている。同じアパートに住むのはニシキヘビを飼う東大出身の馬渕と、下着泥棒の前科がある野々下。彼らとは気軽に話せるのに、独り身であるのを心配した職場の同僚から紹介された女性には、どうにも話しかけることができない。
    外資系企業に勤める千穂は、とある写真コンテストで受賞。一念発起して会社を辞め、写真家の道を歩むことを決意する。尊敬する写真家に弟子入りしようとするが、セクハラに遭いそのショックで家に引きこもってしまう。ルームメイトとケンカして家に居づらくなった千穂。立ち寄った喫茶店で、「あなたがいま受けているのは過去に誰かをひどく傷つけた頃の報いであり、中学生の男の子の姿が見える」、と女店主からアドバイスを受ける。千穂は中学生の頃、同級生のいじめに加担し、ある男子にイタズラを仕掛けた過去があった。その男子とは福ちゃんであり、福ちゃんは中学時代のいじめがトラウマとなってそれ以来女性不信に陥ってしまったのだった。千穂は福ちゃんの元を訪ね、過去のいじめのことを謝罪するが……。
    映画初主演となるお笑いトリオ・森三中の大島美幸が頭を丸刈りにし、福ちゃん役に挑むほのぼのタッチの人間喜劇。そこはかとない哀愁と人情味にあふれた、そのおっさんぶりはなかなか堂に入ったもの。ヒロインの千穂に水川あさみ、職場の同僚に荒川良々、アパートの住人に芹澤興人、飯田あさと、千穂のルームメイトに平岩紙、脇をかためる俳優陣が個性的な魅力を際立たせている。
    本作は、沖縄国際映画祭に続きイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭で上映され、好評を博し、引き続き海外でも公開される予定である。日本では2014年秋全国公開の予定。

     

    ■監督プロフィール:藤田容介

    1963 年生まれ、兵庫県出身。大学在学中より映像制作を始め、1987年に『虎』でトリノ映画祭8 ミリ部門グランプリ、ぴあフィルムフェスティバル入選を果たした。2008 年には長編映画「全然大丈夫」(’08)を発表。本作「福福荘の福ちゃん」(’14)は監督の最新作にあたり、カナダ・モントリオールの第18 回ファンタジア国際映画祭で最優秀女優賞(大島美幸)に耀いている。

     

    ※福岡観客賞授賞式の模様は追って報告します!

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    FOCUS ON CINEMA⑰【台湾映画大特集記念シンポジウム】

    パワーと誇り、多様性にあふれる台湾映画が熱い!

    (右から)チー・ポーリン氏(「天空からの招待状」監督)、クオ・チェンティ氏(「山猪温泉」監督)、シエ・チュンイー氏(「ロマンス狂想曲」監督)、張昌彦氏(大学教授、映画評論家)、梁木靖弘ディレクター



    近年、アジアのなかでも、とくにヒット作品に恵まれ、熱気を帯びている台湾映画。今年は、台湾映画大特集を記念して、台湾から招待作品の監督をゲストに招き、「台湾映画の今」を語り合うシンポジウムを開催。老若男女、コアなアジア映画ファンが集い、1時間半の間、活発な意見交換を熱心に聴き入っていました。

    コーディネイターである梁木ディレクターの司会のもと、まずは自己紹介から。パネラーは、シエ・チュンイー氏(「ロマンス狂想曲」監督)、クオ・チェンティ氏(「山猪(いのしし)温泉」監督)、チー・ポーリン氏(「天空からの招待状」監督)、張昌彦氏(大学教授、映画評論家)の4名。穏やかな笑顔で観客に挨拶すると、大きな拍手が会場を包みました。

    シンポジウムの主なテーマは、各監督の作品が生まれたアイデアや狙い、台湾映画の監督として目指すもの。

    始めに張氏が、それまで低迷していた台湾映画の火付け役となった作品「海角七号 君想う、国境の南」(2008年)の話に触れ、台湾映画事情について話しました。

    「最近、台湾ではインターネットの文学者やテレビドラマの製作者の中から、映画監督が出てきているんです。長年、金馬奨の審査員を受け持っていますが、台北では短編映画が流行っていて、今年は240本以上の応募がありました。感想としては、昔と違って、『私は台湾人です』と胸を張って映画をつくっている人が多く、パワーと多様性に富んだ作品が増えているように思います。都市だけでなく、農村の風習や人の生き方といったものに焦点をあてた作品も人気ですし、『愛島精神』が際立っているという印象です」

