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2017年9月15日(金)~9月24日(日)

ニュース

2017.09.21

ディレクター懇談②: 『はぐれ道』

構想から10年。インド系マレーシア人の真実

『はぐれ道』英題: Brutal マレーシア)
監督・脚本:サンジェイ・クマール・ベルマル、
ポスト・プロダクション・プロデューサー:アブドゥル・サマド・ハッサン

懇談の様子
「いつか映画祭でマレーシア特集をやりたい!」という梁木ディレクター。1990年代の北マレーシアに生きる、南インド・タミル系の人たちの苦悩を少年の視点を通して描いた『はぐれ道』。この作品にハートを射抜かれたという梁木ディレクター、それを10年かけて製作したというサンジェイ監督、また長きに渡って監督をサポートしてきたポスト・プロダクション(撮影後の最終作業を行う製作会社)のプロデューサー、サマドさん。3人で進められた懇談では、知られざるマレーシア映画界の話で盛り上がりました。

サンジェイ監督とハッサンさん(ポストプロダクション)1

(手前がサンジェイ監督、奥がサマドさん)

全編ほぼタミル語での作品で、2016年のマレーシア映画祭で最優秀作品賞を受賞(タミル語作品の受賞は初めてとの事)。しかしサンジェイ監督は「映画製作は戦いそのものだった」と振り返ります。かつてゴム農園などのプランテーションで働いていた、多くの南インド・タミル系住民たち。映画の舞台となる1990年代前半は、国の経済システムから取り残された少数派である彼らが、低賃金で過酷な労働を強いられていた時代でした。
2004年から脚本を書き始めたというサンジェイ監督。今作の構想を映画関係者に話したところ大反対に遭ったそうです。「インド系なのになぜ歌と踊りの映画を作らないのだ?わざわざ暗い時代のドキュメンタリーをつくるなんて意味がない」とさんざん言われたと物静かに語ります。

2007年、本映画祭で上映したタミル系のディーパク・クマーラン・メーナン監督の『ダンシング・ベル』が大好きだという梁木ディレクター。サマドさんによると、ディーパク監督は、大学での教鞭もあり、近年は映画製作していないということです。また、マレーシアでの映画製作は、検閲もあり、その対象となるとなかなか次の作品に取り組めない現状もあり、インディペンデント系の映画だと、国外での上映は可能ですが、それでもなかなか国外持ち出しが厳しいそうです。また、ある女性監督は製作のための資金集めに疲れ果て、世界各地の映画祭に参加することをやめてしまったなど、マレーシア映画界の現実をサマドさんは熱く語ります。
サンジェイ監督とハッサンさん(ポストプロダクション)2
「才能のある人が、そのような状況になってしまうのはとても残念。マレーシア映画は持続性がないんですよね。良い映画があったとしてもなかなか次作が出てこない」と嘆く梁木ディレクターに「それは監督がいかに戦うか、それとも妥協してしまうかの結果だと思いますよ」とサマドさん。本作の製作資金の半分はサンジェイ監督の義理の父親が出してくれたもので、後はNGO(非政府組織)からかき集めたといいます。資金の問題が解決しても、脚本を政府に送ったら「タミル語だから」という理由で何回も書き直し、撮影中もさまざまな障害に遭ったそう。「もし、ラストシーンを少年が更生の道を歩むという明確な表現にしたら、こんなに時間はかからなかったでしょうし、資金もいっぱい手に入ったでしょうね」と苦笑するサンジェイ監督とサマドさん。「でも、その一切妥協のない戦いがマレーシア映画祭で最優秀作品賞をもたらしたのでしょう?」という梁木ディレクターの問いに驚くべき答えが。

「確かに本作が素晴らしいから賞を獲得できたのは事実です。しかし、サンジェイ監督はインド人(インド系マレーシア人)なのになぜマレーシアで賞をとるのか?と多くのマレーシア人(マレー系マレーシア人)が怒ったんです。その事態の収拾に政府まで出てきて、結局最優秀作品部門を「マレー語部門」「マレー語外部門」の2つに分け、再び審議がなされて、マレー語部門で資金をたくさん使ったホラー映画が最優秀賞をとったんですよ」と語るサマドさん。しばし言葉を失った梁木ディレクターは「一体、良い映画とはなんだろうと考えてしまいますね」とため息。
潤沢な資金を使ったハリウッド調の娯楽映画が好まれるのは日本、マレーシア問わずどこの国でも同じ。しかしサンジェイ監督のように、マレーシア国内での少数派をテーマにした作品や、日常の人々の生活にフォーカスした作品は、多くの検閲(性的な表現、ドラッグ、宗教)を受けなければなりません。

「ジャンルを問わず良質なマレーシアの映画をどうやったら集められるかなあ」と悩む梁木ディレクターに、「こまめに連絡し合いましょう! 映画は決して時間つぶしのモノじゃない。人生、世界、宇宙、さまざまなことを考えさせ、観る人にも、つくり手の精神にも影響を与えるもの。そのジャンルではサンジェイ監督は今回でかなりレベルの高い場所まで辿り着いたと思う」と熱い語りが止まらないサマドさんは日本語もお話しになられ、横ではサンジェイ監督が優しく微笑みます。
記念撮影 おちゃらけバージョン
次回作は10代の暴走族の少年少女たちを描くとサンジェイ監督。「今度は10年後じゃなく、来年には絶対公開します」と語気を強めます。物静かながら、内に情熱を秘めたサンジェイ監督。梁木ディレクターとの記念撮影では決めポーズをするなど、お茶目な一面も見せてくれました。

※作品についてはコチラをご覧ください。

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