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2018年9月14日(金)~9月23日(日)

ニュース

2018.09.20

ディレクター懇談④『腕輪を売る男』イーレー・カウダ監督

日常に隠れた欲望や秘密。淡々と描くヒューマン・ドラマ

『腕輪を売る男』英題:Balekempa(インド)

監督・脚本:イーレー・ガウダ

 

●聴き手:梁木靖弘ディレクター

デビュー作を携えて初めての日本、福岡。嬉しさを全身で表す茶目っ気たっぷりのイーレー監督。「映画自体はとても静かだけど、歌って、踊ってのインド映画界の常識をくつがえす何かがある!」と語気を強めて語る梁木ディレクターが気になったのは、監督のプロフィール。2013年に映画人になるまで職を転々としてきた理由をまず質問。その答えはまるでそのまま映画になりそうな、ドラマチックな物語でした。

南インドの小さな村が舞台の今作。お互い助け合いつつも常に周りの視線を感じ、噂話が絶えないコミュニティで生活を営む村人たちの、隠れた欲望や秘密を淡々と描いています。イーレー監督が生まれ育ったのは、インド南西部カルナータカ州の田舎町・マンディヤー。母親がガンに侵され、16歳の時に治療費を得るために近隣の街・マイソールに出て警備員の職に就いたそう。ほどなく州都・バンガロールに移り、警備員として街のあちこちで映画の撮影現場に立ち会うことで監督業に興味を持ったのだとか。

故郷を離れ、家事手伝いや運転手、植木屋など同時期に何種類もの仕事に就き、仕送りをしていた監督。2000年、19歳の時にオフィスで雑用係の仕事を得てほどなく母親が亡くなり、帰る場所がなくなってしまったイーレー監督はオフィスで寝泊まりするように。

困難に遭遇しても日々親友に「僕は映画監督になる」と言い続けることでモチベーションを保っていたという監督は、働く社員の姿を観察しながら独学でパソコンのスキルを得て、半年後にはグラフィックデザイナーとして登用されました。2007年に起きたスマトラ島沖地震被災地へ会社のボランティアメンバーとして赴いた時、記録担当としてカメラを上司から渡されたのが運命だったと語ります。その後、まるで水を得た魚のように会社関連の行事を撮影、編集することに。その技術の多くはYouTubeから学んだそう。

会社では運命的な出会いもあったといいます。2015年、各映画祭の新人部門で評価を獲得した『ガウダ爺さんのお葬式(英題:Thithi)』を手がけたRaam Reddy監督です。イーレー監督は脚本を務めました。会社の上司の息子さんである8歳年下のRaam監督に自分の村の話を面白おかしく伝えることで、やがて物語をつくりたいという共通の思いが芽生えたそう。転機はRaam監督と共同で製作し、世界に広まったショートフィルム『Ika』(2012)。その時、お金をためて買ったという初めてのカメラCanon EOSの70Dを愛おしそうに見せてくれたイーレー監督。撮影も録音も編集もすべて独学で、影響を受けた映画監督が特にいるわけでもなく、映画業界の知識もゼロ。そんなイーレー監督をひたすら映画づくりに向かわせた原動力と情熱は「人間への興味、好奇心」と語ります。

16歳で故郷を離れ、32歳で映画人になるまで自分の人生にたくさんのことが起こり、さまざまな仕事に就き、多くの人に出会い、いろんなことを学んだというイーレ監督。若い頃は田舎者とバカにされたこともあり、現実と戦い、人に不満をぶつけていっても決して正解はなかったと振り返ります。ずっとこだわっていた「何が正義で何が悪なのか」を考えることをやめたきっかけはやはり映画。「映画そのものではなく、映画館に出入りする人間の作品鑑賞前と後の変化を観るのが好きだった」とのこと。

ドラマチックな展開はなく、登場人物のモノローグもなく、村人たちの日常にギリギリまで近づき、淡々と描いた今作。「男女年齢関係なく、一人ひとりのキャラクターに入り込み、人物像を作り上げていくプロセスがたまらなく面白い。その人物たちが絡み合ったらもっと面白い」とエネルギッシュに語るイーレー監督からは過去の苦労話やネガティブな言葉は一切ありません。今作は途中で商業面を懸念してプロデューサーが降板するなどのトラブルもありましたが、2015年、本映画祭で上映した『裁き(英題:Court)』の製作・主演を務めたヴィヴェーク・ゴーンバルさんがプロデューサーを務め、同作の監督・脚本のチャイタニヤ・タームハネーさんもクリエイティブ・プロデューサーに加わったことで実現に至ったと言います。「インド映画の枠を超えたい。資金がないと映画は作れないし、多くの人に見てもらわないと意味がない。でもその前に自分が表現したいことをする、いや映画監督は表現しなければいけない」と熱く語るイーレー監督。終始監督の話に圧倒されていた梁木ディレクターは、「素人からここまで到達するとは……」と言葉を失いつつも、「とにかく映画製作を続けてほしい。続けてください」と静かに熱いメッセージを送っていました。

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