アジアフォーカス・福岡国際映画祭

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2016年9月15日(木)~9月25日(日)

ニュース

2016.11.15

『国のない国旗』上映後のQ&A

『国のない国旗』/ A Flag Without a Country(イラク)
監督: バフマン・ゴバディ
(司会・進行は、高橋 哲也氏)
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福岡の映画ファンと共に、映画祭スタッフ一同も待ちわびていたバフマン・ゴバティ監督。本映画祭で2001年に上映したイラン初のクルド長編映画『酔っ払った馬の時間』や、2013年上映の『サイの季節』で来福が叶わなかった監督が、ついに最新作とともに映画祭の会場に登場。熱気と興奮を帯びた雰囲気の中、Q&Aが活発に繰り広げられました。( ★一部ネタバレございます★ )

司会: パイロットのナリマン、ポップシンガーのヘリー、実在のクルド人であるこの2人を新作のテーマにしようと思ったきっかけは何ですか?

ゴバディ監督: テーマは人物にフォーカスしたものにしたかったんです。そして探したところ、面白い人物が10人程いました。もともと、『国のない国旗』はイラク政府による外国人ツーリスト誘致の為のプロジェクトで、政府から人物にフォーカスするなら、女性を入れてくれと要望があったんです。正直最初、女性はないなと思ったのですが、ツーリズムが目的の映画でしたので女性を使った表現もありだなと思い、この2人を選びました。プロジェクト開始当初の2014年は、まだ戦火が広がっていない頃で、ISIL(イスラム過激派・イスラム国)も存在していませんでした。純粋に映画の中で、舞台となる町を観光地として魅力的なものに見せてほしいという依頼で製作を始めたのですが、どんどん情勢が戦争の方へと傾き、結果的に戦争要素が多い作品となったのです。

Q: ナリマンは少年時代、イラクからイランへ難民として逃れる際、恋した少女に将来、飛行機を作って迎えに来ると誓いますよね。それは本当のエピソードなのですか?また、印象的なラストシーンは希望を持たせるものと解釈して良いですか?

ゴバディ監督: まず映画のラストシーンは希望を持たせるものではありません。いくら希望を持ち、戦争のダメージを修復しても、再び戦争は起こりますから。また、ナリマンという人物の半生は波乱万丈で、小説を書けるぐらい面白いものです。彼について表現するなら映画よりも本だとは思いましたが、今回は彼の人生のある一部分を抜粋して映画に使いました。いずれ一冊の本を書きたいと思っています。多分、アフガニスタンのカーレド・ホッセイニによる小説「カイト・ランナー」よりも面白い本になると思いますよ。

Q: 映画に出てくるナリマンは本人自身なのですか?彼とはどのようにコミュニケーションをとっていかれたのでしょうか?
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ゴバディ監督: 本人自身が演じています。私たちは約3カ月間、常に一緒にいて、いろんな話をして、面白いエピソードを映画に盛り込んでいこうと決めて行きました。ある日、彼から「監督にだけ話したい秘密がある。でも決して映画に入れないでほしい」と言われたんです。それが、元恋人の少女に飛行機を作って迎えに行くと誓ったという例のエピソードでした。私はぜひ映画のストーリーに盛り込みたいと思ったのですが、彼は今の妻にバレたら大変だからやめてくれと言うんです(笑)。しかし面白いので私はどうしても映画に入れたくて、彼と作戦を練りました。まず私が彼の家に電話をするから、その時に奥さんにも聞こえるようにスピーカーにしてほしいと頼んだんです。そして彼に演技をするようにお願いしました。私の提案に関し、奥さんに相談するというような演技です。実際に私が電話をした時に「今のストーリーのままだと戦争の色合いが濃いから、ちょっと恋の話を作って入れてもいいかな?そうすると、この映画はもっと売れると思うんだけど」と言ったんです。すると奥さんもそこで「それいいアイデアじゃない」とすぐ賛同してくれて(笑)。実際その3カ月後に、奥さんに事実をバラしたんですけど、奥さんは全然怒らなかったですけどね。