    それを受けて、監督たちも熱い想いを述べました。

    中国大陸と台湾出身の男女のラブストーリーを描いた「ロマンス狂想曲」の若き監督、チュンイー監督は、「私の作品は政府の補助金を使ってつくったインディペンデント作品です。大学の友人だったプロデューサーは大陸出身で、彼女とはよく台湾と大陸の政治や文化について生じる矛盾や衝突などを冗談半分に語り合っていたんですね。私たちの年代の台湾人の多くは、そういう国家間の状況を深刻に考えていないんです。ちょうど大陸から台湾への旅行が解禁になったことも重なって、若者の目から見た中国大陸と台湾のことを描いてみたのが、この作品です」

    チュンイー監督もまた、「海角七号 君想う、国境の南」を引き合いに出し、映画産業において商業ベースにのせ、しかもいかに芸術性のある作品仕上げられるかが僕らの課題だと話します。台湾のローカルな文化が受け入れられるようになった今、これからの作品では市場の大きい大陸をはじめ、他国での上映も狙っていきたいと意気込みを見せました。

    次に、「山猪温泉」の監督、クオ・チェンティ氏へバトンタッチ。被災地の農村と村人の生き方について描いた本作。

    「この脚本を書き始めた当時は、商業的なコメディを考えていたんです。でも、村でのフィールドワークを重ねていくうちに、都市に生きるホワイトカラーの人たちは、こうした貧しい村のことを理解できていないだろうという思いが沸々とわいてきたんですね。それで2年経つうちに、リアリズムを追求した脚本へと変わっていきました」

    資金集めが困難といわれるドキュメンタリーの世界。科学技術者や登山愛好家など環境や未来に関心の高い人にお願いし、何とか20人ほどの出資者が集まって作品が完成したといいます。文化局の局長からは「スタッフみんなが1人で3人分くらいの働きをしているこの映画は、かかった予算の3倍分の価値がある」と言ってくれたそうです。「台湾人スタッフみんなの情熱でもって、形になった作品」と話す監督の表情に、台湾人としての誇りが見て取れました。

    最後に、「天空からの招待状」監督、チー・ポーリン氏。もともと「國道新建工程局」の局員として、長年航空写真を撮り続けてきたポーリン監督。「環境問題に若者が関心を示さない」状況を憂えながらも、自分の家を担保にして億単位の巨額な空撮資金を集めようと使命感に燃えます。その必死さに心を動かされ、エグゼクティブプロデューサーになってくれたのが、映画界の巨匠、ホウ・シャオシェン氏でした。

    「シャオシェン監督をはじめ、多くの監督と企業家の方々に支援してもらいました。上映前は800万台湾ドルを見込んでいた作品ですが、いざ上映してみると、2億台湾ドルの収益を得ました。映画館で上映されること自体が驚きなのに、成果を出せたことは、何より『歴史の記録』して非常に重要なことですし、これからのドキュメンタリー界に希望をもたらせたのではないかとも思います」

    台湾の美しい自然風土と相反する負の遺産を空撮で捉える本作。過去に、大阪で3回上映された時、チケットはすべての回でソールドアウトになったそうです。

    「日本の方々が観てくれたことで、日本と台湾が互いに好意を持っていることを嬉しく感じました。この映画は言葉の壁を感じない作品ですし、どこの国で上映されても、環境を守りたいというメッセージは伝わると信じています」と、笑顔で話しました。

    ちなみに、今年の12月に日本での公開が決定し、ナレーションは俳優の西島秀俊さんが担当。「ぜひ自分にやらせてほしい」と本人からの強いアプローチがあったのだとか。

     

    Q&Aでは、「日本映画で好きな作品は?」との質問に、現代の監督の作品を挙げる監督が多い中、「ぜひ昔の日本映画のよさに触れてほしい」との観客からの意見も飛び出しました。

    最後に、梁木ディレクターによるまとめの言葉は、本映画祭の開催中、「郊遊<ピクニック>」のツァン・ミンリャン監督との懇談でも話題に上がったメッセージでした。

    「映画には『観るという行為』が大事です。今は消費されるための映画が多いですが、人生や人間同士のコミュニケーションなど社会の中で急速に失われていっている本質的なものを取り戻していくことが、私たちの役割ではないかと思います。ゲストの皆さんの作品をはじめ、このアジアフォーカス・福岡国際映画祭で、そういった映画をたくさんの人に観てもらえるように努力していかなくてはと思います」

    その言葉にゲスト陣も頷きながら、会場からの温かな拍手の中、シンポジウムは締めくくられました。

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