Q: 映画を観て、同じ時代に大変な目に遭っている人たちがいることを知りました。日々、のほほんと過ごしている自分が申し訳ない気持ちになりました。これは半分、本当のストーリーで半分はフィクションですか?それとも全部ドキュメンタリーなのでしょうか?
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ゴバディ監督: 映画を製作するにあたって、7~8カ月間はドキュメンタリーを作るためにリサーチに費やしました。ナリマンとヘリーの子ども時代は、事実を基に想像して作り込まなければなりませんでしたが、ご覧になったシーンはすべて今、起こっていることです。ですので、90%以上、ドキュメンタリーと思っていただいて良いと思います。
また、申し訳ない、という思いですが私も同じですよ。日本人に対しても申し訳ないと思います。日本人は過去の2つの大戦で大きな悲劇に見舞われています。そして今現在も自然災害で多大な被害を受けています。私は人類がいる限り、戦争は起こるものだと思います。暴力性を持っている人間が存在する限り、30年~40年に必ず1回は戦争が起こります。私たちは皆、形は違っても同じ痛みを持っています。隣の家とも、隣の国とも常にケンカをしています。中近東では今、戦争が起きていますが、私はアジアの東側も変わらないと思っています。北朝鮮があるでしょう。この美しいアジアの東側はこれからどうなるのだろう?と思っています。痛みが同じということはそういうことなんです。どこかで何かが起こるかもしれない、地震が起きるかもしれない。それがいつ起きるかわからない、という不安の中、皆生きているんです。

Q: 監督は戦争はなくならないとおっしゃいましたが、無くなるようにするには、どのように心がけ、行動すれば良いのでしょうか?
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ゴバディ監督: 人間という生き物は皆暴力性を持っています。暴力的だからこそ、他者と差別化する為にさまざまなバリアを作り出します。宗教、イデオロギー、そして国旗もそうです。このバリアをなくす為に必要なものは、愛です。バリアがなくなって、愛で溢れる世界になれば、戦争はなくなるのではないでしょうか。非常に難しいことですが。

Q: ナリマンは航空術を子どもたちに教え、ヘリーは歌を子どもたちに教えています。そして、監督は子どもたちに映画のつくり方を教えていますよね。子どもたちに何かを教えるということに至った経緯を教えてください。

ゴバディ監督: 私は自分自身がルーツを持つ地域の子どもたちに何かをしたいとずっと考えていました。映画人として、たくさんやれることはありますが、機材や予算の問題が出て、なかなか今まで実現できなかったんです。私の出身地、イランでは子どもたちの教育の為にほとんど何もしません。航空術を、絵を、歌を教える、また本を作る、雑誌を作る、プールを作る、などアイデアはありますが、一人じゃ何もできません。
そこで私は、家庭で使うようなハンディカメラを45台程用意して、イランから若い映画監督を呼んで7カ月の間、クルド難民キャンプ内で映画教室を開きました。実際70~80人の子どもたちが教室に参加して、その中から8人の子ども監督が生まれました。すべて脚本から演出、撮影まで子どもたちだけで行い、出来上がった8本のショートフィルムが『国境に生きる~難民キャンプの小さな監督たち~/Life on the Border』(注1)です。実際私は、このプロジェクトをプロデュースしただけで、現場はトレーナーである若手監督に任せていましたが、日本でもNHKで放映されたり、世界中の映画祭で上映されたり、と素晴らしい作品になりました。子ども監督の中から2~3人は将来有望な映画監督が生まれそうだと期待し、パート2をつくる動きもありましたが、現実的に難しく実現に至りそうもありません。この作品をつくった後、難民キャンプから離れた子どもたちもいます。プロジェクトを通して当時は希望を持ったものの、今は絶望を感じている子もいるんです。それが現実です。
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注1: 本映画祭では、『国のない国旗』に引き続き特別上映した。

共催
  • ASIA center
助成
  • 芸術文化振興基金
特別協賛
  • 西日本シティ銀行
  • 公益財団法人 西日本国際財団
  • 福岡地所株式会社
特別協力
  • 在福岡ベトナム社会主義共和国総領事館
協力
  • Vietnam Airlines
協賛
  • コニカミノルタ
  • 九州電力
  • 福岡銀行
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  • 九電工
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